コエ
ある日遺体が送られてきた――
「……………………」
綺麗なワインレッドの赤髪に手を入れながら、俺はその子の笑顔を一生見れない事を悟った――
「聞かせてくれ……」
それでも俺には声が聞ける。
呪詛 邪跡の蘇生(口の欠片)
悪魔によって与えられたその力に今ばかりは感謝する。
どんな生物の死体からも遺言を強制的に聞いてしまうその力に、俺は今まで苦しんできた。
ダンジョンに潜ってモンスターを殺そうにも脳裏に響く悲痛の叫び――
『まだ……死にたくない……』
『今までありがとう……。妹……お前だけは――』
『助けて、助けて助けて!!』
『私……何か悪いことしたのかな……』
殺せば殺すほど俺は悪人の気持ちになった。
普通の冒険者は嬉々として殺しているのに俺には出来ない。
そして弱者の俺はその地獄に耐えられず、引きこもりになった――
それなのに……。
「お前はいつも……傍にいてくれたよな…………」
隣にいてくれた彼女に俺は涙を流すことしか出来なかった。
笑顔を忘れた俺に、彼女は毎日笑って、俺の為に働いて、家事をして、手を握ってくれていた――
「なんでこんな事に……。なんで、なんで! なんでなんでなんでなんでッ!!」
街の人からも嫌われていた俺を唯一好いてくれていた人。
それを俺は何も恩返しせずに失った――
「頼む……頼むから、もう一度声を聞かせてくれ――ミルク」
青白く、息のしない彼女の名を呼びながら、俺は強く冷たい体を抱き締め、呪い発動のその時を待った――
そして一週間。
「…………ざけんな」
呪いは初めて発動しなかった――
俺は本当に何のために産まれたのだろうか――
~~~~~~~~~~~~~~~~~
『彼もうボロボロだねぇ』
『………………』
薄暗い闇の中、男はつぶやく。
『さぁさぁ、ミルクさん。あとは君が壊すだけですよぉ?』
『………………ウウ』
薄暗い闇の中、ミルクと呼ばれた巨大な蛇の下半身を持った化け物は唸る。
『街を壊そう、そして世界を壊し、私の世界に――』
フハハハハッ!!! と笑う男を月光が照らす中、隣にいた化け物は涙を流した――
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これから少し語るのは俺が呪いにかけられる前の話。決して楽な人生じゃなかったけど、辛くてもそれさえ幸せだった、地獄なるまでの物語だ――
よろしくお願いいたします!!
ブクマや感想などなどお待ちしております……!
本日4話ほどあげる予定です!!