第五話
「いやあ、面白かったな」
盛大に爆笑している紫に、にやにやと笑っている翠。そしてそんな二人の真ん中には疲れ果てて息を切らしている岬。周りから見れば、異様な光景である。
「てか、お前女子? 本当に女子? 新しいタイプだな、オイ!!!」
ニュータイプだ、と力無く叫ぶ岬に、紫はニッコリと笑って答える。
「ふふふ、オンリーですから」
「ごめん、意味わからん」
率直に答える岬に、だめだなぁと笑う紫。
「普通はキャーキャーわめいてこっちをキモチ悪い目で見てくるだけだしな」
はあ、と溜息をついていう翠に、岬は苦笑しながら同意する。
「へええ、僕、可愛い女の子は好きだよ」
「……」
いっきに無言になる二人に、紫は小さく首をかしげる。その様子に、岬が紫の頭をなでる。呆れを感じ取ったのか、紫は明らかに不機嫌そうな顔で言った。
「うっぜえんだけど」
「すんません」
敬礼ポーズをした岬に、紫はニコリと笑った。
「次やったら殴るぞ☆」
はい……と涙ながらに答える岬に、紫はふん、と笑う。
「で、何食べる? 食堂はもう直そこだぞー」
ほら、と指差す翠の先には、食堂。
学園全員がそこで食事を済ませる場所であるから、異常に広い。三人が歩くごとにきゃあきゃあと、わあわあと騒ぐ学生たち。三人からしたら、不快でしかない。
「ああ、岬はバッタでも食べる?」
にっこりと、わざとらしく聞かれた岬は、必死に首を横にふった。ただの不快を紛らわせる八つ当たりだろうが、本人にとっちゃひどくいい迷惑だ。
まだイナゴ、というのならば分るけれど―といっても岬はイナゴといわれても首を振っていただろう―敢えて、『バッタ』ときた。
「おお、そんなに食べたいのか。よし、じゃあ俺達が頼んでくるよ。行くぞ」
「あいあいさー!」
ドSコンビ再び。ニヤニヤニタニタ笑っている二人へ必死に謝りながら止める岬。しかし、二人が歩みを止めない為か岬は二人に引きずられている状況である。
「まーまーそんな嬉しがらないでよ。ちゃんと持ってきてあげるって!」
くすくすとわらっている紫に、違うわああ!!! と叫ぶ岬。
「ああ、早く持ってきて欲しいんだな。分った、分った」
「父さんと母さんが持ってきてあげるから、そこで座って待ってなよ」
にっこりとわらう紫に翠。
「あ、因みに僕が父さんね」
付け足しをした紫に、俺は母親か、とまんざらでもなさそうに呟く翠。
「何で嬉しそうなわけ!? ってか、何で二人ともそんなSなわけ!?」
叫ぶ岬に、二人はにこにこと笑っているだけ。
「おーいお前等。静かにするってことが出来ないのかー?」
ダルそうに言ったのはカイト。遠くから面倒臭げに歩いている。
「ああ、先生。今日もだるそうですね」
「おーい、今日会ったばっかりだぞー。お前、俺の昨日を知ってんのかー」
カイトの言葉にさあ、としらばっくれる紫。しかし、他愛も無い会話をしている中でも足を止めようともしないあたりたちが悪い。
「ああ、因みに食堂にバッタは無いぞ」
「え、マジでか」
カイトの言葉に、翠が残念そうに言った。それと反対に、手を離して万歳ポーズをする岬。
「無かったら、狩ればいいじゃん?」
「何処の狩人さんんん!?」
笑って発せられた紫の言葉に叫ぶ岬。
「ばーか、駄目だ。夜間の外出は禁止ですぅー」
「あはは、今は昼ですよー」
常識的なカイトに、最もな常識を言う紫。
「それでもダメですぅー今日はのんびり“リーダー”でも決めてるんだな」
ふう、と溜息をついて言うカイトに、思い出したように同時に口を開いたドSコンビ。
「「リーダーなら岬って決まってるんで」」
息もピッタリのふたりに、カイトは苦笑し、岬は叫ぶ。
「おいいいい!? なんで決まってんの!? なんで決まっちゃってんのォ!?」
「さーて、何食べる? 母さん」
「そうだな……和食が良い。父さんは?」
くるりと向きを変えて話を変える二人に、岬がおいいいと叫ぶ。カイトは後でケラケラとわらう。
「父さんは……そうだな、岬の丸焼きってことで」
「やめて? 本気で怖いから、マジで!!!」
冗談だよ、と笑う二人はさっさと食事を頼みに歩いていった。
「あの三人……いい漫才トリオになりそうだな」
ボソリと呟いたカイトの声は、誰にも聞えない。
(光と、闇と、そして“特全”か……)
(なかなか、面白いグループだな)




