宣言していいものと宣言しちゃいけないものがある
ふああ、と大きな欠伸をしてから岬はベッドから降りた。
最近ではドSコンビよりも先に起きようと習慣をつけている彼だが、結局のところ翠よりも早く起きる紫にはかなわない。
彼はキョロキョロと自室を見回してから、首をかしげた。
いつもだったら、ラベンダー色の髪を持つ彼女が優雅に紅茶を飲みながら本を読んでいる。けれど、彼女は何処にも見当たらなかった。
トイレか、などと女子に対しては結構不躾な事を考えながらもかれは顔を洗い着替えを済ませてイスに座った。
もそもそと動く音がして、毛布が動く。
起きたらしい翠は、まだ半分しか目が開いていなかった。
「……はよ」
「おはよう、低血圧」
ふらふらとおぼつかない足取りで顔を洗いに行く翠を、岬は苦笑しつつ見送った。
途中、なにか鈍い音がしたが彼はシカトを決め込むことにした。
「なんだ、紫は如何したんだ?」
完全に目を覚ましたらしい翠が首をかしげた。さあ、と同じく首をかしげる岬。二人とも片手には魔術の本を持っている。本日は土曜日なので学校はないため、彼女は私用で出かけているのだろうか。
コンコン
やや控え目なノックに、二人が首を傾げつつも扉を開けた。
「しつれいします」
「「……え、誰?」」
短めの黒髪に銀縁めがねをかけた、私服の少女。
背格好は紫とおなじくらいだった。
「はじめまして、アヤです」
爽やかに微笑む彼女……アヤに、二人は首をかしげる。
「いや、あの……だれ?」
焦ったような岬の声に、アヤは目を向けてから淡々と答えた。
「僕はアヤです。宮部紫さんに言われてきました」
(え、いや……なんで!?)
(……。まあ座れ)
(ああ、ありがとうございます)
――――――――――――
「えー……っと、進藤岬です。こっちが東也翠」
「どうも、アヤです」
やや焦り気味の岬に、今だ微笑みを途絶えさせないアヤ。
岬の隣に座って優雅に紅茶を飲んでいる翠の目線は彼女の髪とめがね。
彼は少し躊躇したような様子を見せてから、口を開いた。
「……そのめがね、何処で買ったんだ?」
「いや、それはどうでもいいだろ」
苦笑する岬に、翠が大事なことだ、と直ちに反論をする。
「あ、特注です。知り合いにつくって貰ったんですよ」
不敵に笑った彼女に、二人は失笑した。
「……それで? 何しに来たんだ?」
首をかしげる翠に、アヤが首をかしげた。
「監視……ですかね?」
「「…………」」
(あれ、あっさりと監視宣言?)
まだまだ続きます。
まだまだ続きます。
いきなり現れた、“監視”をするアヤさん。
岬「アレ……俺の安息の地は?」
翠・アヤ「「ご愁傷様です」」




