ぐるぐる
「おい、そこの子供。どけ」
ライザが振り向くと人族の青年が剣を持って立っていた。両脇には魔術師の男と弓を持った女そして聖職者の女がいた。いわゆる冒険者パーティのいで立ちだった。
「あ、ハイハイ、お先にどうぞ」
ライザは高慢な物言いには何も返答せずに怪我をしたドラゴンの兄弟をおぶって診察を待つ列の順番を譲ろうとした。そうすると剣を持った男は怒りだした。
「お前はそれを置いて横にどいてろ、それは見た目はガキだかドラゴンが化けている危険な人外だ」
魔術師の男がなにかに気づいてささやいた。
「お前もドラゴンか、これはいい、まとめて2匹退治だ」
ライザは兄弟を傷付けた相手だと知って言い返した。
「今なら見逃してやる、お家に帰りなさい」
「なみの人なら恐れおののいて逃げていくんだろうが、俺は神に選ばれたんだよ、見ろこの聖剣を」
男が得意げにかかげた剣はまわりの光を吸い込むかのように黒く輝いていた。
「この剣はこの世の邪悪を切り裂く神に選ばれたものだけが持つ聖剣だ。
おまえ達のような邪悪なドラゴンもこの剣で切り刻んでやる。
さあ、あとは首を落とすだけだ。その次はお前だ」
それを聞いた診療を待っていた年寄り達が口々に「ドラゴン様は悪いドラゴンではない」と言ったが
「おまえ達は騙されている」
そう言って話を聞かなかった。
「外が騒がしいな、順番で喧嘩でもしているのか、それになにか禍々しいし、誰か見てきてくれ」
アシャがそう言うとぐるぐるが洞窟の外に出ていった。
「おーい、すぐに順番が来るから仲良くしてくれ」
男はそれを見ると、二人と同じ出で立ちであることを見てとるとライザの胸に突き刺した剣を抜きながら「おい、三匹目だ」と言って笑った。
ぐるぐるがなかなか帰ってこないのでさっさと終わらそうと思ったアシャは・・・
「あー、まだもめてるのか、しかし魔物の気配が凄いな、今日はこの辺でやめとくか」
アシャは立ち上がると座っている患者の頭をポンポンと叩きながら「はい完治、はい完治、はい完治・・・りゅう、後は頼むぞ」と言って回った。
『はははっ、アンには見せられないなこんな適当な治療』
「なにか問題があったら明日また来てくれ」
そう頭を叩きながら洞窟の外に出ようとすると外で待っていた患者が洞窟に逃げ込んできた。少し離れた場所に見知らぬ子供とライザが倒れており、ぐるぐるが炎を男達に吐きかけていたが魔術師の男の障壁にさえぎられて炎は届いていなかった。
男はゆっくり歩いてくるアシャを見ると
「おい、オバサン、あんたもドラゴンに操られているのか、今解放してやる」
そう言ってぐるぐるに切りかかった。
アシャは癒しの力を男に浴びせた。男はぐるぐるの首を切りとろうとしたが剣は跳ね返された。
「ぐるぐるもライザも、それに、だれだ?この子、まあいいみんなこの手の魔族に憑依された単純ぼくちゃんとの戦いかたを知らないか」
そう言いながらライザ達の傷を治した。
男はしりもちをつきながら魔術師と聖職者に怒鳴るように言った。
「おい、このオバサンは魔女だ、おまえ達なんとかしろ」
だが両脇を見たが二人はいなかった。アシャは男を憐れむように見下ろしながら
「二人、いたな確かに、だがもういねえよ。
消えてしまうとか、かなり高位な魔族につかれていたみたいだな、ボク。
それとだな、私はオバサンでも魔女でもない、そこら辺にいる美人のヒーラーだよ」
アシャはそう言うとライザ達の治療を終えて男に歩み寄って剣を拾い上げた。
「これは元、魔剣だな、もう魔力は無い、ただの変な形の棒だ」
そう言って男に投げ返した。そして、
「ぐるぐる、この二人を頼むよ、上手いんだろ」
「うわあーー!
食わないでくれ、俺は旨くないぞ」
ぐるぐる巻きにされた男と女は正座をしてアシャの前に座らされた。椅子に座ったアシャは男の顔を足の裏で蹴りながら消えてしまったお供の魔族について聞いた。
「ボクはあの魔族とどこで知り合ったの?」
「冒険者ギルドで知り合って、「おまえは勇者になる素質があると」はい、パーティーを組みました」
「そんな素質ねえよ」
「はい、そうですね、そのようです」
「それで聖剣だ、とか言われて渡されたのかあの魔剣」
「そんな感じです」
下を向いて目を見開いて震えていた女は緊張に耐えられずに喋り出した。
「ああああ、あたしも魔弓を渡されましたが、消し飛びましたぁ、さっきので消し飛びましたぁ」
「聞いてねえよ」
「はい、すみません」
「で、どうするんだよ、私のとこの若いのを痛めつけてくれたわけだが。
何て言えばいいんですかねえ、ドラゴンの親が家で待っているんですが」
「誠意をもって謝ります」
「誠意って、持ってるのか?」
「持ってるとおっしゃいますと」
「金に決まってるだろ」
「少し持ってます、前に討伐したお金がまだ残ってます、はい」
「・・・おまえ、他にもドラゴン」
「いえ、今回初めてです、前のと言ったのはマンティコアです、はい」
「じゃあ大したこと無いな」
「そうですか、まあ、お姉さんのような実力者ならもっとスゴいの討伐してるんでしょうね、はははっ」
「笑うな」
「すみません」
まったく出番のなかったサイラはイライラしながら
「おいおまえもう一回暴れろよ」
「ご冗談を、暴れたら殺すんでしょ?」
「魔剣をとってこい、待っててやる」
「魔族は死んでしまいましたから、一瞬で死んでしまいましたから、もう魔剣をもらえませんよ、はははっ・・・ごめんなさい」




