第四話
あけましておめでとうございます。
大変長らくお待たせしました!
亀更新もしわけありません……しかし、必ず完結までいきたいのでもうしばらくお付き合いお願いします。
――翌朝。
門限をとうに過ぎているにもかかわらず、三人は隠れることもせず堂々と部屋へ戻った。
運が良かったのか誰にも見つからず、部屋に置いてあった救急箱で紫の足を手当てするとすぐに就寝した。
案外健康的なのか、それともただ疲れていたのか。恐らく後者だろう、三人ともすぐに眠りについた。
そして、朝。
「はあい、やってきました紫さんによる異世界講座! ゲストはなななんと! ヘタレ代表進藤岬と無愛想代表東也翠だあーッ」
いえーい、ぱちぱち。
全て口頭で進めた暴走気味の紫を、二人は疲れたような目で見つめた。
「お前、なんでそんな元気なんだよ……」
すぐに眠りについたとはいうものの、ベッドに入った時間は午前三時。起きた時間は午前七時。
通常時はその二倍近く寝ている翠と岬にとって、四時間の睡眠はキツかった。
「いや、なんつーか俺らいつも寝るの早いじゃん。けど睡眠時間四時間だったじゃん。もうなんかはしゃげないっつうかさ」
「おいおいお前らなんて健康的な毎日送ってるの! 僕なんて三日寝なくても元気だよ」
「おおう、すげえドヤ顔」
「その割りにはいつも俺らと同じ時間にベッドに入ってるけどな」
紫はちらりと岬を見て、ゆっくり顔を背けた。
「はあい、やってきました紫さんによる異世界講座! ゲストはなななんと! ヘタレ代表進藤岬と無愛想代表東也翠だあーッ」
「アレッ! テイク2的な……!?」
* * *
――荒れ果てた地にて。
さらに言うのならば、そこに唯一建てられている屋敷“異界屋”にて。
比奈は、居心地の悪い静寂ばかりの部屋を覗いていた。
業務用机に座った人影と、ソファに悠々と腰掛けた人影が一つずつ。長い黒髪を結いあげた華奢な麗人と、赤い髪の迫力のある美人。
そして異界屋という特殊な店の主は麗人。つまり、黒髪の麗人はアルバイトである比奈の上司だった。
しかし――いつもの余裕のある笑みは、その顔からさっぱり消え去っていた。
ただならない空気だ。
他の店員は我関せずだったが、比奈はそうもいかない。
比奈の初恋であったその上司が、あそこまで強張った顔をして美人を睨みつけているだから。
もしも上司があの美人に手を出したら――
考えただけでもぞっとする。
そんなことをしたのなら、流石の比奈もこの店を出て死んでやるに違いない。
「赤桐……一体、どういうつもりです」
しかし、いつもは妖艶にすら思えるような敬語にすら、余裕はうかがえなかった。
それどころか、上司は女に薄く笑われているではないか。
「何が?」
女の、美しい金……否、月の様な黄色い目が細められた。
しかし、どこかうっすっぺらに見えるのは何故だろうか。
比奈には、その人が無表情なように見えた。
「宮辺のことですよ」
切れ長の目が、女をとらえる。
もしかしたら、怒っているのかもしれない。
この人は普段が普段なだけに(ちゃらんぽらん的な意味で)、怒ると怖い。とばっちりなんて勘弁だ……。
比奈は恐々と壁に張り付いていた。
「何故、お前がここに? ……一体何を考えているんです」
その声は、少し震えていた。
そんな様子を見て、女はソファに倒れくつくつと笑った。
「あたし、宮辺ちゃんのこと好きだよ」
上司の、嫌味なくらい形のいい眉が上がった。
女は笑ったまま続けた。
「ガラじゃないけど、すごいなあと思ってるんだよね。だって、あたしとは全く違う。勿論、和さんとも……ね」
意地悪に笑いかけた女は、そして黙り込んだ。
「赤桐……お前、もしかして」
「あたしたち、“ALICE”のなかじゃ一人だけでしょ? あそこまで周りに翻弄されぼろぼろになってるのはさ。それなのに強がって、殻に閉じこもって……でもお人よしだから人助けしちゃったり絆されたりさ」
麗人は、口をつぐんだ。
そして、呆れたような顔で女を見た。
「だから、わざわざ宮辺をあそこへ放り込んだんですか?」
女はやはり笑った。
「だって、あのままだったら死んじゃいそうだったんだもん。そんなの勿体ないよ」
女の薄っぺらく聞こえた言葉。
しかし、最後の言葉だけにはなにか口では伝えられないほど重みがあったような気がした。




