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第四話



―――カッとその薄暗い倉庫が光って。

眩いほどの、目が痛くなるほどの、強い光が通って。

其処には、真っ赤な少年の人形が立っていた。

短めの黒髪に包帯を巻かれた両目に微笑を浮かべる口、そして可愛らしいその人形には合わない、黒い喪服。

それは、天使のような容姿と裏腹に血を全身に浴びたかのように真っ赤になっていた。

旅院よりも小さく、少年のようだ。

「なんだ、コレ……」

彼等は、眉を顰めていた。

そんな彼等とは裏腹に、旅院は目を見開いていた。


―――ああ、お前は。


“コレ、とは酷いなー”

小学生ほどであろう声を出す人形。口元はふざけるかのように笑んでいて。


“久しぶりだな、旅院……”

人形になって、戻ってきたぜ。


そう言って笑いながら両目に巻きつけた包帯を取った彼。


「ひさしぶり……」

ああ、僕を見つけてくれたの?

さぞ、憎んでいるのだろうね……。


“……たく、お前がそんなんじゃ俺も成仏できないんだぜ?”

ダメだなあ、お前。

そう言って彼は人懐っこい笑みをうかべ、彼等の前に立った。

“お兄さんたち、やめてくれよ。俺のシンユウなんだ。手出し、無用だ!”

ビシッと人差し指を彼等に向け、口を尖らせる。

酷く困惑した様子の彼等に、少年は続けた。


“旅院は、人一倍優しいやつなんだよ。まわりより、守ろうとする力が強いんだ”

そういう少年に、彼等は怒りのためか顔を真っ赤にさせて叫んだ。


「酷いヤツだって言いたいのか? 俺達には、守れないと、いいたいのか」


―――お前にはわからないだろう、俺達の気持ちが。

そう喚きたてる彼等に、少年は落ち着いた様子で言った。

“酷いやつだろ、じゅーぶん。だってお前等、何にもしてない旅院に手を出したじゃん”

俺のシンユウに、手を出したんだぞ。



そう言って、少年は倉庫に置かれている棚に座り、足を揺らした。

―――旅院は、呆然と目の前の光景を見ていた。


「僕が、憎くないの……? 僕は、あの時……」


シンユウなのに、助けられなかった。

 罪を感じて、感じて、責任を感じて、感じて。

旅院は小さく、震えていた。






彼等は、酷く困惑していた。

“憎い”……? 何が、だ。

何故、こんなにもコイツは震えている? 恐れているかのような目をする?

初めて見た表情はあまりに衝撃的で、不思議で。

目の前にいる人形を、目の前にある魂を、見つめていた。


『君たちが理解するには、難しいだろうね』

―――どこかで、声がした。






紫は、その倉庫を見つめていた。

屋根の上で足を持て余して、包帯を風に揺らして。

酷く綺麗で純粋な幼い少年の魂を見守っていた。

あまりに長い間旅院のことを心配し、この世で彷徨っていたからだろうか。

本来在るべき時間をのばして、禁忌を犯した。だから、魂の輪廻から外された。

(※輪廻……生きているものが死に、生まれ変るという止まることのない流れ)


この世界では魂が此処に在るべき時期が決まっているのか、と紫は溜息をついた。

心配だったから、など理由になりはしないのだろう。


―――誰が、“良い事をしたらその救いが来る”と決め付けた?


 だって“彼”に救いなど、きやなかったじゃないか。

再び溜息をついて、紫はもう一度幼い少年に目を向けた。



「まだまだよわいなぁ、僕は……」

小さく呟いて、彼女は拍手を送った。



「おみごと、だ……」

シンユウを助けられなかったという“自惚れ”に溺れる、優しき少年。

シンユウを見守るがために罪を負った、優しき少年。


二人は、何のために人々から虐げを受けてきたのだろうか。



―――彼女は、懐かしむように“左腕”をさすっていた。

手の甲と、肘の丁度真ん中あたり。

―――その場所は、自分の身を守るときに傷が出来るであろう場所だった。




(やさしいね、君たちは)


(僕とは違うね……)





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