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プチヒーラー  作者: テクマ
50/89

飛べもえもえちゃん

パコーン

パコーン

パコーン


「ホームランだにゃ、とおっしゃっておられるにゃ」


パコーン

パコーン

パコーン


「トスバッティングかよ、チョー飛ぶんですけど!

ってこん棒様がおっしゃっているにゃ」


魔族は遠くに見える山のむこうにある魔界への入り口まで飛んでいった。


「気持ちよく吹っ飛ばしてくれる、

お前が強いのは分かった、だがせめて一矢報いてやる」


チョキーン


「なにするにゃ!」


ふにゃはかろうじてかわした。


「この人斬りバサミでお前の尻尾を切ってやる」


後ろに回って尻尾を狙う魔族を警戒して、ふにゃは尻尾を股にはさんで内股になった。


「うまく動けないにゃ」


もえもえちゃんは後ろの木に隠れながらボソリとつぶやいた。


「切られたらアンに生やしてもらえばいいよ」

「この尻尾が切られたら今度はえてきた尻尾はこの尻尾じゃないにゃ」


「そりゃ、そうだけど・・・」


それでも正面の魔族をパコーンと飛ばしながらふにゃは身をよじらせた。


「危険なやつなんだにゃ、お前はとんでもないところに飛ばしてやるにゃ」


パコーーーーーーーーーン


尻尾を狙っていた魔族を特大のホームランで飛ばした。





診療所では皆集まって早めの食事をしていた。


「冒険者はいつまでここにいるの?

まだセイを狙ってるのかな」

「アハハハハッ、とんでもないぃ。魔族に憑依されていたのでここでしばらくほとぼりをさましているわけでして」

「そうですよ、あははっ」


冒険者の剣士に続いて魔法使いの女が乾いた笑い声を発した。

セイとライザを半殺しにした冒険者は行き先もないし、魔族にまた憑依されるのを恐れて診療所に住み着いていた。

レイラはこの二人にあまり関心が無いようでドラゴンのぐるぐるに話を振った。


「ぐるぐるはそろそろ洞窟に帰るの?」

「僕の眷族が本を運んできて家を借りたからそこに住むよ。

眷族もこっちに移住してきたし」


「最近人口が増えたのはそのせいか。

で、セイは元いた洞穴に・・・」

「いえ、今洞穴にあった金銀財宝でここに屋敷を作っています、近々そこから通うことになりますね」

「金銀財宝?」

「はい、生まれてすぐ会った人間から、お前はドラゴンだから金銀財宝集めろ、それが普通だ、と聞いたので集めてました」

「へぇ、沢山あるの?」

「ええ、使いきれませんね。

ずっと宝探しや盗賊から盗んでましたから」


冒険者は遠くを見るように目を細めながら


「セイとはある意味ライバルだったんですよね。

ギルドのパーティーが行くとすでに発掘されたあと、とか、盗賊が丸焦げで財宝は無い、なんてことがよくあって。

それでギルドではあれはドラゴンの仕業だ、とか言われてて、本当にドラゴンだとはなあ。

はははっ、

あっ、魔族をメンバーに入れる前ですよ」

「あははっ」


大きな爆発音と共に診療所の屋根に何かが衝突した。

皆が屋根に登るとそこには魔族が突き刺さっていた。


「ちくしょう!

ふにゃとか言ったか。

今度あったら尻尾切ってから殺してやる」


「あーあかん、こいつ言うたらあかんこと言いよった」

「うちらは総長ほどやさしくないぞ、ヘヘヘっ」


かけつけたタマやミューが怖い顔で立っていた。遅れて屋根にあがったアシャやレイラが


「魔族か、中級だな、上級なら結界で蒸発してるぞ」

「丁度肉が足りなかったから助かったよ」





伯爵邸ではもえもえちゃんを送り出したアンがサキュバス達を探していた。魔力の無くなった魔族であるサキュバスは普通の魔力を持つ魔族に勝てないので建物から遠ざけていたのだが。


「おーい、サキュバスズ、公邸の中にはもう魔族はいないから入っていいぞ」

「いいのかその呼び方で」

「ああ、そうだ聖騎士様、中庭にいたの?

暇だったでしょ何してたの」

「伯爵の騎士達と剣を交えていたんだ『色んな形で』」

「そうか、まあ無理しないでね、聖騎士だと色々と挑まれることもあるだろうけど断ればいいから」

「負けたと思ってないか。

木剣だが勝ったよ」


「へえ、すごいね・・・『あれ、魔力の無い魔族は人の騎士より弱いのでは?』」


レイが活性化前の結界石があるかもしれないと古参の執事から聞いてみんなで探すことにした。皆が屋敷の内外に散らばってサキュバス達も探そうとしたとき。


「聖騎士さんですね、私は伯爵の第一子で剣の修行をしていますマイスと申します。ぜひお手合わせをお願いします」


まだアンと同い年ぐらいの目をキラキラさせた男の子だった。


「すまないな、ヒーラー殿に剣で戦うことを禁止されたばかりだ、だが剣について話すことはできる。

なんなりと聞いてくれ」


接見の間にある長椅子にマイスを真ん中にして密着して座った。色々と話をしていくうちにサキュバスはマイスの手をとってマジマジと見た。


「ほう、剣ダコができている。これは日々鍛錬をされている証だな」

「ありがとうございます。聖騎士様の手はさぞや・・・」

「見て見るかね」


サキュバスが手を差し出した。


「綺麗な手ですね、タコ一つない。いつもグローブを使われているのですか?」

「いや握り方だね。この剣の柄を強く握らないんだ、強く握るのはフィニッシュのときだけだよ。このように・・・」


サキュバスは一人ずつ男の子の両の手をとって優しく握って激しく動かした。


「ほらこんな感じで握るといい、意外とぬけないだろ。きつく握らなくていいんだ」

「は、はい。参考になります」

「もう知っているんじゃないか、この握り方の感覚は。

まだなら、もっと分かりやすく圧力を感じる方法があるからやってみせよう」


マイスのズボンを脱がしたところで部屋に誰かが入ってきた。


「これは失礼した。我が息子マイスが聖騎士殿に手ほどきを受けているとは知らず・・・」


メイドを連れて部屋に入ってきた伯爵はそのまま立ち去った。


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