⑨日々【輝視点】
保健室に運ばれた。
そのことで先輩から「今日はサッサと帰って寝ろ」と怒られ、そして起床時間を聞かれたのち「ゲームはどんなに遅くても午後11時迄」との制限までされてしまった。
一人寂しく下校しつつも、僕の胸はポカポカしている。
(……先輩に怒られちゃった)
それはつまり心配してくれた、ということだ。
ニヤニヤが止まらず、妹からは「お兄ちゃんキモッ」と言われたが関係ない。
鏡を見ると、ニヤニヤした僕の頬に大きな黒子のような『・』。
「……あぁぁぁぁぁ~!!!!」
「うわビックリした! イキナリ何!?」
「なんで起きちゃったんだろうなぁ~、もう!!」
「マジなんなの?! 今日のお兄ちゃんホントキモい!!」
『バカ』でも『犬』でも『う〇こ』でもなんでもいい……書いて貰えたらそれはもう素敵な記念だ。
書いて貰えば良かった。悔しい。
(まあうん……『・』でもいっか)
それでも今日は『落書き記念日』だ。
とりあえずスマホで自撮りし、顔を洗う前に『魚拓』ならぬ『頬拓』的な感じで紙に写しとっておいた。
そんな浮かれに浮かれてド〇えもんの如くちょっと浮いてんじゃないのかなって感じの僕だが、今日のことは反省しなきゃいけないことばかり。
心配してくれたのはとても嬉しいが……心配させたかった訳じゃない。
それは先輩だけでなく、皆に対してもそうだ。
日常的に皆には力を貸してもらっていて、そのことにはとても感謝している。
だけど、
先輩とは、強引に距離を縮めるようなことをしたくないんだ。
そのことを、ちゃんと伝えるべきだった。
「──でも先輩を呼んでくれてありがとうございます!! やっぱり心配されたの嬉しかったしぃ~!!」
僕は自室の床を転がって嬉しさを全身で噛み締めたあとで、皆にその旨とお礼をLINEで送った。落書き記念の自撮りと共に。
それから。
皆は先輩とのことやゲームの進捗を聞いたり、時にからかったり焚き付けたりされることはあっても、具体的にどうこうするとか言うことはなくなった。
倉田さん達からは何故かコスプレ売り子の依頼を受けた。「できれば先輩と一緒に」と言われたが、先輩は渋っている。
僕自身は全然構わないし……
正直、先輩のバルバロッサ大佐……見たい。めっちゃ見たい。
「撮った写真をラミネート加工してブロマイド風にしてあげるから説得して欲しい」と頼まれ、それには心が揺らいだものの、先輩の嫌がることはしたくないのでお断りした。
先輩の返事待ちのようだ。
先輩とは相変わらずだが、ゲームの話以外も少しずつするようになっていた。
先輩は推薦で早々に進路が決まったらしく、補講の代わりに僕の勉強を見てくれるようになった。
ドキドキはするが、先輩に教わっているだけに恥ずかしい成績は取れないので真剣だ。
……あと、普通に厳しい。
先輩が大佐に見える。むしろそっくりだ。
違うことと言ったらそれくらいだが……
前より笑ってくれるようになった気がする。
だからか前よりも……更にドキドキする。
そんな日々が続く中──
「………………ッッ!!!!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
【ヒカル】
(もしかして……今がチャンス?
思い切って告白しちゃおうかな……)
→告白する!
やっぱりやめておこう……
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
相変わらず遅々として進まなかったバルバロッサ大佐攻略だが……地道に地道に他の人のスキルを上げつつイベントをこなしていった結果……
ついに……ついにこの時が──!!!!