閑話・きんとみどり
「……」
しんとした部屋の中で、彼は漆黒の髪を揺らして立っていた。何処からか吹いてくる風は彼の髪を揺らして、その奥の深緑の瞳をあらわにさせる。
彼は鏡に映った自分の姿を見下すかのように瞳にうつした。
―――憂鬱だ。
好きでこんな瞳になったのではない―――そんな弱音は己のプライドが許さなかった。といっても、もとよりそんなことは思っていないのだが。
けれど彼にとって己のその“異端”な瞳が、苦痛の象徴だったのだ。
―――不気味だ、出来そこないだと奴等は言う。
母、父、兄、全員がそう言って彼を罵り、そして嘲笑う。
年上の兄と彼を比べる周りは彼にとって、どうでもいい存在だけれど、拭い取れない者だった。
もとより天才肌の兄は何でも彼より出来て。努力肌の彼は、更なる努力を求めて学年1をとっていた。
―何故、あの子よりも出来ないの。
―なんだ、その反抗的な気持ちのわるい目は。
父は生まれつきの目を嫌う。母は兄よりも上を求めてくる。
けれど、彼より幾分年上の兄と同等の頭脳を手に入れることは困難だった。
血のにじむような努力、それでも勝てなくて。
どんなに努力をしても、惨めだ、キモチワルイ、そんな蔑む言葉しか、彼らの口から聞えなかった。
―――兄は、もとより“突然変異”である彼の目も、全てが気に入らなかった。
かれは、生まれた時からずっとその“環境”から孤立していたのだ。
――――――――――――
彼の小学校は、徒歩で数分程度の場所だった。
彼は彼の髪と同じような漆黒のランドセルを背負う。そして、誰もいない家から何も言わずに歩き出した。
「なあ」
―――ふと、声がした。
男子にしては高い、明るい声。彼は憂鬱しげに振り返り―――そして、目を見開いた。
「お前、此処の家だよな? 俺、進藤岬! 隣に越してきたんだ」
ふわりと笑ったのは、
“金”の髪を持つ少年だった―――。
(夏なのに何故長袖をしているのか。そして、何故「キズだらけ」なのか)
(そのときの俺には、全く興味なんて無かった)
―――ただ。
(ただ、日本人のようなのに金髪なのが、気になっただけ)
Two people have known neither becoming the best friend nor it knows a pain each other back yet.
(後に二人は親友となり、そして互いの痛みを知るのはまだ知らない)
Two people meet the back, and a noble girl also still : now.
(後に二人が出会う、気高き少女のことも今はまだ)
翠と岬の初対面。
「キズだらけ」の岬と、「憂鬱」な翠。
二人の負った傷や感情はいかなるものか。
それは、後々明かされていくことでしょう!
―――勿論、“天才”な兄上様も、“春日ちゃん”も。




