表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二度目のプロポーズ  作者: ハリー
1/8

9歳から32歳までの自叙伝

いろいろありましたよ、うん。


思い返さなきゃならない出来事はといえば

小学校3年生の夏にまで遡る。


スポーツが大好きな少年だった。


毎日友達と外で遊んだり、公園で野球したり、サッカーしたり、そういう少年だった。


ある日、家に帰るとテレビの前でギターを弾いている兄がいた。

テレビでVHSの映像に合わせて弾き語りをしていたのだ。


それを見て少年は心臓がドクンと音を立てたのを感じた。

かっこいい、テレビの中でしか見たことない光景に、真っ直ぐに憧れを持った。


兄に懇願し、自らもそうなりたいと、ギターを弾かせてもらった。

何日も、何日も、何日も。

兄がギターを弾いている度に自分も弾かせてもらえる、その順番が来るのを待っていた。


学校にいても、早く家に帰ってギターが弾きたかった。

何をしていても、早くギターが弾きたかった。

スポーツばかりで家にいることの少なかった少年は、外で友達と遊ぶことも滅多になくなった。

少年はギターに恋をした。


3年の月日が経つと小学生の終わり、卒業式を迎える。

既に当時、弾き語れないものはなくなっており、卒業記念に卒業ライブを行うまでに至る。


大盛況の卒業ライブ。

「僕は将来、アーティストになるんだ」

この時、明確な目標になったことを実感した。


中学生になり、路上ライブを毎週末行っていた。

北海道の新聞に掲載されたこともある。

音楽の大会で色々な賞ももらった。


高校生、遂に道は開ける。

大手音楽レーベルからスカウトを受け、強化人材として育成を受ける。

しかし現実は、社会は、思ったほど、自分に都合よく出来ているわけもなかった。

ひとりのアーティストとしてではなく、その歌唱力と独創性と個性をグループで発揮してもらいたいんだと話された。

「思っていたのと、違う」そう思うのは自然な事だった。

メロディーも曲構成も歌詞も自分にしかないものだと思っていた。

メッセージを伝えたかった。

ただ黄色い声を浴びたかったわけじゃない。

自分を、ただ自分だけを見て欲しかった。

ダンスもしたことないし、したくない。

誰かと一緒だなんて、ありえない。

人様の曲でデビューだなんて、吐き気がする。


少年は塞ぎ込んでいった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ