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プチヒーラー  作者: テクマ
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ぐるぐる

ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガタン


車輪を鳴らしながら、討伐の地に向かう馬車はアンと女性の神官を乗せて走っていく。

騎士達は馬車と王子を取り囲むように配置されて馬に乗っていたので馬車の中のことは知らない。


アンはレイに借りた本を広げながら文字を追ってはいたが、出掛けにおばあちゃんから聞いたことが頭から離れずそればかり考えていた。


数時間前のことである。

城のおばあちゃんの部屋では常につめていた神官達が忙しく動いていた。神官達は最近では消えかけていたおばあちゃんの姿が見えるようになったようで、以前のように何もないベッドを見ながら怪奇現象のような時おり起こる物音に怯えることもなくなっていた。アンとおばあちゃんの会話も聞こえるようになって、神官達の癒しの力が増したことがわかった。


カラーーン、コロコロ


部屋のすみに鉄パイプが転げ落ちた。

神官が拾い上げて部屋の壁に立て掛けたとき、アンが入ってきた。


「あれ、その鉄パイプは?」


神官の一人が「最近聖剣の召喚がはかどっているようで沢山たまってきました」と言った。

これまではサタニストによって城の外に召喚されるよう誘導され聖剣は川に捨てられていたが、おばあちゃんの思ったように部屋に召喚されるようになったので嬉しくて沢山召喚しているのか、とも思えたが。


「アン、今いい調子で聖剣を召喚できています、頃合いをみてあなた用にとっておきのを召喚します」


どうやら最高の聖剣を召喚するための練習のようであった。

召喚された鉄パイプの聖剣に用途は無いようだ。りゅう達は喜んでもって帰りそうだが、まあいいだろう。アンはお婆さんの『ゴボウ』とアンが勝手に呼んでいる杖、に慣れてきたのでたいして急がない、今日はゴボウを借りに来たのだ。


「おばあちゃん、明日、討伐に駆り出されました・・・それで、これを貸してもらえませんか」

「あぁ、持っていきなさい。

それと、何人か神官をつれていってください。あなたといると力が増すようです、色々と経験させたいのです」

「はい。

それで、今回は魔族に憑依された人族が多いと聞いています。私は何をすれば良いのでしょう」


おばあちゃんは少し黙って考えたが、意を決したように言った。


「まだ成人していないあなたには嫌なものを見てしまうかもしれないが、誰しも経験することですから冷静に受け止めなさい」


「はい、で、具体的には?」


「冷静に受け止めなさい」


「はい」


アンはそのまま部屋に帰った。



ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガタン


「意味がわからない」


馬車の中でつい言葉に出して言ってしまった。神官達はアンが本の意味を理解できないと勘違いして、お互いに目く張りをしてニッコリと笑いながら鞄から紙を取り出した。


「アンさま、これをお使いください」


神官達はアンに本のカバーを渡した。


「私達も若い頃は意味も分からず夢中になって読んだものです。

ですがあまり人前では、、、オホホホッ」


『エロ本にブックカバーをかけろと?』まあ道徳の閾値が高いのであるが、ここは黙って使わしていただくか。





「ここがお前の城か」


サイラはぐるぐるの洞窟の前まで来て呟いた、が、洞窟がない。


「山の民が岩を詰めて隠してくれたのでかな」


ぐるぐるはあたりをつけて岩を取り除きはじめた。それをサイラ、ライザ、りゅう、アシャが見守っていた。ぐるぐるの一時帰宅に洞穴や眷族をみたいドラゴンが付き添って来たのだ。


「山の民の病人はどこにいるの?」


アシャは病人の治療に連れてこられたのだ。アシャは少しイライラしていたがマイペースなぐるぐるは入り口か綺麗になるまで答えずに岩をどかした。


それから皆を中に入れてお茶を出してから「今つれてくる」と言って外に出ていった。


「綺麗な洞窟だね、だが金銀財宝は無いのか、ドラゴンなのに本ばっかりだ」

「我が妹にしては変わり者だな、だから冒険者や勇者に討伐されなかったのかもしれないが」

「あの王様が勇者だから、そんな面倒なことはしないよ」


いかにもドラゴンがいそうな洞窟だが、派手に人を殺害しなかったので目をつけられなかったのだろう、そうアシャは考えていた。


しばらくするとぐるぐるは病人をつれて帰ってきた。


「これだけかい?」

「いや、村にふれて回ったから後から来るだろう」


アシャは片っ端からヒールしたが洞窟の外まで列は出来て途絶えることはなかった。


「これは多いな、例の黒い斑点もいる」

「魔王戦で戦ったものもいるのでしょう。

山の民は英雄だ」


サイラは


「お前と共に魔王と戦ったのか?」

「私は下界でそんなことが起きているとは知らずにここで寝ていた。

だが魔王戦の後で本が出来て助かった、暇潰しには丁度いい。

本を買うために町に行くようになったから、それからだな、彼らが集まって来たのは」

「もしかして他の兄弟もどこかの洞穴にいるのかもしれないな」


りゅうは診療所でするようにアシャの手伝いをしながら包帯を切ったりお湯を沸かしたりしていた。


サイラは暇そうに足をぶらぶらさせながら床に座りぐるぐるは本を読み出した。ライザは列の整理をしていたが。一番最後に並んだ子供に目が留まった。


「あれ、君は同族だね。

私達の兄弟?」

「分かるか?恥を忍んで治療を受けにきた」

「恥って、大袈裟だな、名前は?」

「無い」

「お母様は少し遠くの診療所にいるから、治療を受けてから会いに行くといいよ。

それまでに名前を考えておいて」


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