某王
「どうも、さあ、なんて言うか。
はっきりしないんだよね、捕まえに来たんだっけ?」
「いつものように戦って仲間増やす予定だったにゃ」
ふにゃは縄の端を持ってドラゴンの後ろを歩いていた。
「・・・・」
「お前逃げようと思ったら逃げられるだろ、と、こん棒様はおっしゃっておられるにゃ」
ドラゴンはぐるぐる巻きに自分で巻いた状態ではあるが縄の間からはじっこをふにゃに渡すのを見せていたので当然の疑問である。だが聞こえないふりをしながら先頭を歩いて行った。
ドラゴンは飛行機のところまで来ると珍しそうに眺めながら・・・
「これで来たのか・・・命知らずだな」
と言った。
たかしは機関銃を飛行機につけると、ふにゃの膝の上にドラゴンを乗せて離陸した。
「・・・・」
「お前は逃げないだろ、自分で飛べばどうだ、と、こん棒様がおっしゃっているにゃ」
そう言ったがドラゴンは「縛られているから飛べない」と言った。
ふにゃはドラゴンが自分の膝の上に乗るぐらい小さいので「かわいいにゃ」と言って頭をなでていた。ドラゴンは目を細めながらなでられていたが、回りの景色を見ながら回りを指さしながら喋りだした。
「これはすごい、飛行する魔物が近寄ってこないぞ、あそこに見えるのなんて逃げていった」
それを聞くと、たかしは得意そうに話し出した。
「よく気づいたね、これは聖剣を動力にしてプロペラを回しているから飛行機の回りは聖なる力に溢れているんだ、だから魔物は近づいてこないのさ」
ドラゴンと少し打ち解けたかと思ったのでふにゃは「名前はなんて言うのかにゃ」と聞いた。
「名前はない」
「そうかにゃ、リュウ達は自分で名をつけてドラに報告してたらしいにゃ。
ぐるぐるまきのドラゴンも名前をつけておいたほうがいいにゃ」
ドラゴンはこの話に少し興味をもった。
「我が母上が高位のドラゴンであることは村人から聞いていたが、兄弟もいるのか。
それならばソウセキがいいかな、先生の傑作にあやかって」
「それは王様のペンネームだよ、まあこれもパクリなんだけど。
他の、坊っちゃんとか、赤シャツとかどうかな」
「坊っちゃんは少し青いからなぁ、それに悪役の赤シャツを自分の名前にするドラゴンはいないだろう」
「そうか、ならどんな本を読んだ、そこからなづけるのだろう」
「本なら、極みの青とか王様宇宙を語る、なんかも読んだよ」
「それなら、ジャックとかホーキングなんてどうだ?」
「エリックかな」
「エリック?そんなの出てたかな、まあいいか。
ほら。エリック、王様の城だよ」
「おおあれか、だがエリックではない。そもそも私は女だ、そう言っただろ」
広場に着陸するとドラゴンは自分で飛行機から降りてふにゃが降りるのを手伝った。
後半無言だった、ふにゃは降りると吐き出して「危なかったんだにゃ、ドラゴンの頭にかけてしまうところだったにゃ」といった。
たかしは真っ白い顔をしながら・・・
「危なかったな、ドラゴンが怒って前の操縦席の私の後頭部に炎をはかれたら死んでたよ」
ぐるぐる巻きのドラゴンは胸を張って城の中にはいっていった。
ドラゴンは城のなかに入ると「もういいだろう」と自分から縄をといて王に会いに行った。
王は中庭でジャガイモっぽい草に水をやっていた。そこにドラゴンが入って行くと・・・
「やあよく来たね、ふにゃとは仲良くなったのかな」
王は喧嘩して仲良くなると一緒に戦う、と思っているので、このくだりは何度も経験があった。
「とりあえず捕縛されたので、家来ぐらいですかね。
そんなことより市場で売ってる本は王が書いているそうだな、あの変な物に乗ってる者が言ってたぞ」
「ちょっと展開が違うが・・・あぁ、どれを読んだのかな?最新刊のほぼ解体医学序論、かね」
「違います、我輩こそ猫である、お前らかかってこい、と、おっしゃっているのにゃ、とかですか」
「それはふにゃのことを書いた数少ないオリジナルに近い作品だ。
これはお目が高い、こんなところではなんだからお茶とお菓子はどうかな」
二人はお茶を飲みながら小説の話をしていたが夕方になったので皆で食事をとってまた話し込んでいた。
「仲がいいんだにゃ」
ふにゃはのんびりとこん棒を磨きながら言った。
深夜になるとドラゴンはもらった本を束ねて袋に入れ出した。
「では失礼します、こんなに本をもらってありがとうございます」
「いやいや、泊まっていきなされ」
ドラゴンは泊まって行くことにした。そんなやり取りを数日繰り返して、すっかり城での生活に馴染んだドラゴンは帰ることを忘れて城に住み着いてしまった。
ある日ドラゴンが城の庭を散策していると、城壁のむこうから声をかける者がいた。
「おーい、ドラゴン様」
洞穴の周りに住んでいた山の民だった。
「いつお帰りになるんですか?」
ドラゴンはすっかり帰ることを忘れていたので狼狽したが「もうしばらくしてから」とだけ言った。
「やはり長居は出来ないかな」
王に会って帰ることを告げた。
「長い間お世話になりました。今度こそ帰ります。
ですが途中、母上に挨拶をしていきたいので場所を教えてくれませんか。
そして、
母上に名乗る名前をつけたいのだが何かいいものはありませんか」
王様は少し考えた後、ひねり出すように言った。
「りー、はどうかな(ぶるーす)りーは」
ドラゴン繋がりでいい名だと考えた。




