プロローグ
小汚なく手入れもされていないと一目でわかる馬車の中には薄い服を着て、鎖に繋がれたまだ10才に到達していない30人位の男女が押し込まれていた。
「やっぱり、奴隷商は儲かるねこんな汚いガキ共売るだけで大金が手に入るんだから。」
丸々と太った男は独りでにしゃべる。
この世界の奴隷の価値は最低でも銀貨一枚にはなる物によっては金貨数十枚は下らない者もいる。
「ん?誰だお前たち!それ以上近づくな!」
突然馬車の前奇妙な仮面を付けた者達がたち塞がった。その手には『弓』『刀』『薙刀』『槍』など多種多様な武具を身に纏っていた。
「その馬車の中にあるのは奴隷達か?」
「そうだとしたら何だ?」
奇妙な仮面の集団の頭一つ抜いている声から男だと推測出来る人物が奴隷商の男に疑問を投げた。
「ねー団長?もう殺っちゃっていい?僕、早く帰って昼寝の続きしたいんだけど?」
次に声を出したのは槍を持つ仮面だった。声からして男なのだろうが、先程の男とは違い緊張感がなく、汚れが一つも着いていないような真っ白な槍を担いであくびをした。
「ああ、もういいぞ。」
団長と呼ばれた仮面男は許可をだす。そのあとは一瞬だった白槍が奴隷商の首を一瞬にして刈り取った。
奴隷商の首を刈り取った、白槍には全く血が着いていなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
僕は今鎖を付けられ馬車に入れられ、自分の行く末を考えている。そして、少しの疑問が沸いてくる諦めた筈なのに。
何故人は平等では無いのだろうか?
何故いつも僕は奪われてばかりなのだろうか?
『ミリス大陸』の辺境にソルド王国と言う国があった。そこは農業が盛んで貧乏だが土地が神に祝福を受けているのか飢えに苦しむ事は無かったし、王は必要以上に税を取ったり、臨時で税を集めたりする人では無かったので国民にも愛されていた。平和な国だった。愛すべき祖国だった。
それがあの日一瞬にしてそれは壊れてしまった。
南の大国セミアリアが攻めてきたのだ、王は交渉を望んだが断られ一瞬にして農業国家ソルド王国は滅んだ。
そして僕…
ソルド王国第一王子アスロー・ソルドは奴隷商に売られた…奴隷の僕にはご主人様がいい人であるように祈ることしかできない。
『外が騒がしいな…』
突然馬車が止まり外が騒がしくなった、ここからでは外の様子は分からないが何かが起きている気がする。
「よう!お前ら元気にしてるか!?悪魔の使いランド・ペフナー様が来てやったぜ!!」
突然馬車の扉が開奇妙な仮面を付けた男が大声で叫んできた、突然のことで僕も、他の奴隷の子も声が出なかった。
「何だよ、ノリがわりーな!!」
怪しい仮面を付けた男のノリに着いていけるのは世界でもごく少数だろう。自分達が着いていける訳が無かった。
「茶番はこれぐらいにして…本題に入ろう。」
男は先程とはいって変わって、真剣な顔つきになった。
「お前たちには、2つの選択肢がある。
1つ、このままここに置き去り。
2つ、俺達の仲間になること。」
突然、置き去り、仲間になれと言われても訳がわからず黙っていると奴隷の女の子が手を挙げて男に質問した。
「仲間になれとはどう言う事ですか?あなたたちは何者何ですか?」
怖かったのだろう、声が震えていたそれはそうだ国の崩壊と言う事件に巻き込まれた俺ですら話に着いていくのに精一杯なのに、この女の子は話を理解し勇気を振り絞って質問したのだろう。
「まず自己紹介俺達は…」
「その説明は私がしよう。」
ランドが話をしようとしたが、直ぐに別の声が乱入してきた。ランドが直ぐに黙ったことからこの男がランドよりも地位が高いことは誰の目からも一目瞭然だ。
「我々は!『幻想の終わり』!!盗賊団だ!」
これが僕アスロー・ソルドと『幻想の終わり』の出会いだった。