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曲を作ってはレーベルに送る。
朝6時に起きて19時に家に帰ってきて、ギターを弾いて曲を作って、家の事をやって、明日の準備をして、寝て、朝6時に起きて19時に家に帰ってきて、ギターを弾いて曲を作って、家の事をやって、明日の準備をして、寝た。
休みは日曜日だけ。
休みは、本当に休みなのだ。
眠り腐って終わる。
しかし、曲ができたらレーベルに送る。
しかし、どこからもいい返事はない。
あっても「グループで…」「作曲家で…」「ダンス…」
くだらない。
もう、別に本気じゃない。
俺は仕事がメインで音楽は片手間。
もうあの頃のように音楽だけを考えて生きることは出来ないのだ。
それからまた3年が経ち23歳になった。
気まぐれで応募した音楽の大会で優勝した。
審査員だったプロデューサーは君の想いが好きだと言ってくれた。
俺1人を見てくれた。応援しにきてくれた親方も喜んでた。
曲をいっぱい作ろう。
そう言われた。育成だ。
業界のことはわかる、知ってるからこそ
頑張ります、曲作りますと言うものの
休みは日曜日しかないし、普段家に帰ってきても疲れてギターも弾けない日が少なくない。
熱量はもう、あの頃とは違う。
半年経ち、一年経ち、見限られるのは当然だった。
自分のせい。努力不足。
わかってる。
仕事がメインで音楽は片手間。
言い訳。
もう、あの頃のような気持ちになれない。
音楽は、俺を救ってはくれない。
段々と居づらくなってくる。
音楽頑張ってるか?と心配してくれる親方も鬱陶しい。
結局、逃げた。
東京に飛んだ。
音楽のことは一切考えずに自動車工場で働いた。
風俗に行ったり、キャバクラに行ったり
日曜日の朝、知らない道で起きたことは少なくない。
楽しい。
音楽なんてなくたっておれは生きていける。
それから、ある女の子と出会い2人で暮らすようになった。
一度目の結婚、そう元嫁だ。