眼鏡とヅラを被れば基本誰だかわからない
「そ……それで、監視って……」
焦ったような岬に、固まったままの翠。
「……といっても、監視以外は何も決まってないんですけどね。監視って何すれば良いんですか?」
ふわりと微笑むアヤが憎らしいと感じた岬。
「いや、あの……自分で考えろよ」
焦ったものの、鋭い突っ込みは忘れない。天職ですから。
「冷たいですね、貴方」
「ヒイ!!? お前の目のほうが冷たいんですけど!! そして怖いんですけど!?」
口元をやや上へと上げただけのアヤに、岬が叫ぶ。
「いいですか? 監視はいつ、何処で、誰がしてくるものなんて解らないんですよ。だから、常に気を配っていなければいけません。いつ、如何して自分の命を狙われているのかも、いつ、どんな方法で自分の命を奪おうとしているかも、己では気づくことなんて出来ないんです」
一気に言い切ったアヤに、岬と翠が訝しげな顔をする。
何処か含みのある言い方は苦しみと、焦りと、悲しみと、色んな感情が入り混じっていた。
「……それで、“紫”が変装してきたのか?」
「え、ウソ!? 紫!!?」
唐突に言った翠に、岬が叫ぶ。アヤは苦笑してから、その短髪を引っ張った。
「あっはは、わかっちゃった?」
にこりと微笑んだ紫に、翠が小さく頷いた。意外に鋭いなあ、とぼやく紫は反省なんて知らない。そして口を開けて呆ける岬を二人がわらう。
「「馬鹿面」」
「っうるせえええええぇぇぇえええ!!!」
(……紫がいなくなったから言うけどさ)
(なんだ、岬)
(―――紫って、何か、俺達じゃ救えない、理解できないことを背負ってるみたいだよな)
(……ああ)
俺達のアレとは、比べ物にはならないくらいの過去。
それは、ずっと彼女を縛り付け、そして……そして、彼女を人間不信へとさせたのだろうか。
どうしようもない不安感。
激しい動悸がして、思わず手を握り締めていた。
―――いつ、狙ってくる?
警戒している証は、いつも握られた彼女の拳。
(岬。何で紫はいつも手を握ってるんだろうな)
(……今回の、なんか関係あるのかも)




