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二度目のプロポーズ  作者: ハリー
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自動車工場を辞めて、調理師を目指して彼女のいた千葉に引っ越して、病院の調理の正社員になった


理由はそれほどない

ただ、なんとなく千葉にいる彼女といたかった

それが、その時俺がやりたかったことだったからだ


好きな事をしていた


好きなことしかしなかった


周りには誰も居ないし、俺が主役


俺を中心に世界は回ってる、そう錯覚していた




単独事故。



運ばれた救急車の中で救急隊員の方が

「連絡の取れるご家族はいますか?」と聞いてくる


「北海道なので…いません…一緒に住んでる…彼女…」と朦朧としながら答える俺


「彼女じゃなくて、親族の方で…」


「…いません!!!」

そして意識は途絶えた




それから俺は回復し、彼女に結婚を申し込んだ

ただなんとなく、死ぬ時に1人なのが嫌だったからだ

ただ、夕食どきに、ご飯を食べながら

「死ぬって時に、一人なのは嫌なんだ。籍入れてくれる?」

なんて勝手な理由だ

そんなプロポーズだ


それでも彼女は受け入れてくれた


結婚生活はうまくいってたし

俺も目指してた調理師にもなれた

はずだった



3年が経ったある日


彼女は「別れたいの」と言った


Twitterの裏垢で浮気してることは知ってた

けど黙ってた

なぜか?

一人になりたくなかったからだ


隠れてピルを飲んでいることも

ピルを飲んで遊び歩いていることも

なにもかも、知ってた

けど、黙ってた。


世の中の渡り方を知ってるからだ

自分のために自分の気持ちを押し隠す

得意なことだ


彼女のことはそんなに好きじゃなかった

けど結婚したんだから、一家の大黒柱なんだから、頑張ってた

頑張ってたけど、そんなの見抜かれてたんだ


別れを受け入れた

幸い、子供はできない、できようのない夫婦だったから、そんなに複雑な離婚ではなかった


もう、俺には何もない


周りに人も、音楽も、アイデンティティも、何もない


剥き出しの

裸の

俺がただ社会の中にいるだけ



「死のう」


そう思って、電車に乗った


気付けば千葉から栃木大宮駅のホームの椅子に一日中座ってた


乗る理由のない電車を何本も見送る。

「次の電車がきたら…次の電車が来たら…」


死のう


簡単なことだ、飛び込むだけ


「次の電車が来たら…」

そう考えては見送る


不意に携帯が鳴る

おれは携帯の画面を見る


「着信 親方」



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