第3話 地下牢の面会
第3話 地下牢の面会
さかのぼること3か月前、ヤマモトは魔王軍の弁護人となることを引き受けた後、ポウナレン城地下の牢獄へ向かった。
ヤマモトが王国兵に案内され、牢獄の扉を開け中に入る。
ヤマモトが鉄格子の前に立つと、牢屋の中の火炎のハーデ、翼竜サキス、大海のクニックの入った瓶、金剛のゴンズ、邪教祖ゴージュの5人は重傷で、鎖を何重にも巻かれていた。
「今回、あなた達の弁護人を務めさせていただきます。弁護士のヤマモトです。」
火炎のハーデが口を開く。
「形だけとはいえ、人間が魔族の弁護人とは、君には迷惑をかけることになってしまったな」
ヤマモトはハーデの口から自分を気遣う言葉が出たことに驚く。
「我々はすでに処刑されることを受け入れている。我々5名の命で、他の魔族の者たちが平穏に暮らせるのなら、安いものだ」
他の魔王軍幹部も、このハーデの言葉に同意しているようだった。
ヤマモトは下を向き、唇を噛みしめてから言う。
「どうやらそれは叶わないようです。ガボナ王とサウサル法皇は貴方たちを処刑した後、魔族を全滅させるつもりです。」
驚く、魔王幹部たち。
「そんなバカな、何故そんなことを・・・・・・。
魔王様亡き後の我々魔族など、人間に傷一つつけることも出来ないのに・・・・・・。それほどまでに魔族に対する人間の憎しみは大きいのか・・・・・・。」
ハーデはうなだれている。
「憎しみもありますが、それ以外の理由もあります。」
そう言いながらヤマモトは革の鞄から一冊の本を取りだす。
「これは神の教団の教典です。最終章は、こう締めくくられています」
ヤマモトは本を開き朗読する。
『魔王と勇者がこの世を去った後、三か月ののち、神の裁きが下される。
その裁きの後、妖精族ともう一つの種族は、神が造りし、それぞれの“楽園”へと旅立つことになる。』
本を閉じるヤマモト。
「神の教団の信者である人間達の目的は“楽園”へと到達することです。
この教典に記された“楽園”へと旅立つ妖精以外の『もう一つの種族』を人間に決定づける。
そのために神の裁きをもって魔族をこの世から殲滅する。それが三か月後に開かれる裁判の目的です」
「今回の裁判で下されるのが神の裁きってことね。卑劣なアイツが思いつきそうなこと」
邪教祖ゴージュの溜息混じりのつぶやきの後、ハーデが涙を流しながら言う。
「戦争を行った我ら魔王軍には罪はあれど、民間の魔族には罪はない。神は魔族を見放したのか・・・・・」
「弁護士として全力を尽くします。」
そう言ったヤマモトの眼は強い力を宿していた。