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二度目のプロポーズ  作者: ハリー
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建築会社に就職して、職人の道を選んだ。


17歳の子供が働ける場所は限られているからだ。


毎日、新しいことの連続で楽しかった。


親方は優しかったし、怒ることもあったけど、それでも真剣に物作りをするというのは性に合っていたし、やりがいも感じていた。


ある時、ご飯に連れて行ってくれた。

親方は「なんかやりたいこととかないのか、これからの目標は、やりたかったこととか」と聞いてきた。


おれは初めて「音楽やってましたよ。結構いい線いってたんですけどね、俺、こんなんだからダメでしたわ、はははは」と親方に話した。


そのままスナックに連れて行かれた。


「ほら、歌ってみろ」とぶっきらぼうにマイクを渡す親方に

「いやいや、もう音楽はやめたんで、大丈夫です」と俺。


「馬鹿野郎!俺が聞きたいから歌うんだよ、お前が歌いたいかじゃねえ!」


確かに、と思うのと、親方の命令は絶対なので歌うことになった。


「十八番だ、十八番。十八番を歌え!」親方は言ってくる。


「十八番っていわれても…オリジナル曲ばっかりだったし…」と考え込む。


「お前が1番歌いやすい曲でいいんだよ、評価するのは俺じゃない、お前が歌いたいって曲が十八番なんだよ」


十八番の定義がなんなのか、それはとても興味深かったが、勢いに負けて、とりあえず、で曲を選んだ。


福山雅治「最愛」



もっと泣けばよかった

もっと笑えばよかったのかな

馬鹿だなって言ってよ

気にするなって言ってよ

あなたにただ逢いたくて…




歌い切ると、場は静まり返っていた。


凍りついたような空気が思い出したように張り裂けて他の客を巻き込んだスタンディングオーベーション。拍手と歓声がスナックに充満した。


「その才能があれば俺んとこになんているのもったいねぇだろがっ!馬鹿野郎が…!」


号泣しながら抱きしめてくる親方。


俺も気付いたら泣いていた。


すみません、すみません、すみません


何故かわからないけど謝って、謝って、謝ってた。


高校の時、社会を渡る為に謝ったあの瞬間のごめんなさい、じゃない。


ずっとアーティストを目指して努力し続けていた自分に謝っていた。


その日以降、仕事は続けながら曲作りをするようになった。

20歳は越えていたがまた音楽を続ける事を決めた。

しかし、社会はそんなに甘くはなかった。

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