9歳から32歳までの自叙伝
いろいろありましたよ、うん。
思い返さなきゃならない出来事はといえば
小学校3年生の夏にまで遡る。
スポーツが大好きな少年だった。
毎日友達と外で遊んだり、公園で野球したり、サッカーしたり、そういう少年だった。
ある日、家に帰るとテレビの前でギターを弾いている兄がいた。
テレビでVHSの映像に合わせて弾き語りをしていたのだ。
それを見て少年は心臓がドクンと音を立てたのを感じた。
かっこいい、テレビの中でしか見たことない光景に、真っ直ぐに憧れを持った。
兄に懇願し、自らもそうなりたいと、ギターを弾かせてもらった。
何日も、何日も、何日も。
兄がギターを弾いている度に自分も弾かせてもらえる、その順番が来るのを待っていた。
学校にいても、早く家に帰ってギターが弾きたかった。
何をしていても、早くギターが弾きたかった。
スポーツばかりで家にいることの少なかった少年は、外で友達と遊ぶことも滅多になくなった。
少年はギターに恋をした。
3年の月日が経つと小学生の終わり、卒業式を迎える。
既に当時、弾き語れないものはなくなっており、卒業記念に卒業ライブを行うまでに至る。
大盛況の卒業ライブ。
「僕は将来、アーティストになるんだ」
この時、明確な目標になったことを実感した。
中学生になり、路上ライブを毎週末行っていた。
北海道の新聞に掲載されたこともある。
音楽の大会で色々な賞ももらった。
高校生、遂に道は開ける。
大手音楽レーベルからスカウトを受け、強化人材として育成を受ける。
しかし現実は、社会は、思ったほど、自分に都合よく出来ているわけもなかった。
ひとりのアーティストとしてではなく、その歌唱力と独創性と個性をグループで発揮してもらいたいんだと話された。
「思っていたのと、違う」そう思うのは自然な事だった。
メロディーも曲構成も歌詞も自分にしかないものだと思っていた。
メッセージを伝えたかった。
ただ黄色い声を浴びたかったわけじゃない。
自分を、ただ自分だけを見て欲しかった。
ダンスもしたことないし、したくない。
誰かと一緒だなんて、ありえない。
人様の曲でデビューだなんて、吐き気がする。
少年は塞ぎ込んでいった。