表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
家の家  作者: 厠 達三
2/5

2 門前

 翌日、マツエ婆さんは花に水をやっていた。蛇口から直接ホースで水やりをしていると、再び建部が笑みを浮かべてやってきた。

「おはよう、おかあさん。昨日はどうも」

 婆さんは建部の声など聞こえない風で水やりを続ける。

「これ全部おかあさんが育てたん? 見事だね。花つくるの上手なんやね」

「大きなお世話だ! 入ってくんじゃないよ」

 またも婆さんは建部を睨みつけ、手で追い払う仕草をする。が、やはり建部は意に介さない。

「そう言わないで話だけでも聞いてよ。僕、おかあさんにいい話を持ってきたんやで」

「いい話にロクなもんはありゃしないよ。大方ウチから金をむしる肚なんだろ! さっさと失せろ」

 婆さんは建部を一喝するとホースの水を浴びせた。だが、建部はその放水に最初は怯んだものの、気持ちよさそうに水を浴びた。

「ああ、気持ちいいなあ。今日は暑いから丁度いいよ」

 顔の水を手で拭う建部を見て婆さんは放水をやめた。

「でもこれじゃあおかあさんの家の中にお邪魔できないな。今日はこれで。また来ますよ」

「二度と来るな!」

 だがその翌日も建部はやってきた。呼び鈴を鳴らすと婆さんはすぐに現れた。

「いい加減にしろ! 何度きても同じだ。お前の話なんかお断りだ!」

 建部はなおも笑みを絶やさない。

「そう怖がらんでええよ。僕、おかあさんと話がしたくて来ただけやで。ぶっちゃけ僕、窓際社員やから真面目に仕事する気ないねん。おかあさんと商談するふりして時間つぶしたいだけなんや」

「そんなこと言って、家に上げたら最後、契約取るまで帰らないんだろ。その手には乗らないよ!」

「だからそう怖がらないでよ。あ、今日はお近づきのしるしにお菓子持ってきたんや。一緒に食べよ」

 建部は持っていたナイロン袋をかざした。中には菓子折りらしき箱と、カップタイプのコーヒーが二つ入っているのが白いナイロン越しに見えた。

「ふん。そうやって食い物で釣るのがアンタの会社のやり口かい。まあやるというもんならなんでも貰っといてやるけどね。でもアンタの押し売りを買う気はさらさらないよ」

 ばあさんは言いながら建部の手から袋をひったくった。

「さあ、もう用は済んだんだろう。さっさと帰りな」

「そんな殺生な。でも、おかあさんがそう言うなら大人しく帰ります。次は話だけでも聞いてな」

 建部が大人しく引き下がると婆さんは特に罵りもしなかった。

 翌日、またも建部はやってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ