煙ご飯
――二時間後
「終わった、無理、ダメだ、終わった」
リクは空腹で倒れていた。
「あー無理、お腹空いた、死ぬ、終わった」
路地のど真ん中でひっくり返ったリクは、もうあんなやつ知らねぇ! とやけくそになりながら起き上がり、家に帰ろうとフラフラする足を動かす。
街はすっかり夕方、空はオレンジ色に染まり、住人は晩御飯の準備を進めている。
「いい匂いだ……」
レンガの家からモクモクと溢れ出る煙は様々な匂いをリクの嗅覚へ届け、それと同時にリクの意識は遠のいていく。
「もうそろ俺もまともな食事したいぜ……」
ちくしょう……。と涙を流しながらリクは死に物狂いで家に戻った――
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「ただいまぁ。はぁ……相変わらず腐った家だな……」
蜘蛛の巣に、ボロボロに朽ちた木、床の所々に穴が開いている愛家に文句を言いながら、ダンボールに布を乗せた簡易どころじゃないベットに横たわる。
「はぁ、疲れた……。くっそぉ、あのダンジョンさえ1人で開けれればなぁ……」
今もこの地下にあるダンジョンに舌打ちをしたリクは、もういいや、今日は寝る! と防具を雑に外し目を瞑る。
レプリカと教えられた防具にもはや価値など微塵もない。
「本当散々過ぎるな今日――」
そう再び涙を流し、目を腕で覆ったリクは、すやすやと……。
だが今日という一日はまだ終わっていない――
「きゃぁぁぁぁぁっ!! く、蜘蛛出たァァァァァ!!!!」
「――――――んっ!?!?」
そんな何処かで聞いた事のある甲高い声に飛び起きたリクは、何事だと声のする方に向かおうとするが、同時に冷や汗が止まらなくなった。
「な、なんで地下から声がしてんだ……?」
誰もこんな所来ないだろうと無防備にしていたツケが回ったのか、堂々とあるダンジョンを思い返し、リクは滝のように汗を流す。
「まずい、バレた? せっかく見つけたのに? てか俺捕まる!?」
パニックに陥りかけるリクは、とりあえず口封じじゃぁぁぁ! と一気に階段を駆け下りた――
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