表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔界冒険譚  作者: ASOBIVA
12/26

11話 マギアの原理

元魔王と執事、彼らにはすでに2度助けられた。


1度目は、路地裏で行き倒れた僕を

わざわざ自分の屋敷に連れ帰ってくれた。


ふかふかのベッドに僕を寝かせ、

体調が戻るまで休めと彼らは促した。


転生者と分かった後も、温かな食事を出してくれた。


厳しい言葉ではあったけれど、

僕に現実を正しく理解させ、

生きる道を示してくれた。


2度目は、現在進行形だ。


プランター退治の結果、

魔素欠で倒れたのは僕のヘマだ。


放っておいても問題なかったのに、

きちんと面倒を見て忠告をくれる。


理由はよくわからない。


でも確かに、彼らは僕に生きるための様々な力を

貸してくれている。


それなら、彼らの力をきちんと利用させてもらおうと思った。


僕はもっと強くなる。


そうすれば、彼らに恩を返せるときもくるだろう。


教えて下さい!と頭を下げた僕を見て、執事は目を細めた。


少し考える素振りを見せてから、彼女は口を開いた。


「なるほど、聞く限り初歩の初歩しか知らないみたいだな」


「まあ、いい。解説していくとするか」


執事は、庭に落ちていた木の枝を手に取った。


文字や絵を示しながら、話を進めていくらしい。


「マギアは魔素を源とした魔力や才能だ」


「大別すると、属性型か特殊型かに分かれる」


執事が言うには、属性型というのは

火・水・風・地・雷の5属性からなるマギアを指すようだ。


魔素の扱いの上手い下手は関係してくるが、

使えない奴はほとんどいないのがこのタイプ。


一方特殊型は先天的な力で、

魔人ならともかく魔物は使えない場合も多いという。


効果は人によって様々な効果だが、

例えば肉体強化や回復術などがこのタイプに属する。


僕はヨゼのマギアを思い出した。


拷問が終わるたびに、僕を癒やした治癒の力。


あれは間違いなく特殊型だろう。


どちらの型だとしても、

マギアはゼロから何かを生み出す力ではない。


きちんとした原理があるからこそ、使える才能だ。


「マギアの原理は、先程の魔素欠とも関係してくる。

しっかり話に付いてこいよ?」


執事の言葉に、僕は大きく頷いた。


「属性型と特殊型は少し仕組みが違うんだが、

今回は属性型の原理だけ説明する」


特殊型については、また理解が

しやすい時期を見計らって教えてくれるという。


一気に知識を詰め込んでも

処理しきれない気がしていた


僕としては、配慮がありがたかった。


魔物や魔人の体内には魔素供給器官

と言われる部位があるのだという。


力の源である魔素を溜め込み、

必要な属性の力へと変化させ、マギアとして使う。


魔素を変化させ使いこなすためには、

いくつかの制御が必要だ。


特に重要なのが、出力をどうコントロールするか。


例えば、マッチ棒1本に火を付けるのと大木を

燃やすのとでは必要な火力が違う。


魔素が1しか必要ない場面なのに、

100を注ぎ込んだらどうなるか。


99の魔素は無駄に垂れ流しただけで、

何の力にも変換されないまま消えていく。


「今のお前がまさに魔素だだ漏れ状態。

マギアを使ってもないのに魔素を消耗している」


「だからプランターはお前の魔素を吸い取り放題。

結果、あっけなく魔素欠で気絶した」


出力の制御ができてさえいれば、

プランターに噛みつかれたところで対抗できる。


20匹程度退治したくらいで魔素欠になっていたら、

危なくて仕方ないと彼女は言った


なるほど、と僕は目を見開いた。


面白がってたっていうのも理由としてはゼロではないだろう。


でもきっと、僕が魔素の出力を制御できていないことを

見抜いたから、草むしりをやらせたのだろう。


(ありがたいことだよな)


心のなかで感謝の言葉をつぶやく。


おかげで僕は自分の力について、

今こうして執事から学べているのだから。


「出力が制御できたら、次は思い通りに魔素を動かす『操作』だな」


地面に絵を描いていた木の棒を、執事がくるりとまわす。


「実践すれば分かりやすいだろう。こうして力を動かしてやって…」


僕は、木の棒を取り巻く力の動きをひたすら注視していた。


引き絞られた力が、棒の周りで渦を描いている。


「最後に望む属性へと『変化』させてマギアとして使う」


力の渦が一瞬で炎に変わり、木の棒を燃やした。


きちんと制御されているから、彼女が手に火傷を負うこともない。


おそらく基礎のマギアだと執事は言うだろう。


でも基礎だからこそ、彼女がどれだけ訓練したかが

透けて見えるような気がした。


『制御』・『操作』・『変化』


これを、マギアを使う上で「基礎の三段階」というらしい。


「なかでも、制御は地味に見えて最も重要なポイントになる。

お前にとっても制御が最優先だ。

まず魔素のコントロールを体に叩き込め!」


執事の話を聴いていたら、段々とワクワクしてきた。


「はい!!」


僕は大きく声を張り上げて応える。


「いい返事だ、よし!やれ!!」


ノリはすっかり体育会系だ。


が、しかし具体的な方法までノリで流すわけにはいかない。


「あ、あの…」


伝えるべきことは全部教えた!と

ばかりに執事は自信満々に胸を張っている。


教え子としては、質問が切り出しにくいのだが、

僕としては他にどうしようもない。


「やり方…はないんですか…?」


執事の顔を伺いながら、僕は尋ねた。


やれ!ですむなら、

世の中に先生やらコーチなんて職業はいらないのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ