携帯も機械オンチにはきついはず
「ねえ紫……ケータイ、欲しいと思わない?」
は? と首をかしげる紫の目の前には、志貴。
にこにこと笑っている彼女が取り出したのは、白い携帯電話。
「知ってるだろうケド、僕機械オンチだよ?」
そういえば、彼女は笑って大丈夫、という。
「簡単よ? それに、何か解らないことがあったら翠君か岬君に聞けばいいじゃない?」
にっこりと笑っていっても、紫は首を縦に振らない。
痺れを切らしたのか、持っていたケータイを紫に無理やり持たせ、志貴、退散。
「おーい、理事長ーっ?」
後で叫んでいた紫の声に、彼女は応じなかった。
―――――――――
「ってことだから、“けいたい”の使いかた教えてー」
にこりと笑って言う紫に、二人は苦笑する。
「……どうことだから?」
「随分とハショったな」
口々に言う二人に対して笑ったままの紫は白い携帯を出す。
女子高生らしくない、シンプルなモデル。
ジャラジャラとなにかをつけられていると思っていた二人は硬直。
「お前って、意外に……あれだな、うん」
「あー……、チャラいかと思ってた。凄い意外だ」
「アハハ、シメるぞゴラァ」
笑いながらも静かなる殺気? を込める紫に頬が引きつる。
冗談です、と敬語になってしまうのはご愛嬌。
「よし、父さん。俺が手取り足取り教えてやろう!」
まかせろ、といって仏頂面のまま言い放つ翠。
言葉と表情があっていないのも、いつものことである。
「お前が言うとなんか変態っぽい……」
ボソリと呟いた岬に、翠の蹴り一つ。
ありがとう、と笑っている紫は気付いていないのだろう。
―――――――――
「いいか、これをこうして……。俺の番号登録完了!」
「……あれ? もう一回やって」
「いや、だからー……」
「あれ、もう一回」
―――――――――
「……疲れた。ノイローゼになりそうだ……」
何処か目がイッてる翠を横目に、岬は紫を見た。
何とか(翠の労力を犠牲にして)携帯の機能を解り「始めた」紫。
恐る恐るその機能を試したりしている姿は可愛らしいが、わかるまでにかかった時間は恐ろしい。
そして、横で倒れている翠の使った労力も、恐ろしい。
「……翠、生きてるか?」
倒れている彼をポンポン、と軽く叩く。
なんとか、と死にそうな声が返され、岬は己の危機を感じていた。
「……やばくね? 俺、生贄になる可能性、高いんじゃ……」
やや顔を青くさせている岬。
「おお、出来た!」
必死に何かをしていた紫がふと顔を上げる。
びくびくとしながらも紫の手元を見る。
「……」
“ 地獄への道 ”
細い字で、でかでかと描かれた文字。
グロい上にホラーがかっているその映画の名。
「……あの、紫さん……?」
「ふふっ……はい、岬!」
ふわりと天使の笑み。
そしてその天使が彼に渡したのは、ひとつの映像でした。
(っぎゃあああああああ!!!)
(その映像……どうしたんだ?)
(ふふふ、つくったの)
教訓
―宮部紫 が携帯をいじっている時は気をつけろ―
紫、新たな一面です。
彼女、実は機械オンチ。
理由は機械に触れることがなかったこと、そして人工のものにあまり触れたくないことです。
……ややネタバレですけれど。
……まあ、結局はその知識を自分のものにしてしまうのが彼女です。




