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プチヒーラー  作者: テクマ
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シャー


「増えてる」


シャーを見てレイラは呟いた。からだの向きを変えずに目だけをこちらに向けているのは少し機嫌斜めのときだが、今がまさにそうであった。レイがとっさにその暗い雰囲気を感じ取って喋りだした。


「シャーはスッゴい強いんだよ、それに・・・」


レイの喋りにかぶせるようにシャーは・・・。


「おひかえなすって!」


シャーがいきなり挨拶をはじめた。

レイラはあっけにとられのるかと思ったが、とっさに。


「おひかえなすって」


と返した。どうやらこの特殊な挨拶を知っているようだ。

そしてこの挨拶を終えてシャーは診療所でしばらく生活することになった。

機嫌の治ったレイラはドラ達と作った食事にクロが持ち帰った魔物を使った料理を作ってみんなで食べながらレイが語る今日の出来事を聞いて楽しんだ。そして洞穴の奥で出会った騎士の話になったのだか、騎士の話を聞くとレイラは何かに気付いたように話し出した。


「その騎士はたぶんあの国の王子だよ、と、言っても王様がなかなか死なないのであとがつげないままそこそこの歳になっているはずだけど」


レイラは魔物のムニエルをほおばるとさらに続けた。


「重要なことがあるよ、私の記憶がただしければ、王子はまだ独身だ。


あれ?アンとレイは喜ぶところだよ」


アンとレイはお互い目を見て、食事のてを止めて言った。


「わーい、嬉しいな」


誰が見ても心がこもっていなかったのだがドラが。


「まだ食欲の方が強いんですよ」


そう言って笑ったが、レイが一言。


「レイラさんはどうですか、アシャさんも。そちらの方に歳が近いのでは?」


触れてはいけない部分に触れてしまった。アシャは。


「わたしは、ほら、間に合ってるから」


目を合わせずに食事を続けながら言った。この話はNGなんだろう、『間に合っているって男いるのかよ?』と思ったが、今はそれを指摘してはダメだと皆は理解した。

アシャもそうだがレイラの過去をアンやレイは知らない、これまでは修行が優先していたし、強面の二人に聞けない雰囲気であったが、最近少しハードルが下がった感じがしていたのだがまだ無理なようだ。


「姉さんたちバツイチでっか?」


こんな時に便利な無神経さを持つネコ族のタマが言った。アンとレイは背筋に冷たいものを押し当てられたかのようにピンと背筋が延びた。二人はナイスと空気読めよ、の両方が頭のなかを駆け巡ったが、タマはたたみかけて言った。


「アンさんとレイさんと親子や思てましたわ、ヒャツハッハ」


シャーもKYを患っているようで。


「あれ、違うんですか?」


今まで、でんがなまんがな、ヘヘヘツ、シャー、ゆうても、ニャー、と自由に騒がしかったのだが、シーンとしてしまった。


「まあええか」


とタマが気を使った所で、アシャはふざけた感じで。


「そうかもしれないよ、さあ二人とも、お母さんと呼んでごらん」

「お、お母さん・・・、キャアーーー!」


アンとレイが笑いながら叫んだ。

間違ってはいないのだが、これで冗談が成立したのだ。タマ達もとりあえず納得してその日は和やかな雰囲気で終わった。





次の日、診療所が開く前にギルドの人が来た。要件はまたマンティコアが出現したから退治してほしいとのことだった。ちょうど診療所の人数も増えたので、すぐミュー達とレイそしてレイラがドラに乗って出かけることになった。森の中を歩いているとミューがきょろきょろしながら。


「ここらへんで見かけたらしいっすねヘヘヘッ」


と言った。あたりを見ながらレイラはめずらしく無口なタマに言った。


「ネコ族は鼻が利くから相手より先に見つけて下さい」

「ワイは風邪ひいて鼻が利きませんわ」

「そういうのは治してからきなさい」


レイラはタマに癒しをかけた。


「今日はあまり感度は良くないかもしれないから私達のまわりにいなさい」


しばらく歩くとドラが何かに気付いた。


「私は来ない方が良かったのかもしれません。遠巻きにしてついてきてますね」


ドラゴンが一緒にいることに気付いているようだが、マンティコアは食欲に勝てないようで、ずっと追ってきているようだ。戦いたくてうずうずしているシャーは提案した。


「みなさんはこのまま歩いて下さい、私がここにとどまればむこうが追いついてきます」


レイラはミュー達も残るよう言ったのだが。


「戦っているシャーのまわりには近づけないヘヘヘッ」


と言ったのでシャーだけ残すことにした。

シャーが立ち止まるとマンティコアとの距離はどんどん近くなっていった。そしてシャーからマンティコアが見える位置まで来たのだが。


「三匹?これはこれは御馳走だ」


シャーは体に巻いたチェーンを外して、頭の上で振り回した。


「おびえても良いんだよ、お前ら」


シャーは振り回していたチェーンの軌道を大きくしていった。そして・・・。


「レッド・シューティングスター!」


楕円系の軌道でチェーンはマンティコアを薙ぎ払った。

ついでに森の木も叩き切った。

マンティコアの気配が消えたのでレイラ達はシャーの所に駆け寄ろうとしたがタマが制止してシャーに話しかけた。


「おい、今から行くけどええな?」

「・・・ああ、かまわん」

「血を見ると見境なくなるんですわ」


広く開けた元森に真っ二つになったマンティコアが横たわっていた。


「血だまりだよ、どうするドラ、持って帰るには血がドバドバです」

「私はかまわないけど・・・薪も沢山あるしここで調理していきますか」






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