僕の独り言
僕は幼い頃から死んだ人を見るんだ。でも誰にも言ったことはない…だって僕が壁にいる子を観ていると、お母さんが遠目から不審そうに眺めている事に気付いたから。
幼稚園からの帰り道も、小さな暗いトンネルを通るんだけど、僕はその場所がとても嫌なんだ。目をできるだけ細めて息をしないで通っても、沢山居るんだよ。自然と身体が震えて仕方なかったんだけど、いつの日か何故かお母さんがその場所を通らないで、遠回りをして家に帰るようになった。
僕とお母さんは普通の関係だと思うんだ、ご飯も服もちゃんと何時も用意をしてくれるし、幼稚園や学校の参観日や運動会も見にきてくれる。
笑顔で接してくれるのに……何故だろう……僕は誰にも見える事を話せないんだよ。
僕は勉強を頑張る。
運動を頑張る。
友達関係も男女共に沢山いる。
問題も一つも起こしたことはない。
お父さんとお母さんは何時も笑顔だ。
今日小学校の帰り道に、近所のお婆ちゃんが家の前に居た。挨拶しようと思ったけど、透けてたからそのまま通り過ぎたんだ。2日後、その家ではお葬式をしていた。
僕は、道を歩いていると色々見える。最初は生きてる人か、亡くなってる人かの区別がつかなくて、ビクビクしてたけど、今では何となく生気で判るようになったんだ。
お父さんに若い女の人が居るみたいだ。お母さんは僕の幼稚園の先生だった人と、付き合っているようだ。僕はその人達が、家に居るお父さんとお母さんに時々、生き霊としてくっついているのを感じていたが、笑顔で生活している。
2人とも家では笑顔だ。普通の家族なんだよ。僕は幸い頭が良い、中学は受験して全寮制の学校へ行く。
海外のボーディングスクールだ。お父さんとお母さんは其々がお金持ちだから、お金の心配はしなくて良いみたいだ。
お爺ちゃんとお婆ちゃん達も、喜んでお金を出してくれるみたい。次世代のリーダーとなる人材を育成する教育機関への進学とあって、周りが突然煩くなったが僕はいつもの生活だ。
イギリスのボーディングスクールに行く事に決定した。僕は、この家から出れて遠くに行ければ何処でも良かったから、行き先は周りに丸投げしたんだ。何でも現在世界で活躍する多くの著名人達も、このボーディングスクールの全寮制の寄宿学校で教養や知識を磨いていたようだ。
僕は淡々と準備をし、生まれ落ちて今迄お世話になったこの家にお別れをした。もう二度と見ることはないだろうこの家。
泪は出ないな……バイバイ。
17歳
イギリスのボーディングスクールは、僕にとって動きやすい場所になった。
規則や礼儀道徳心、生活態度やコミュニケーション能力、色々な物事に対する寛容さ忍耐力交渉力等を勉強させてもらっている。
長期休暇は全てガーディアンと言う後見人の企業に連絡して、各国の滞在先の安全なホテルを手配してもらい、様々な国に旅したり勉強しに行ったりと、自由な時間を過ごしていた。
ガーディアンを通じて祖父達には居場所は教えているので、会いたい時は向こうから勝手に会いに来る。父と母は小学校卒業して、留学してから1度も会っても話してもいない。別に寂しくも無いしどうでもいいことだ。
興味が無い。
僕は霊が見える自分を受け入れた。
この学園には多数の霊が居た。見える人も結構居るみたいだから…それに此処は霊と言う物をそこまで特別視していないみたいだ。日本とは少し価値観が違うので、僕的には楽になった。
僕は自分の見えるという事を武器にする為に、各国の占いを勉強したり力のある人に教えを乞い、弟子にして貰ったりしたのだ。
西洋占いは、ヨーロッパ諸国より発祥発展したので僕は、様々な街を歩き観察して風景や空気の中に溶け込んでいるものを感覚で掴む様にした。
事前に感覚を掴む事で、勉強した時の飲み込みや吸収が早くなる様な気がするのだ。特に感覚がものを言う世界だから言葉では表せないものを察する為にはその場の雰囲気に溶け込むのは大事な事だと、僕は考えている。
星占い・ルーン占い・数秘術・タロット・占術・手相をヨーロッパ諸国を回り数年かけて学んだ。
東洋占術は、中国や日本へ行き陰陽五行思想を学んだ。暦の考え方はロジカルである為、物事に対する吉凶がハッキリと別れるのが面白い。
四柱推命・姓名判断・九星気学・算命学・宿曜・風水・0学・手相をこれまた時間をかけて、各地を回り学んだ。
僕は霊も見えるので霊能者の修行もして、霊術も学んだ。
これ程の事を学べたのは、学園の長期休暇を全て使って、世界各地を回れたおかげである。僕は自身の家庭や家族を暖かみがあるとは、お世辞にも言えないが、行動を制限しなくお金を払ってくれた事にはとても感謝を感じている。
僕が使ったであろう金銭に関しては、大人になり働いたのち全てを返済する予定である。それが出来ると見据えている。