001 転生先は、セミ?
俺は、転生した。と思う。
先程、自称神の人が、(俺にとっての)異世界に転生しなきゃ、次はセミになるって言ってたからなぁ。
人気ないんだってよ。魔物がいる世界は……
「この世界はスキルがあるから、このガチャを3回引いてね」って神に言われたけど、中身見してくんなかったな。何が入ってたんだろう。まぁ別になんでもいいけど。セミじゃなかったら、人に生まれるんなら・・・
やっぱうそ! なんでもよくない! 転生した瞬間、10歳位になってるのはいいんだけど、この修羅場は何よ! いきなりはぐれゴブリンが目の前にいるんですけど!
「なんなんだよ! ちくしょう!」
俺は腰にさげてあった短刀を抜き、正眼に構えた。
相手のゴブリンは、嬉しそうだ。
いかにも格好のカモだもんなぁ! だけどタダでは死なんぞ、クソゴブリン!
地面に落ちてた石を投げつけた。
「ギギ!」
ゴブリンは、難なく躱す。だがあちらもこちらに近づけないようだった。
「あはれ《当たれ》!うほほふひん《クソゴブリン》!」
短刀の柄を口に咥え、右手に石を持ち左手に落ち葉を掴んだ。
「ひ《死》ね!」
右手の石を投げゴブリンが避けた方向に一気に距離を縮め、落ち葉と土が入り混じった物を投げつけた。
「ギギァァア!」
すると土がゴブリンの目に入り、目を眩ませた。
「うぉぉおおお!死ね!クソ!死ねぇ!」
「ギギ!ッグッグァァアアアア!……」
目を眩ませたゴブリンの首を、動かなくなるまで滅多刺しにした。
日本ではまるで縁のなかった、命を賭けた決闘に我を忘れていた。不思議と恐怖が湧かなかったのが何とか戦えた理由だろう。
「へっへへ。やったぞ畜生!」
今になってやっと体が震えてきた。
とりあえずこんな所に居たくないから、ゴブリンの戦利品を頂戴して帰ろう。
ゴブリンの棍棒
ゴブリンの首飾り
100カパー
カバン
白い卵
こんなまっとうなカバン、ゴブリンなんかに作れんのか?
さては人を襲った時の戦利品だな。
あとこのカバンの中、パンパンの白い卵はなんだよ。デカすぎるだろ。重いし。
なんでもいいけど、さっさとトンズラしよう。
俺は、なんか孤児院にご厄介になってるらしい。せっかくの戦利品が没収されそうだから、近くの小さな洞穴みたいな場所に隠しておいた。
前世の意識がハッキリと戻る前の俺が、今世の知識と技術をつぎ込んで作った秘密基地だ。よくやるよなぁ。今世の俺も。歩きながら、前世の俺と今世の俺がひとつになじんで行くのを感じる。先ほど、急激に記憶が戻ったので、まるで長い夢から覚めた時のように脳が混乱していたが、もうすっかり俺は、俺だ。セミなんかじゃない!
「ただいま帰りました。院長。」
出迎えるのは、顔だけは爽やかでイケメンな院長だ。
「おい。薬草は、どうした?」
「取りに行った途中でゴブリンに襲われました。」
「ちっ! 使えねぇな! ゴブリン位でガタガタ言ってんじゃねぇよ!」
院長は、思いっきり腹部を殴ってきた。
「ぐっ! ぐはっ! はぁはぁ……すみません院長。」
「っち。明日お前は、スキルの鑑定のため神父様に会わなければならねーからな。これぐらいで勘弁してやる。ただ明日が過ぎればわかってんだろうな!」
スキル鑑定には銀貨5枚。孤児の俺には到底出せない金額が必要だ。
だが孤児院で11歳を迎えるものは、タダでできる。
「スキルもらったら、もうこんなとこに用はねーよ。」
俺は小声で決意した。
元SPは、転生しても戦闘服は、スーツのようです。
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