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カンスト!!  作者: 風紙文
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アカイミギ

「いいいぃぃ!? 熟練度MAX!? なんで触った程度でそうなるんだよぉ!」

「分かりませんか、コレ?」

シュレイは蛇腹剣を持つ右手、それを包む赤紫の手袋を見せた。

「まさかソレ……熟練者の手袋!?」

熟練者の手袋。熟練度MAXではない武器を持った場合、その名が示すように熟練度MAXとして使用することの出来るアイテム。だが一つの武器に一つの使い捨てであることと、使用中は武器の熟練度が上がらないこと、使い捨てながら高価であるし、MAXにした武器を持っても効果を発揮しない等の欠点からあまり使うプレイヤーのいないレアな一品だ。

「なんてアイテム使ってんだよ!」

「それはまぁ、どんな武器を使うのか分からないので」

対戦相手の使用する武器が自分の熟練度に左右されないように、どんな武器でも十全で扱えるように、相手が使い慣れた武器を同じように使うために、シュレイはこの手袋をしているのだった。

「では、参ります」

シュレイは蛇腹剣を振るい、刃を伸ばしてクリティカへと放った。

「危なっ!」

当たる寸前という所でどうにか手持ちの武器で軌道をずらして直撃は逃れた。

「こりゃ厄介だな……まずはオレの武器を返してもらうぜ!」

クリティカは手持ちの武器を構える。刃の戻りを待ちつつシュレイはその武器を観察する。

(あの剣はシミター……威力はそこそこだけど相手の裏をかくような素早い移動からの攻撃スキルを持っている武器だ。持った瞬間に光らなかったから熟練度MAXではないみたいだけど…)

クリティカはシミターを手に前へと一歩踏み出す。

その直後、武器スキル発動により一瞬にしてシュレイの目の前に現れ、下から切り上げれる。

「これは避けられ…」

「っ!!」

しかし、シュレイはほぼ回避不能の奇襲を身体を反らし、ギリギリの所で空を切った。これには周りで見ていたプレイヤー達も驚いている。

(危なかった……! 4分の1で当たるとは!)

クリティカの使用したスキルは上下左右のどこかから攻撃行うというもので、それは直前まで分からない。シュレイは目前に現れたクリティカの持つシミターの位置から想定し、なんとか回避に成功したのだ。

そのままバックステップで後退すると、蛇腹剣を持つ右手を空に掲げる。

スキル発動後硬直中のクリティカ目掛けて、その武器の熟練者のみが使えるスキルを使った。

「あの構え……ヤベェ!」

蛇腹剣が光を帯び、天を向いている刃が勝手に動き出す。とぐろを巻くように動く刃の切っ先が、さながら蛇のように標的を見定める。

この技の攻撃範囲は理解済み、後は蛇腹剣を……思いっきり振り切る!

蛇腹剣の熟練度MAX技……《蛇の狂乱》

蛇となった刃が元々の持ち主であったクリティカへと襲い掛かる。

「避けられ……ねぇ!」

前後左右に動いても蛇の刃はクリティカに当たる。そういう位置からシュレイが技を発動したことには気付かなかったが、どうやってもダメージになることは気付いた。

「このっ! これでどうだぁぁぁぁぁ!」

なのでクリティカは、その場でシミターを振りまわした。

むやみやたらに振りまわしているだけに見えるが、以外にもそれは効果的であることが正面にいたシュレイにだけ分かった。

(偶然……だよな?)

シミターが振り回されることで、クリティカの目の前に刃のバリアのようなものが作られ、タイミングよく蛇の刃が触れることで直撃を防ぐことに成功していた。

もちろん完璧には防げていないので、徐々にクリティカのHPゲージが減って行く。

やがて攻撃が終わり、蛇は元の蛇腹剣に戻った。

「はぁ……はぁ……へへ、やってみるもんだな」

結果として、クリティカのHPケージは3分の1程が減っていた。

「まさかあんな方法で防がれるなんて思いませんでしたよ」

けれど、

(今の命中であのダメージなら、全部命中を決められれば、あるいは後何回か同じ技を使えば……)

シュレイがこの対戦に勝利の可能性を見つけた。


その時、地面が揺れた。


「なんだ? この揺れ、地震か?」

クリティカを始めとして周りで見ていたプレイヤー達もその異変に気付いている。

その中で冷静に、あるいはいつもの通りに、この揺れを考え。答えに至っていた。

(まさか、この可能性が当たるとは)

理解した直後にシュレイの取った行動は、観客のプレイヤー達を観察することだった。

ざっと見た限り30人ぐらい、上級モンスターの出るここストーンリバーへ来れるくらいだから相当のレベル持ちだと思いたいが、そういうプレイヤーに付いてきた下位プレイヤーの可能性もある。

それを見た目で判断することは出来ないが、共通しているのは誰も手に武器を持っていないことだ。

それはそうだ、観戦するのに自らの武器を構える必要はない。武器は閉まっておいていい。戦いの準備なんて、しなくていい。

つまり格闘家では無い限り、今すぐに戦えるプレイヤーはいないということで……

「全員! 今すぐに戦闘準備を!」

シュレイの言葉は揺れに戸惑う観客プレイヤーに届いた。

「え? なんで?」

「というかこの揺れはなんだ? 知ってるのか?」

すぐには動かない者、

「ど、どうして戦闘準備するの?」

「まさか、何か出てくるの?」

慌てる者、何かに感づく者、さらには、

「そういやここストーンリバーの上流か……」

「てことは……ヤベェ!」

シュレイと同じ答えに行きついた者もいて、



次の瞬間、巨大なモンスターが地中より姿を現した。

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