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第二話


「ううん、切り傷・擦り傷……キミ、どんだけ危ない橋渡ってるの?」

見てるだけでしみるなあ、と呟きつつも紫はしっかりとその傷を消毒する。

茶髪で小柄な彼―秋田旅院あきた ろいんは、現在疑問でいっぱいだった。



不器用、ドンくさい、素直じゃない、その上始終無表情。

そんな自分に、何故知りもしない彼女が関るのか。

何故、自分の怪我を治すのか。

彼女は、周りと同じで顔だけで判断をするやつじゃないのか。


「まったくさー、可愛い顔してるんだから、怪我しちゃダメだよ。

いや、殴られたら蹴ってやれ。手よりも足の方が力強いんだからー!」


ふわりと綺麗な微笑みに、彼はじっと彼女を見つめていた。

黒淵眼鏡の奥にある彼の瞳は、酷く霞んでいる。


「どうかした? ……。あ、君!!!」

首を傾げたのもつかの間。

ガシッと彼の手を掴んだ彼女。


「かっわいい顔してるね!! モロストライクだなぁ……女の子じゃないのにそれ以上とは!」


感激だ、と叫ぶ紫にやはり旅院は呆然としていた。


―――彼女は、何だ?

周りと、明らかに違う。


―――そう……神々しく、美しいまでの志と魂。



「そのイジメ、僕が細工してやろう!」

ニッコリと笑って、彼女はやはり綺麗に笑った。





“人間は、あまりに醜いイキモノだ”


“彼女は、あまりに美しいタマシイだ”





     ―――――――――




「ヘェ……随分と陰湿な所だねぇ」

小さく呟いて、彼女は再び足を動かした。その後に、不本意そうな彼が続く。

彼にとって、誰かに助けられると言う行為を良くとっていないのだろう。

ましてや、同い年の女子に。


タッと音を立てて身を翻した彼女に、彼は足を止めた。

「ね、旅院。“人間”ってどんなものだと思う?」

小さく呟いた彼女に、首をかしげる。

―――あまりに寂しげな声。

その整った顔は見えない。

彼女は壁や床についた傷などをなでている。



「……僕は、“醜い”と思うけど」


小さく呟いて、彼は外を見た。

今は、綺麗な青が灰色の雲によって隠されている。

今にも雨が降りそうな天気。旅院は、小さく、無意識のうちに溜息をついていた。






……ああ、雨が降りそうだ。

僕が大嫌いな、天気……。



―――あのときを思い出すんだよ。









この世を去ってしまったシンユウ。

雨なのに自転車に乗っていて、気を晴らすかのようにペダルを漕いでいた。

信号無視の、早い自動車が近くを横切る。

彼が自転車とともに、宙を舞う。

まだまだ幼くあったから、軽々と飛ばされてしまったのだろう。


初めてケンカして、すぐに謝ろうと思っていたのに。

彼は呆気なく死んでしまった。




渡せなかった、誕生日のプレゼント。

あと少しで彼に一言言おうとしたのに。

彼は、目の前で真っ赤に染まってしまった。



ひき逃げした、自動車。


―――俺はやってない、やってない!!!

色んな目撃者がいたため、犯人は直に捕まった。

けれど、そう言って彼は必死に自分の罪を掻き消そうとした。


ねぇ、どうして。どうしてそうやって言えるの。

君はあいつを殺したんだ。

僕のシンユウ。今日、誕生日だった。

まだ、小学4年生だ。まだ、10歳だよ。

ねぇ、君はまだまだ生きる命を奪ったんだよ。




解 ッ イ テ ル ノ ?





今でも覚えている、その醜く歪んだオトコの顔……。




―――俺じゃない、俺が悪いんじゃない……こんな事故一つで、命一つで俺の人生メチャクチャになるなんて嫌なんだよ!!!







赤が、嫌いになった。

何よりも―――……。





(これは、ただ単に僕だけのエゴなのかもしれない)


(事故にあって、死んでいないからそんなことを思えるのかもしれない)




ぼーっと外を見つめる旅院。

紫は、そんな彼の隣にいる“何か”を見ていた。



“細工、しようと思うんだ”


そう、音を発せず伝えれば、“何か”は驚いたようにほほえんだ。


こんにちは、九条です。

紫「こんちわー」

翠「こんちは」

岬「こんにちはー!」

「「三人合わせて三色トリオです」」

岬「なにそれ!? いつ考えたの!?」


翠「アドリブだけど」

紫「マフィアたるもの常に考えておかなきゃね!」


岬「え、あれ、なんでマフィア……?」



今回出番の少ないお二人さんです。(翠と岬)

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