第一話
目覚めは、唐突だった。
げしっ
「うぇっぐ!」
「いっだ!!」
目がちかちかする。何だこれ。
体を起してすぐ目に入った赤色に、思い出す。
……「赤桐」さん、だ。
彼女はにこりと笑って、俺におはようといった。
「お……おはようございます……えっと、ここは……」
辺りを見渡せば、隣には腹を抱えて呻く翠。うわ痛そ……いや俺も痛かったけど。心なしか顔が多くなっている。可哀想に……ちらりと赤桐さんの足元を見れば、ローファーをはいている。……もしかして高校生? いや、まあそれは今いいか。
それにしても。どうやら床に転がされていたらしい。フローリングというには荒い、まるでログハウスの様な床だ。どこからか怒鳴り声が聞こえてきて、おもわずビビる。壁も、薄いのだろうか。まさに、簡素な部屋。家賃どれくらいなんだろう。特集とかで出てきそうだ。きっとすごい安いんだろうな。狭いし、窓もないし。……相場とか分かんないけど。
「はいはい、起きてくださいな」
「わああああ待って赤桐さん! ココ! ここどこ?」
もう一度翠に蹴りが飛びそうになり、慌てて聞く。何だこの人翠に恨みでもあんの!? とても痛そう!
心なしか涙目の翠を支えながら、唯一のベッドに足を組んで座った赤桐さんを見上げる。
いやほんと、とても美人なんですけどね……。
「いったじゃん。宮辺ちゃんの世界」
「……ここが?」
にこりとやけに綺麗に笑って見せて、頷く。
「外に出てみようか、ただし」
「……ただし?」
人差し指を一本立てて、首をかしげる。まるで一枚の絵画の様な一瞬、映画の様なワンシーンだ。意図してやってるなら、すごい人だ。……って、それはいいか。
押し付けるように渡された紙袋を受け取ると、彼女は「五分」とだけ言うと部屋から出ていった。
「その服、着てからね」
ぱたん
薄い板が何かと当たる音がした。ちらりと横を見てみれば、嫌そうな顔をした翠がこっちを見ていた。
「あの人嫌いだ」
「……向こうもそうだと思う」
「……」
ま、まあとりあえずは着替えだ着替え。
翠と二人頭を突き合わせて紙袋の中を覗きこめば、不思議な色合わせの布が入っていた。なんというか、やっぱり手触りは悪そうだ。逆さにして床に出してみれば、ばさりと重たげな音がした。
「……何だこれ、着物?」
それを広げた翠が、怪訝な顔をする。
はっぴのような、着物のような。それを……どうすりゃいいんだ。羽織ればいいのか? 布の塊を漁ってみれば、黒いズボンが出てきた。下は、これでいいのか? これ着たらむしろ目立ちそう何すけど。
「ま、まあ取り敢えずだな」
着替えることには、始まらないよなぁ……。
ちらっと不機嫌顔の翠を見て、どうなるやらと心の奥底でため息をついた。




