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プチヒーラー  作者: テクマ
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妖精

午後から伯爵家に往診に行くことになった。伯爵は症状が重く、とても城まで来ることができないそうだ。

ドラゴンに乗って行くとすぐなのだが。


「なんで馬車なんだ、ドラゴンがいるのに。

なあレイ」

「なんで私も?受験生なんですよ」


レイは王子が一緒に行くよう指示したので仕方なく来たのだ。

アンは窓の外を見ながら黄昏ていた。もえもえちゃんは樽に入りながら顔を少しだけだして怒っているサキュバス達をうかがっていた。


「明日の昼には伯爵領つくでしょう、キャンプが楽しみだなあ」


アンはこれが仕事なのでなんとも思っていなかった。もえもえちゃんが馬車よりも遅いのに面食らったが『まあしょうがないか』とも思って馬車の旅を楽しんだ。

御者と護衛の騎士が数名騎馬で馬車を囲んでついて来ただけで、お目付け役もいない。

それと言うのも出掛けに王子が「伯爵は良い奴なのでそんなに怖がらなくて良い」とのことだったので、皆リラックスしていた。




伯爵領に入るとすぐに公邸があり、伯爵家の三人に出迎えてもらった。


「遠いところありがとうございます、私は摂政のカタルスと申します、この二人は騎士で護衛です」


簡単な挨拶をして建物の中に入ろうとしたのだがカタルスは「聖騎士様とお連れ様はこちらでお持ち下さい」と言った。伯爵の病気が伝染するかもしれないと懸念していたのでサキュバスともえもえちゃんを入り口に残してアンとレイが建物の中に入った。


伯爵家の騎士達は女の聖騎士が珍しいのか、ニコニコしながらサキュバスに近づいて来た。


「聖騎士様、私達に剣の練習をつけて下さい」


そう言うと、中庭にサキュバスを連れていった。ついでにもえもえちゃんもついていった。サキュバスが剣を抜こうとすると騎士達は慌てて「この木剣でお願いします」そう言って二人に木剣を渡して距離をとった。


「アンがいるからクビを切り離さなければ治してくれるぞ」


「やはりアンさまはそこまでの力があるのですか、ですが何があるのか分かりません木剣でお願いします」


そして練習を始めた。




建物のなかはすべての窓にカーテンがかかっており昼間だが薄暗くなっていた。


カタルスが先導しながら広い廊下を歩いていく、アン達はその後をついていった。


途中廊下の椅子に座りうなだれている老人がいたのでアンは立ち止まって声をかけた。カタルスは何も言わずにアンとレイの後ろに立っていた。


「返事がないな、この人も伝染病かな」

「よく分からない、こんなときは例のアレでしょ?」


アンはこの老人にとりあえずヒールを大きめにかけた。

老人は眠りから覚めたかのように顔をあげた。


「はっ、私は何をしていたのでしょう」


「意識を奪われていただけのようですね。

カタルスさん、この人は何故・・・」


アンが振り返るとカタルスはいなかった。何故か床には短剣が落ちていた。


「カタルス?この城にはそのような方はおりません、私はカタロスと申します執事です、あなた方は?」


アンがドラゴニアの王子から頼まれて来たヒーラーだと伝えると「おお、はるばる来られたのですね」と言って伯爵の寝室に案内してくれた。




中庭の騎士達は一通り剣をまじえて練習したところサキュバス達の圧勝であった。


「我々の勝ちだな、ではあたし達のいうことを聞いてもらうぞ」

「・・・ハハハッ、そのような約束はしてませんが」


サキュバス達は騎士の腕をつかむと納屋に向かって引っ張って行った。

もえもえちゃんが樽から顔を半分出して見ているのをサキュバスは横目で見た。もえもえちゃんが目をそらすとサキュバスはニヤリと笑って「アンにはいうなよ」と言った。


「ありゃ、やるな、やる気だな」


樽の中に隠れていたミスティが言った。森の中では城や近くの村の人がしょつちゅう来て、いたしていたので慣れていた。




伯爵はベッドの脇にある椅子に腰かけてうなだれていた。


「伯爵様、ドラゴニアからヒーラー様がおいでになりました」


「・・・逃 げ ろ」


「は、何と?」


駆け寄ろうとする執事をアンがとめた。


「何かに憑依されてます。

はーまたこれか、レイお願い」

「・・・拘束かな?」


レイはリリアンの糸で伯爵を拘束した。


「よくリリアンを持ってきてたね」

「暇かもと思いポケットに入れておいたよ、持ってて良かったリリアン」


「カタロス、私はもう私ではない。

ヒーラー殿を連れて逃げてくれ。

・・・

また会ったなチビ、カタルスはどこだ」


「伯爵様、すぐ元に戻してあげますよ」




「ハハハハッ、いいぞ、良い動きだ、もっと剣を強く振るんだ」

「聖騎士様にこのようなこと、神への冒涜になりませんか」

「ならないさ、友好を深めているんだ、ヒャハハハ」

「そやな、グヘヘヘヘ」

「ハアハアハア、あれ、お前憑依されてるのか?

いや、憑依してるのか。

まあいい、もっと動け」


騎士の表情が一変したがサキュバスは続けた。


「ワイは首が無くてもいいんやけど。

あれ、あんた人と違うな・・・サキュバスかいな」

「いいだろそんなこと、アアアアアッ」

「あんた、まさかビクティム様ちゃいますわな?」

「違うぞ、ビクティムはヒャハハハ」

「ビクティムは・・・・

・・・

なんてことをしてるんだ俺は」

「え?どうした。

憑依されてる方か?

・・・

まったく、使い物にならないぞコイツのこれ」





ちょうどその時


「ヒール!」

「おい待て、まだ早い・最後まで・・・」

「よし、先手必勝!」

「アン強いわ、魔族め最後まで話が出来ると思ったか」



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