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第一話

説明分かりづらくてごめんなさい。

後書きのほうに軽い用語説明があるので、よろしければどうぞ。

 なにも言うことができないくらい、荒れ果てた土地だった。


 重たい空は遠く、太陽は攻撃的なまでに乾いた地面を照らしつけている。風もなく人もなく影もない。

 ボディのつぶれた車にハンドルのひしゃげた自転車はごみくずのようにあちらこちらで散らばっていた。



 互いの足音しか聞こえない。あたりはしんと静まり返っていた。



「なあ……なんか、ぶ、不気味じゃねえ?」

 岬が顔をひきつらせながら紫を見た。紫はなにも言わず、辺りを見回しては何かを考え込んでいるようだった。

「不気味云々は置いといて、確かに妙ではあるな」

 黙々と歩いていた翠は、きゅっと眉を寄せた。


「詳しい時間はわからないが、俺達は二時間以上は移動したはずだ。それなのに疲労を感じない。それにこの惨状……異臭がしても可笑しくないと言うのに、息苦しくもない。……妙だな」

 長い前髪からわずかに覗いた目が細められた。


「や……やめろよ、なんか怖くなってきただろ!」

「最初にいったのは岬だろ?」

 たしかにそうだけど、と嫌そうな顔をしながら身体を震わせた岬に翠が笑った。


「……ねえ」

 和やかな二人に、紫が声をかけた。

 ひとつの青い瞳が二人に向けられた。



「な……なんだよ?」

 びくびくと怯えながら尋ねた岬の横で、翠が首をかしげた。


「二人とも、ちょっと息止めててくれないかな?」





「……死ねと!?」

 はっとした岬が紫に叫ぶ。翠も何も言わずに紫を見てた。

「死ねなんて言って無いじゃん」

 悪びれもせず言った紫に、岬はため息をついた。

「同じようなもんだろ……」

「そう?」

 うなだれた岬の肩に、翠の手がのった。


「……妙だな、苦しくない」

「やってたんかいいいいい!!」




 * * *



「つまり、何……? 俺達は今、生きてないってこと?」


 がれきの上に座った三人は、輪になって話し込んでいた。

 日は落ちない。相も変わらず、太陽はぎらぎらと地面を照らしつけていた。

 もはや、どれだけの時間をそこで過ごしていたか考えることすら億劫だ。

 岬は小さくため息をついた。


「そうとは限らないよ。世の中、幽体離脱なんてのもあるし。ただ、僕たちは現在身体と魂がバラバラになってるってこと」

「……それ、大丈夫なのか?」


 恐る恐る聞いた翠に、紫は苦虫を噛み潰したように顔を歪めた。


「大丈夫とは言い切れない。身体と魂はさあ、二つだけじゃ上手くくっつかないもんなの。魂を身体に定着させるには繋ぎみたいなものが必要なわけ。それを作るのに必要なのを体力と命力っていうのね」

「……HPとMP的なやつ?」

 首をかしげた岬と同じように、紫も首をかしげてなにそれと言った。

 ああそうかゲームも機械だから……と生温かな目を向けられ軽く咳ばらしした紫は、取り敢えず頷いた。


「肝心なつなぎ……体力を命力を上手く練り合わせてできたのが生命力っていう。生命力は、身体と魂を繋げるのにすごく大切なものなわけです。OK?」


「……わかるか?」

「さっぱりわからん」


 こそこそ言った二人に、紫はそこら辺にあった瓦礫の破片を投げつけた。

 するとそれは二人をすり抜け、地面に墜落した。


「ええええええぇぇっ何すんの!? っていうかすり抜けた! 俺らマジで幽霊状態ですか!?」


「はい、第二ラウンドいきまーす」

 再び手にしたのは同じような大きさの破片。今度は岬の足にこつんと当たった。


「ど……どーなってんの?」

 困惑した様な岬の声に、翠が首をかしげた。


「紫、お前……二回目の破片に何かやったか?」

 言った翠に、紫はにっこりと笑う。


「翠さん御名答。僕たちの言う命力っつうのを手に集めて、そこらの物体とつなげる。そうすると僕の手と物体は命力によって吸着して投げれたってわけ。……まあ、これは霊体での状態に限るけどね。つまり、物と魂は接触できない。けど、命力はそれを可能にできるってことだよ」

「……つまり、シールの糊みたいな役割ってこと?」

「うん、そういうこと。幼稚園生でもわかる様な例えをありがとうね岬」

「一言余計だよ!」


「話は戻すけど」

 小さくため息をついた紫は、鉛色の空を見上げた。


「体力って言うのは身体がもともと持つエネルギー。命力って言うのは魂がもともと持つエネルギー。二つを合わせた生命力は、どちらかが有り余っているだけじゃあ成り立たない。どちらかだけじゃあ力が弱い。二つが完全な状態になくちゃ駄目ってこと」

「でもさあ、ただ俺達が体と離れてるだけだろ? なんもしてないじゃん。平気じゃねえの?」

 岬の言葉に、紫が小さくため息をついた。

「体力って言うのは、魂と一緒になくちゃ少しずつ少しずつ減っていくものなのだ。だから、このままじゃ戻れなくなる可能性は高いのである」


「……やばいじゃん」

 青ざめた顔で紫を見た岬に、ゆっくりうなずく。

「やばいっすよ。このまま突破口がなけりゃ、僕たち確実に浮遊霊ルート直行っすよ」

「やばいじゃん!!! と、取り敢えずまたなんか探すか!?」

「なにをやねーん」

 漸く慌てだした岬に、紫がけらけらと笑った。

 その様子に深くため息をついた翠が辺りを見回すと、一人の男がこちらを見つめていた。



「いらっしゃい」

 男は、疲れた様な目でこちらを見つめていた。

 声は低かった。魅力的な声だが、それよりも死んだような目がやけに印象的だった。



「終焉屋へようこそ。ここは、滅ぼされた世界……終焉を迎え、朽ちることすら叶わない世界」

 抑揚のない声に、翠と岬は思わず息を呑んだ。



*用語説明*

・体力

 身体(器)が持つエネルギー。

 魂と身体が離れていると徐々にエネルギーは減っていく。

・命力

 魂(本体)が持つエネルギー。

 物質と霊体を繋ぐことができるが、効力は低い。 

・生命力

 体力と命力が合わさってできるエネルギー。

 魂と身体をつなぐことができる。ただし、体力と命力のバランスが悪ければ上手くいかない。

 生物は無意識に作り出している。

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