③攻略アドバイス【輝視点】
僕の生活は、先輩に告白してから変化を遂げた。
今までも充実した毎日は送っていたけれど、その比じゃない。言うなれば、超充実している。
朝は4:30に起きて支度し、ジョギングに行く。朝は苦手な僕だったし、体力作りだとはいえ……先輩とのジョギング。コレは完全にご褒美だ。
その際思い切って『先輩と一緒に下校したい』と言ったら「放課後は進学希望者の為の補講がある」とのこと。
待つのなど全く問題ない。
なので放課後は補講の終わりを待ってから、先輩と一緒に下校。その間は、図書室で勉強することにした。
待つのは先輩にとって想定内だったようで、補講終わりの先輩に声を掛けると微妙に呆れられたが……
嫌がったりされなくて、正直ホッとした。
そして家ではゲームである。
最初は深夜までゲームに耽る僕を注意していた母も、朝早くジョギングに行き、放課後は残って勉強していることがわかると「身体には気を付けなさい」と言うくらいになった。
先輩の言う通りだ。
流石、先輩!好き!
順風満帆……だがしかし、ひとつだけどうにも上手くいかないことがある。
「──バルバロッサ大佐……いつになったら塩対応じゃなくなるの? !」
そう、肝心要のゲームである。
バルバロッサ大佐の好感度だけ、何故かサッパリ上がらないのだ。
各種デートイベントには
『お前にそんなことをしている余裕はない筈だ……』
と尽く断られ、好感度が足らないのかと思い、上げようとひたすらミニゲームをやるも……上がらず。
他の人より倍以上の時間を掛けてアプローチしているのに!!
「キィィ~!! なんなのよ!? そんなにワタシに魅力がないというの!? こんなにもひたむき一途にアナタだけを見ていると言うのにッ!!」
……女の子の気持ちが少しだけわかった気がする、今日この頃。
そんな夜が明けた、ある朝のジョギング中。
「──どうした?」
唐突に、先輩からの素っ気ない質問。
だがそこには僕への心配が感じられる。
悩んでいるのが顔に出ていたようだ。
バルバロッサ大佐に憧れているというだけあり、先輩とバルバロッサ大佐は似ている。
クールでカッコイイ。
人一倍思い遣りがあるが、それを表だって出すことは無い。
そんなところが素敵だ。好き。
「バルバロッサ大佐の好感度が……いやっ! でもあの自分で頑張ってクリアしたいんで!!」
そう、それだけに自分で頑張ってバルバロッサ大佐とも仲良くなりたい。
攻略本に頼らないのはその為だ。
そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、先輩は言った。
「ふむ……心意気は買うが……攻略のヒントというか、アドバイスくらいはセーフじゃないか?」
「!!」
そ う か も 。
恋愛相談とか、話に聞くもんな!
(※これはゲームの相談です。)
……流石先輩!
優しい!!
──好きぃいぃぃぃ!!!
ダダ漏れになる『好き』をダッシュで誤魔化し、50メートル程で先輩のところに戻り、アドバイスを賜ることにした。
「じゃぁその……ちょっとだけ……アドバイスを……ッ」
「お……おお。 そうだな……」
今の『ヒカル(※ヒロイン名に自分の名前をつける派)』の状態を先輩は大体把握している。
常にゲームの話をしているようなモノだとはいえ、それがなんだか嬉しい。
「バルバロッサ大佐の性格を考えろ」
「…………──」
──バルバロッサ大佐の性格を考えろ?!
(…………いや、う~ん?)
先輩のゲームらしからぬアドバイスに驚いたが、
恋愛ならば相手の気持ちを考えるのは至極当然である。
確かに僕はバルバロッサ大佐の気持ちなど微塵も考えておらず、自分の気持ちばかりを押し付けていた。
大佐は常に塩対応だからわからなかったが、迷惑をしていたのかもしれない。
乙女ゲーム、奥が深い。
「以上だ」
「イエッサー!!」
僕は、バルバロッサ大佐と先輩を重ね、思わず敬礼した。
……先輩も、本当は迷惑だったりしないよね?