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のどか(?)な日常

今回は人間ウォッチングで思わぬハプニング発生! もとい、発見!

山口君と仲良くなっちゃいます。

「……準備は良いか?」

 神妙な面持ちで語った岬に、紫と翠は頷いた。今回も紫の気まぐれに悪乗りした翠。そして何故かツッコミスキルを持て余す岬まで悪乗り。三人はその日、“人間ウォッチング”をすることになったのだ。


「れっつうぉっちんぐー!」

 最低最悪の発音でそういった彼女に、二人は果たして本当に頭がいいのかとひそかに考えた。




   ―――――――――


「―――と、いうわけで我々は監さ……観察しに来たわけですが……」

 ねえ、と溜息とともに言った紫に、二人は頷いた。流石に高一。三人そろって隠れる場所など見つからなかった。しょうがないと教室を離れ、三人は屋上へと上っていった。

(監察―視察、監督   観察―注意深く見守る)



「「「……」」」

 小さく開いていたドアに手を置こうとした紫は、それをはなした。無言のままその隙間から外を覗いている彼女に、二人は外をみて唖然とした。

「……え、なに、あの空気」

 ぼそぼそといった岬に、紫がはは、と乾いた笑みを出していった。

「さあ」

「おーい、得意の笑顔がくずれてんぞー」

 明らかに引きつった笑みに、珍しく翠が突っ込んだ。


(っていうかあれ)

(……。修平がへこんでるな)

(そして隣で明楽がアタフタしてる)

(さらに近くで静かに読書をしている旅院がいる……と)




   ―――――――――


「っぐす……」

 珍しく泣いている修平―――平凡を絵に書いたような少年、山口修平に明楽は慌てていた。

 ことの始まりは、昨日の事だった気がする。確か、憧れていた先輩に何か言われていて、呆然としたような修平はその憧れていたらしい先輩に小突かれていた。確か―――、そう、確かそれからだった。昨日は呆然としていて、今日は朝からずっとこの調子。仕方なくサボることにしようとしたが、グループ行動は絶対。しょうがない、ということでサボった三人組。


「ぐす……っ」


―――如何しよう如何しよう如何しよう如何しよう……!?

 慌てるも、如何すればいいのか改善策が見つからない。



「あ、あの……修平、サン……」

 あー、うー、と言葉を必死につなごうとした明楽を下から見上げた修平。彼は尚更焦り、もう一度口を開いた。



「い、いい天気ですね……」

大きく目をそらして言った明楽に、旅院が口を出した。


「雨降りそうだけどね」






   ―――――――――



「空気ィイイ、空気ィイイ!!! 空気よんであげてェエエェェエ!!!」

 小さく叫ぶ岬に、後の二人は大きく頷いた。

「天候が修平を表してるよ……」

「いや、修平の方はもう雨降ってるぞ」

 そんな二人を一目して、岬はもう一度前方を見た。


「……状況悪化?」

「してるな」

「してるね」

 あとからしみじみと言った二人に、岬は複雑な表情でもう一度覗いた。




   ―――――――――



「ほ、ほら、人生つらいことばかりじゃないし……!!」

 めげない。明楽、めげない。必死にかける言葉を考え、つなぐ。





「そうだね。……ま、世の中そんな甘くないけど」




「ぐす……っ」



   ―――――――――


「キッツゥゥウウウゥウウ!!!」

「……あれだね、言葉は時としてナイフとなるよね」

「全くだな……」

 怖、と呟く三人の耳に、カンカン、という階段を上る音が聞こえた。


「やべ、どうしよ」

 慌てた岬に、紫が何も声を出さずに指差した。その先には、大きな掃除用具入れ。


「……三人はきつくね?」

「二人が中、一人がかげ」

 よろしく、といって一人陰に隠れた紫。




(え、この中に俺等二人?)

(ムサ……)


(オイィイイイ!! 俺だってやだから!! 言わないで、あけたら二人いたってちょっとあれだから!!)

(……BL)

(紫さんんん!? おま、それは知ってるの!?)


(……僕の知り合いにそーゆーのが好きな子がいるのさ)





   ―――――――――



 がちゃ、とトビラを開けて彼らは目を見開いた。

 体育座りで半泣きの少年、その隣であたふたとうろたえる少年、クールに読書をする少年。今入ってきた彼らは、其処にいた三人―正確には六人なのだが―より一つ上の学年だった。S、と誇り高く輝くクラスの名札をつけている為、彼らは二年S組なのだろう。


「あ……」

 体育座りで泣いていた少年―修平―が顔を上げ、呟いた。返事をするかのようにえ、と言ったのは二年の一人だった。

「山口?」


「……」

 せんぱい、としたたらずな口調で呟いて、彼はふたたび小さく泣き出した。





   ―――――――――


「あの人が原因っぽいね」

 小さく言った紫は、音を立てないように注意して用具入れを開けた。

「ああ、むさかった……」

「ああ、苦しかった……」

 文句を言った二人に、紫がニコリと笑っていった。


「なに? 少女漫画みたいな展開が良かった? ごめんね、僕少女漫画より少年漫画派だから!」

「少年漫画にもそーゆーのあるけど」



「しらねえよ、僕が言ってんだから無いことにしとけ」




((理不尽―――!!! ってかなにそのジャイアニズム!!!))




(―――それにしても、ねぇ)

  (調子に乗ってくれちゃってさ、あのお兄さん方……)






   ―――――――――



「おまえ、修平だよな」

 首をかしげた憧れの先輩に、修平は何も答えなかった。



―――いや、こたえられなかった。





“うざいよな”



 そんな声ばかりが頭の中を駆け巡る。



―――憧れだった。ずっと憧れて、頑張ってこの高校に入った。


 けれど、そういったのだ、彼は。


 立った一言そう言って、本人の横を過ぎ去って。そして今日、何も無かったように笑いかける。




―――苦しい、苦しい。

 どうしてなのかわからなかった。ただ、その先輩は初めて自分を誉めてくれたから。嬉しくて、嬉しくて。その背中を追いつづけていた。








「―――ねえ、そこの六人」





(―――なんか、放っておけない、って思った)


(ああ……僕、最近なんかだんだんとおかしくなってるよ)



(馬鹿らしい、って思ってるのに)

次回に続きます。

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