みゅー
「アンはまだ帰ってこないのか、飯が冷めてしまう」
「・・・」
皆はアシャを責めるようにだまって明後日の方をむいていた。
「・・・私が呼んでくるか、私が。私が原因だもんな」
アシャはアンの発する癒しの波長が分かるので、だいたいいる場所が分かっていた。そこに向かって歩いていると遠くからでもよくわかるある現象が起きていた。
「あー、やっぱりここにいたか。だがしかし・・・」
アンの座っているまわりには町の人や鳥が眠っていた。
『自分の世界にひたるためにこれは無いな・・・まあいいか、殺したわけじゃないし』
「おーいアンさん、ご飯だよ。そろそろ機嫌なおして帰っておいでよ。
ドラの作ったシチューもアツアツで美味しいぞ」
「・・・」
「あのさーーあの程度で怒りすぎだよ。私が師匠についていたときは・・・」
アシャにこれ以上言わせたくないかのようにアンは催眠結界をといて立ちあがった。
「帰ります」
「あ、うん、帰ろうか」
アシャとアンは眠っている人をおこして『こんな所で寝たら風邪を引きますよ』と言った。
「あれ、どうしたんだろう、女の子が泣いていて気になって近づいたところまでは覚えているが。君だったような」
「私は泣いてませんよ」
「そうか、まあいいか、もう夕方だな. 暗くなる前に帰るか。おこしてくれてありがとう」
そう言って帰って行く人を見送りながら、アシャとアンも帰ることにした。
おしゃべりなアシャやアンにとっては耐えられないほどの沈黙がしばらく続いた後にアシャは。
「悪かったよ、言い過ぎた」
「いえいえ、だれにでもそういう時はありますよ」
アンは機嫌がよくなった。そのときアシャは気付いた。
『完全に私が悪者だな・・・待てよ、ああっ、こいつ私にむかえにこさせて謝らせやがった、それにぜんぶウソ泣きじゃねえか。私の完敗だ』
「アンさ、おまえ結婚したら男を尻にしくタイプだよね」
「もちろんそうしますよ」
アンは翌日には何も無かったかのように仕事をしていた。アシャは相変わらず口は悪いが距離感が分かったので前回のような修羅場になることは無くなった。
「町の周辺でマンティコアが目撃されているから気をつけるように。はい今日の朝礼はこれで終わりまーす」
マンティコアは獅子の顔と蛇の尻尾を持ち、羽根で空を飛ぶ魔物である。本来冒険者や軍隊に討伐依頼が行くのだが、魔族軍対応に忙しいので午後になると神殿に討伐依頼が来た。
「今回は私が診療所にいますから、レイラが行ってきてくださーい。そもそも攻撃魔法は得意じゃないので」
「私だけですか?」
「アンとレイとリュウも山菜取りがてら連れて行って大丈夫でーす」
「ドラは?」
「ドラは仕事がありまーす」
「まあいいか、マンティコアなら近づけなければ問題ない、魔術士ならたわいの無い相手だ」
リュウに乗って目撃情報の多い山岳地帯に行くと山菜が沢山とれたのでアンに結界をはってもらい休んでいた。すこし状況になれたレイラはレイに倒させることにした。
「マンティコアが来たら捕縛魔法を使って動けなくして、そしたら攻撃魔法を使ってとどめをさして。
だめなら聖剣で倒すから」
「ええ、大丈夫かな、手順を確認しておくか」
レイは真剣に段取りを確認していた。『あれ、捕縛魔法のスペルはなんだっけ。そうそう、来る前に確認したんだった、大丈夫。それに捕縛魔法の前にアンの麻酔結界に引っかかるから安心』
リュウがアンの結界の外をウロウロするマンティコアを見つけてはしゃぎだした。リュウならひと噛みで倒せるだろうが、ここはレイの練習を兼ねているので一歩引いた。
「警戒してますね、結界に気付いているようです。
アン、結界をといてください」
「はい」
結界をとくとマンティコアは少しづつ距離をつめてきた。
レイラはレイに
「まだまだ、もっと引き付けて・・・今です!」
マンティコアが突進してくるのに魔法が発動されないのでみんなレイを見た。
「レイどうしたの?」
「全部とんじゃった」
「とんじゃったって、呪文が?」
「帰ったら特訓です」
やれやれと言った感じで頭をふりながらレイラが聖剣を振ったちょうどそのとき。
「オーーーーーラ!!!!」
マンティコアが真横に殴り飛ばされた。
「ヘヘヘッ、お前ら大丈夫か」
「え?大丈夫ですけど。あなたどなたですか?」
「俺か?俺は名乗るほどの者じゃねえが、
ふにゃ総長率いる王国連合、一番隊隊長、木刀のミューだ!
ヘヘヘッ」
ミューは木刀を背中にしょっている、ふにゃ、よりも少し背の高い猫耳のある木刀の勇者である。実際に倒したのは急所を切り裂いたレイラの聖剣であったが、転移した聖剣が頸動脈を切り裂いてもとに戻ったので良く分からなかった。だがレイラは分かっていたので。
「そうですか、ありがとう、助かりました。
アン、レイ、倒した証拠にマンティコアの牙を抜いてきて下さい。
リュウは出発の準備を」
「全部くわえて持っていけるよ」
「ああ、そうでした、そうしましょう」
「じゃあ、ミューさんさようなら」
「ヘヘヘッ、じゃあ気を付けて、って言うか。
すまないが俺も乗せて行ってくれないかな。道に迷っているんだ」
「診療所のある町までですが、よろしいですか」
「ヘヘヘッ、ちょうどいいそこで、ふにゃ総長、と待ち合わせだ」




