妖精
「アナ、がいいんじゃないか?
穴に埋まっていたから」
「ああ、それがいい」
サキュバス達が名前の案を出してきた。アンは特にこれと言った決定的な案も無かったので子供ドラゴンに聞いてみた。
「アナ?それはまたシンプルな名前だ。
で、どうなのこれでいく?」
子供ドラゴンは目を細めてから言った。
「友達に決めてもらう」
「友達いるのかよ?!」
皆が口を揃えて言うと大人のドラゴンは決まったら教えてくれ、と言って去って行った。
「友達は何処にいるの?」
アンの問いかけに対して
「そのうち会うと思う」
とだけ返したが、特に埋まっていた場所に帰る必要も無いとのことである。どうやって会うのかは分からないが待つことにした。アンはついでにサキュバス達に向かって言った。
「サキュバス達は名前をどうする?」
サキュバス達はお互いの顔を見合わせて
「当分秘密」
とだけ言った。名前はあるのだろう、だが言いたくないのか、そもそも不名誉な奴隷なのだし、高貴なサキュバスなので言いたくないのかもしれない。
「じゃあそう言うことで」
相変わらず子供ドラゴンは人と目を合わせないがサキュバス達の後ろに立つと足の間からアンに目を合わすようだ。はた目からはアンがサキュバスの股間に話しかけているように見えるかもしれないがしばらくそうすることにした。
しばらくすると王子からサキュバスを連れてお婆様のところに行くよう指示があった。サキュバスを警戒してお婆様に近づけないように言われていたのだが何かあったのだろう。
それとは別に王子からお願いがあった。
「サキュバスの着てる服の面積を大きくしてくれ」
城の中を歩く姿を見た貴族等から苦情が来ているようだ。
「この子達はなかなか着てくれないんですよ、すぐに脱ぐんだし必要ない、と言うんです」
「ここではそんなにすぐには脱がないだろ。
とにかくほぼ下着だ、せめてマントをはおらせてくれ」
ニヤニヤしているサキュバス達にマントを着せてお婆様に会いに行くことにした。
お婆様の部屋の外まで聖剣の鉄パイプが積み上がっていて、神官達が忙しく部屋から聖剣を運び出して積み上げていた。おばあさまは聖剣作りが趣味になっているようだ。
積み上がった聖剣の脇を通って部屋の中が見える辺りに来るとカーテンのおりたベッドが少し見えた。
「ここであたし達を若い騎士達の褒美にくれてやるのか?」
「この鉄パイプで作った櫓に吊るされてムチで打たれるのかな。これはありがてえ」
サキュバス達の妄想が爆発したのもつかの間、部屋の中にはいるとサキュバス達はため息をついた。
「なんだ、すでに寝てるのがいるのか」
「だが大勢でするのも悪くないな、そのお婆様とやらを満足させてやればいいのか」
サキュバスは特大の聖なる光が楔になっているのでお婆様が見えるようだ。
「アンです、お婆様、サキュバス達を連れてきました」
「アン、その子達を護衛にしたようですね」
「はい」
「ならばその者達に聖剣を与えましょう」
サキュバス達は「いや、いらねーし」と言ったがお構いなしに天から聖剣が落ちてきて二人は反射的にその剣を握った。本来なら魔族は握れないはずなのだが。
あまり乗り気では無いようだが聖剣を握って少し振り回すとお婆様に向き直った。
「あんたが聖女様か、ずいぶんヨボヨボを通り越しちまってるが。
あたしらがあんたを殺って帰ると将軍どころか四天王相当の魔力を与えられるんだがな」
「それは怖い怖い・・・だがもう帰っても席は無いであろう。
だが、ここでその子を守り通せば実質将軍かそれ以上の地位につけるであろう」
「実質か。
まあ、これの柄はアレするのに具合が良さそうだ」
そう言うと神官に渡された鞘に聖剣を入れて肩にかついだ。
アンはそれを見ながら苦笑いした。そして・・・
「処遇に困って護衛にしましたが、この子達に魔族を斬らせるのですか?」
「立ちはだかるもの全てです、
これからサキュバスは騎士を名乗りなさい」
サキュバス達はお婆様の真意を図りかねたが黙って聖剣を持って部屋を出た。
その夜、アンに洗体された二人はアンが寝付いたのを確認してこそこそ話し出した。
「剣は手にはいったが、聖剣でアンを殺せないな」
「ああ試してみるまでもない」
「おかしなことになった、神のやろうにはめまくられたような嫌な気分だ」
暗い気持ちのサキュバス達は不意に話しかけられた。
「そこのサキュバスさん・・・だよね?」
城の部屋の中には誰もいないはずなのだが。
「誰だ、おまえ天使か?
聖剣の配達ミスってところか、ほらよ持ってけ」
「天使とは光栄だなぁ。
だがそんなもの渡されても困ってしまうよ。
私はマンドラゴラの妖精でミスティ、そしてこの子達は私の仲間だよ、所でここら辺にドラゴンはいないかな、匂いはするんだけど薄くて分からないんだよ」




