表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カンスト!!  作者: 風紙文
9/24

ルールガエ

地中から現れた巨大なモンスターを見たプレイヤー達の悲鳴がストーンリバーの上流に響いた。

「リバーワームだーーー!!」

プレイヤーの1人が叫ぶことでモンスターの名前が全プレイヤーに知らされたが、それより前にシュレイはモンスターの情報を頭の中で読み込んでいた。

リバーワーム。ここストーンリバーで最強、更に全モンスターの中でも最大を誇る。多人数討伐限定の特殊なモンスター。

多人数での討伐を前提としたモンスターなので体力はラスボスを上回り、動いているその身体に触れただけでもダメージ扱い、必殺技と呼ばれる一撃は文字通りほとんどのプレイヤーを一撃で倒してしまう。特殊なレイドモンスターだ。

「ここにこんなモンスターいたのかよ!?」

カンストプレイヤーなクリティカが知らなかった理由も分かる。リバーワームは、ストーンリバー上流に30人以上のプレイヤーが一定距離感に集まっている時にのみエンカウントするという特殊な条件がある。クリティカの人脈は広そうだが、さすがに30人というパーティで行動をするようなことは無いだろう。そうしなければ話には聞いてもストーリーをクリアしても会うことのないモンスターだ。

「クリティカさん、このモンスターが出たらバトルどころじゃありません。一旦中止にしましょう」

「お、おぅ、そうだな」

バトル中断の申し込みは申し込んだ方だけが出来る。クリティカはウインドウを呼び出し、バトル中断のボタンを押そうと指を伸ばす。

その瞬間、巨大な岩石が振って来た。

「危ない!」

シュレイは蛇腹剣を振るって岩石を砕き、直撃を逃れる。

「おぉ……た、助かったぜ」

しかし、岩石は一つではなかった。

「うわっ!」

「きゃあ!」

観客達にも落とされていた岩石は直撃して大ダメージを与え、それだけでHPが0になった者もいた。

「早く中断ボタンを、そしてすぐに逃げましょう」

リーバーワームの強さを知っていて、今の装備で倒すのは難しいと理解しているからこその言葉は、

「いや……良いこと思いついた!」

ボタンを押さずに手を振ってウインドウを消したクリティカによって流されてしまった。

「バトルの内容変更だ! あのモンスターを先に倒した方がこのバトルの勝者になる、ってのはどうだ!?」

始めは何を言っているのかシュレイは理解出来なかった。しかしそれが、バトルを中断しないこのままリバーワームに対抗することだと分かった瞬間には口が動いていた。

「何言ってるですか! アレは何の準備も無しに2人で勝てる相手じゃありません!」

「じゃあコレならどうだ!」

クリティカは今なおリバーワームの出現に慌てたりHPの無くなったプレイヤーの回復を行っている観客プレイヤーへと手を向けて、

「全員で協力してアイツと戦うんだ! プレイヤー達にはオレとオマエのどちらかに半分ずつついてもらって、トドメをさしたプレイヤーのいた方が勝ちってのはどうだ! それならフェアだろ!?」

「……」

冷静に考えれば、それがフェアではないことにシュレイは気付いていた。

得意の武器を奪われ、自分が不利な状況になった今、勝敗の付け方を自らのHPが0になることでなくなれば条件は五分に戻るのだ。

もちろんシュレイはそんな急なルール変更を受ける必要は無い。自分が優位だったのにそのバトルを中断しようと持ちかけたのにも関わらずこの言葉だ、少しくらい怒っても文句は言われないだろうが、

「……分かりました。それで構いません」

シュレイは、そのルール変更を了承するのであった。

理由は、自らの欲という名の体質故に、

(まぁ絶対に勝てないと決まった訳じゃない。強さは知らないけどこの数のプレイヤーなら対抗くらいは出来るだろうし……リバーワームはまだ情報の少ないモンスターだ。情報収集にもなるだろうし……いや、これだけ考えてもムダか)

シュレイはいつもの、同じ結論に至る。

(どうなるにせよ……やってみるまで分からない。ならば、やってみようじゃないか)

「よし決定だな! そんじゃあ簡単にチーム分けするぜ」

クリティカはリーバーワームに右往左往するプレイヤー達をざっと見て、

「そこから半分、あの辺りがオマエのチームな」

大雑把に円を書いてシュレイのチームメイトとなるプレイヤー達を示した。

ぱっと見た限り、戦士のような前衛系と魔法使いのような後衛系は6:4くらい。男女比は7:3。手に持っている武器や装備だけで判断すると……三分の一くらいはリバーワームに対せるだろうか。

「では、コレを」

バトルのルールも変わったので、シュレイはクリティカから盗んでいた蛇腹剣を返した。

「えっ、良いのか?」

「元々バトルが終わったら返すつもりでしたので」

「へぇ……オマエ、スティールカンストのくせに良い奴だな」

クリティカが蛇腹剣を受け取ると、ちょうどリバーワームの暴走が落ち着いた。これは次の攻撃モーションへ動く前のインターバルであることを知っているのはシュレイだけで、周りのプレイヤー達はこの隙にと攻撃したり、この場で一、二を争う強さのクリティカとシュレイをヘルプに呼びに来たりと個々に動いていた。

クリティカはルール変更を説明し、プレイヤー達全員に伝えられ、

「よーし、バトル再開だ!」

賛同したプレイヤー全員でリバーワームに狙いを付け。

レイドボス討伐戦及び、特別バトルイベントの開幕戦仕切り直しが開始された。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ