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カエルと魔女の花嫁探し  作者: 天野 仰
二章:東の女性はマニアック
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順調なのか、身の危険なのか?




 ホウキに乗ってカエルたちから離れると、セレネーは近くの街で宿を取り、部屋で水晶球を取り出して二人の様子をうかがった。


 映し出されたのは、さっきまでいた森だ。

 あのまま二人は木陰に座り、キラが次々とカエルに質問してメモを取っていた。


『食事はいつも何を? この森、色んな羽虫がいますから食べ放題ですよ』


『い、いえ、食事は昆虫ではなく、魔女のセレネーさんと同じものを頂いています』


『ええっ、人と同じものを?! お腹壊さないんですか? 肉も魚も野菜も果物も大丈夫なんですか?』


『そ、そうですね……さすがに肉や魚は生だとお腹を壊してしまうので、火を通す必要がありますが――』


『生食ダメなんですか?! す、凄い……こんなカエルさんが存在するなんて……』


 キラはずっと瞳を輝かせ、カエルが何か言う度に驚いたり破顔したりと顔が忙しい。そんなキラを若干引き気味に見ながら、カエルはバカ正直に答えていく。


(……うん、天然対天然ね。案外といい組み合わせかも)


 水晶球を眺めながらセレネーはひとり頷く。キラは変わっているが、中身は素直で純朴だ。それに根が明るくて憎めないところがある。人の良いカエルの隣に十分相応しいと思えた。


 一番の心配は、カエルが納得できるかどうか――セレネーが成り行きを見守っていると、


『やっぱり魔女様のカエルは違いますね! こうやって言葉を交わせるだけでも凄いのに、意思もしっかりとあるし、物腰も丁寧だし……まるで王子様ですね』


『えっ! そ、そう、ですか……?』


『人でもカエルでも、それまでの生き様が滲み出るものなんですよ。きっとカエルさんは真っすぐに生きてきたんだろうなあ。あと優しい。人同士でも難しいのに、種族が違っても優しくなれるって素晴らしいです』


 思ったことを素直に言ってしまうキラの、お世辞抜きの誉め言葉。カエルの目がウルウルと潤み出した。


『ああ……キラさんは見た目ではなく、私の中身を見てくれるんですね。世の中には貴女のような素晴らしい人が存在するんですね』


 あ、ドン引き気配が一気に消えた。恋に落ちたわね。よし、いける!

 セレネーは胸元で両手を握り、小刻みに頷きながら強力な手応えを実感する。


 今までになく初日から順調でセレネーが嬉しくなっていると、キラが満面の笑みを浮かべてカエルの両肩に指を乗せた。


『カエルの王子様に相応しい泥パックしますから、楽しみにしていて下さいね! 花の蜜と香油も加えて、体を洗った後も良い匂いがするようにして、肌もツヤッとピカッとさせて……あ、爪の間とか体のシワもお手入れしなくちゃ。お洋服も用意しなくちゃ――』


 泥パックだけでは済まない気配に、カエルがギョッとなって身を強張らせる。


『いえ! お気遣いは嬉しいですが……その、カエルですから、外に出ればすぐに汚れますし……』


『大丈夫ですよ、その都度やりますから。遠慮しないで下さいね。嫌じゃないどころか、むしろやりたいですし! ……あ、もしかしてカエルさんが嫌、ですか?』


『えっと、嫌というか……あの、その……び、敏感肌、なので……』


 ……逃げたわね、王子。男なら喜びなさいよ。

 生温かい眼差しを水晶球へ向けながら、セレネーはニヨニヨと笑う。


 困り切った様子のカエルに、キラが『そうですか、残念』と眉根を寄せる。

 しかし小声で『どうにか試せないかな……』と諦めていない呟きを、セレネーはしっかりと聞いていた。


(王子、自分の身は自分で守りなさいよね。正直なところ、王子の泥パック見たいところだけど)


 キラの呟きを教えることもできたが、もし結ばれるならなんの問題もないことだし……と思い、セレネーは見守ることにした。

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