妖精
「は?妖精。
しかもマンドラゴラから生まれたのか」
「何か文句ある?」
小さな妖精は怯まずにサキュバスの目の真ん前に仁王立ちしながら睨みつけた。
「生意気だぞ、妖精のぶんさいで。
だがまあ
ドラゴンなら別の棟に沢山いるようだ、そっちに行ってみろ」
サキュバスはめんどくさいし生意気な妖精に少し嫌がらせをするつもりで大人のドラゴンがいる別の棟を指さした。
「あそこ?
いやこの辺にいる、それは分かる」
妖精の言葉にサキュバスはそっぽを向いてだらしなくベッドにあお向けになってそして背中を向けた。
妖精はしょうがないのでサキュバスの背中を蹴って別の部屋に行った。
しばらくするとアンの声が廊下から聞こえたのでサキュバス達は部屋のドアを細目に開けて外を見た。
するとアンの声がはっきりと聞こえてきた。
「ああ、あ〜ここら辺でドラゴン?
それであなた達はマンドラゴラの妖精か、それなら・・・」
アンは妖精を子供ドラゴンのいる部屋に案内した。
ドアをノックしても返事がないので中にはいるとベッドに子供ドラゴンはいなかった。
「ふああ、眠い。
ん~~どっか行ったのかな?
待ってると帰ってくるかもしれないし、でも朝まで帰ってこないかもしれない。
ねえ、どうする?」
アンが妖精と話している間、サキュバス達は廊下に出て様子をうかがっていた。
妖精達はベッドの横にある小さな樽を指差して笑いをこらえていた。
笑いをこらえながらミスティは声をはって喋りだした。
「ねえアン、今日は帰ろうかと思う。
せっかくマンドラゴラのエキスを持ってきたのに、持って帰るかあ。
あぁ、残念だなあ」
すると樽から子供ドラゴンが頭を出した。
「ここだよ」
妖精とサキュバスはゲラゲラと笑いだした。
「お前、樽の中で立って寝てるのか」
サキュバスは部屋に入って子供ドラゴンのアホ毛をつかんで頭を出したり入れたりしてケラケラ笑ったが、妖精がサキュバスの手に噛みついた。
「もえもえちゃんを苛めないで!」
サキュバスは驚いて手を離すと
「お前、もえもえちゃん、なんだ」
名付けの親らしい妖精は上目遣いに
「おかしいかしら?」
「いや、こいつらしい名前だと思うよ。
なあアン」
アンは眠たくてしょうがないので、「ハイハイ、妖精のアイドルだったんだ」と返事をして自分の部屋に帰って寝た。
翌日には妖精は帰っていたが、もえもえちゃんは以前より元気になっていた。
相変わらず目を合わせないが少し動きが機敏になっていたような気がした。
朝食をとるとアンはボランティアの診療をするためサキュバス達と、もえもえちゃん、を連れて城の下層にある診療所に来た。
診療代金を払えない人を相手に診療するのだが、いろんな人が来る。
「よう、神官ちゃん、だいぶ背が縮んだな。
もう男は出来たのか。
つーーか、後ろの女騎士に診てもらいてえな、いろいろと、フヘヘヘヘッ」
「ハイハイ、どうしました。
と言うか膝ですね、腐ってます、これはたいへんだ」
「そうか?
悪いのは腰だと思うんだよな、昔みたいにもっと切れのある振りが出来るようにしてくれよ、ヘヘヘッ」
「これは普通のヒールでは時間がかかるなぁ・・・困ったなあ、切りましょう」
「そうか、そうか。切ってなにかを付けてくれよ・・・って切るのか?」
「ハイ、ハァーイ、騎士さん患者さんを押さえて、膝の上あたりで一本バッサリやって下さい」
サキュバスの一人が椅子に座ったお爺さんの後ろから動けないように抱きついた。
「お爺さん、抱きつきサービスは、お店なら金貨一枚はとるんだけど今日は特別タダにしとくからさ」
サキュバスはニヤリと笑うともう一人が動けないお爺さんの足を切り落とした。
「いってぇ、何しやがるんだ!」
もえもえちゃんが真っ青な顔で見ているなか、アンは冷静な口調でサキュバスにむかって言った。
「片方って言ったのに、もうどうするんです?」
「この体勢で片方は難しいよ」
「しょうがないなあ、途中でヒールが切れたら肉がむき出しのまま明日まで生活しなくてはならないよ」
そう言うと気絶しそうになっているお爺さんに完全な新品の足を再生した。
「はい、診療終わり」
「え、はい・・・ありがとうございました」
「足を持って帰ってくださいね。
はい次の人」
入れ替わりに子供を連れたお母さんが入ってきた。
「子供が店の指輪を飲み込んでしまって」
「しばらく待ったが出てこないと。
あーあるなあ、腸で引っ掛かってるなー。
・・・切りましょう」
「よろしくお願いします」
この子はベッドに横に寝かせて眠らせた。アンは指をさしながら。
「騎士さん、ここに指輪があるから腸を傷つけないように切って腸を引き出してください」
「売り物の指輪だから傷をつけないで」
「ハイハイ分かってますよ、だから魔法で分解せずにうちに来たんでしょ」
サキュバスは腹を切るとためらわずに腹に手をつっこんで腸を引きずり出した。
「美味しそうな、いやいや、というか綺麗な、そして健康的な腸ですね。
おっとここにあるかな。やばいヨダレが出できた」
ナイフで腸をさくと指輪をつまみ出した。その後サキュバスは大好物を見るように目を見開いて腸を見ていた。アンはニコニコ笑いながら。
「騎士さん食べないで下さいねー、はい押し込んで」
「あれ、食べちゃダメですか」
お母さんは指輪を受け取って傷がないか調べながら。
「騎士さん冗談がお上手」
と言ったが今にも食いつきそうな生々しいサキュバスの目は見ていなかった。
手間のかかる患者をさばいたあと、症状の軽い患者を集めてヒールした。これを繰り返して午前中は終わった。アンは「サキュバスは躊躇なく切れるし意外と使える」と喜んだ。




