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「ハリー、元気にしてんのかぁ?さみしかったぞー?お前の声がききたくってよー」
俺はただ、泣いていた
なんにも言えない俺の異変を感じた親方は
「なんだ?なんかあったのか?いってみろ。俺が力になってやるから、今、どこにいるんだ?」
お節介…親方はずっとお節介だったよな
「ず、ずみまぜん…いま…栃木…にいて…うぅ…離婚…して…死のうと…思って…うぅ…」
ちゃんと言えてたかな…でも親方はわかってくれた。
「馬鹿野郎!!!!もういい!!!!帰ってこい!!!北海道に、帰ってこい!!!死ぬんなら北海道で!!!!俺の前で!!!死ね!!!いいか!!とにかく帰ってこい!!!」
そして、29歳、12月
俺は6年という現実逃避を終わらせ、北海道に帰ってきた
親方に会ったら死のう
家族に会ったら死のう
死ぬ為に帰ってきた
生きる目的は、もうそれでしかない
死ぬ為に、悔いのないように、頑張ろう
親方の元で暮らし、仕事をさせてもらった
4月、給料袋を渡された俺は不動産へと向かった
親方の元を自立して、生活する為だ
暇つぶしにマッチングアプリをやってた
そして付き合うことになった彼女と
過ごしたいっていうのもあった
彼女はまだ若かった
実家を出たことはなかったし、家族の不満も言うし、仕事の愚痴とか不満ばっかりで甘ったれた子だ
だけど俺が家を借りると、彼女も徒歩30秒の所に家を借りた
怖かっただろうに、彼女はまず行動を起こした
仕事も負けずに頑張ってた
店長になるんだって、意気込んでた
その姿に俺も頑張らなきゃなって思った
いつしか
死にたい、死ぬんだって感情は消えていて
仕事を頑張ろうって
職人として一流になろうって
そう思えるようになってた
1年が経った
お互いの家を行き来するのもおかしいし
一緒に暮らそうかって話になった
怖かった
また裏切られるのが
また失うのが怖かった
だけど彼女は
「私はずっと好きで居続けるよ、今日よりも明日の方がハリーの事を好きになるよ、だから絶対に裏切らない、10年後どんなに好きで居られるか怖いくらい」
それは、とても美しくて温かかった
一緒に住み始めて1年が経っても
付き合いだして2年が経っても
その言葉を裏切ることはなかった
俺は決意した
プロポーズを