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カンスト!!  作者: 風紙文
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ハナスノハ

それはとあるカンストプレイヤーより全プレイヤーに向けてのメッセージで、以下のような内容だった。


 このメッセージを呼んでいるプレイヤーの諸君。少し話しておきたいことがある

 直接顔を合わせて話したい、ついては今より三十分後。ストーンリバーの上流にて待つ

 コレは強制ではない、各プレイヤーの私用を優先してくれて構わない


ギルドとしての仕事があったが、コぺルが自分1人で大丈夫だと言ったのでシュレイは示されたフィールドへと訪れた。

一度町を出ればそこはモンスターのエンカウントするフィールド。その中において休憩所と呼ばれるモンスターの出ない安全スペースの一つ、それがメールの送り主の指定した場所だった。

何故安全な町中ではなかったのか、おそらくこのバトルイベントを知らないプレイヤーに聞かれたくなかったからだろう。シュレイはギルドの仲間に言ってしまったが。

指定された時間より十分前にシュレイがたどり着くと、すでに数名のプレイヤーが集まっていた。マスコットキャラクターに集めれた時より少ないが、その時にはいなかったプレイヤーの姿もある。

プレイヤー達はやはり思い思いに時間を待っており、会話している者、1人フィールドの景色を眺めている者、情報サイトにアクセスしてこの辺りに出るモンスターを調べている者もいた。このプレイヤーはこの後この辺りで狩りでもするのだろう。

シュレイが行ったのは、プレイヤー達の当てはめであった。

すでに顔写真付きで、メッセージツールで誰がどのカンストプレイヤーかは分かるのだが、名前は分からないのだ。シュレイはギルドから借りてきたプレイヤーについての情報とメッセージツールを見比べていく。

「あそこで話してるのはレッグパワーとアームガードで……情報サイトを見てるのは会心力か……」

シュレイが作業をしているそこへ、休憩所に入って来た1人のプレイヤーが真後ろから近づいて行った。シュレイは気付いていないのか、作業を続ける。

「アレが、ここに呼び出した防守力のカンストプレイヤーか、まさに防守が強いって感じの恰好してるな」

プレイヤーが近づき、シュレイの真横にまで移動すると、

「オマエもそう思わないか?」

シュレイはプレイヤーの頭をぽんぽんと叩いた。

「確かに……思う」

シュレイの胸辺り程の背しかない、小柄な少女のプレイヤーだ。

腰まで真っ直ぐ伸びた白い髪。同じく白いマントに反して黒い魔法使いの衣装に身を包んだモノクロな姿をした少女。

ここに来たということは何かしらのカンストプレイヤーなのだろうが、シュレイは少女の情報を調べることはない。もう分かっているからだ。

「もう少しで終わるから、ちょっと待っててくれるか?」

「分かった……待つ」

少女はシュレイの横にちょこんと体育座りをして待った。

少しして、シュレイは全ての情報を閉まって少女の隣に座り込む。

「オマエも来たんだな」

「まぁ……用事なかったから」

「それにしても、音も無く近寄って来るのはやめてくれ」

「いつバレるかな……と思って」

「入って来たときには気づいてたよ。ご丁寧に真後ろに回る所も見えてた」

「そっか……残念」

少女はしゅん、と落ち込んだように頭を下げたが、表情に変化はあまり見当たらなかった。そこまで悔しくないのか、表情の起伏が乏しいのだろう。

特に気にせず、シュレイは話しかける。

「ここにいるのが全員カンストプレイヤーで、対戦相手なんだよな」

「別に……優勝賞品になんて興味ない」

「オマエのカンスト値、戦闘に向かないもんな」

「それは……お互い様」

少女はむっとしたように頬を膨らました。

「シュレイには言われたくない……ワタシと同じでバトルに向かないくせに」

「いやいやそれがそうでもないぜ、少なくとも今回のイベントバトルでは…」

その時、

「諸君、集まってくれて感謝する」

今まで口を閉ざしていたメッセージの主―――防守力カンストプレイヤーが口を開いた。

防守力とは、つまりは防御力のこと、プレイヤーが受ける物理的ダメージを抑えるもので。なぜ他のゲームのように防御力という呼び方をしないのかは、運営のみが知る。

そんな防守力のカンストプレイヤーは、鎧をまとった男性プレイヤーだ。

屈強な身体、太い腕、脚部に至るまで統一された鎧で、今は外しているが同一の兜もある。腰には刀が二振り、それ以外の武器は見当たらない。

まさに不動の鎧武者。防守力のカンストを見た目に出したようである。

「わざわざここに集まってもらった理由だが、今回開かれるバトルイベントについてだ」

それ以外無いだろ、と数人のプレイヤーが思う中言葉が続けられる。

「本来イベントとは、ゲーム全体において開催される特別なものだ。しかし今回のものは今までとは異なることさら特殊なものだ。僅か二十七人、されどカンストを迎えた強者のみで優勝者を決めるというものだ」

それはここに集まったプレイヤー達も思っているだろう。

「始めは強者と戦えることに喜びを見出したのだが……マスコットキャラクターの言葉が疑問を浮かび上がらせた。イベントの優勝者へ送られるものだ」

優勝者には、ゲーム内においてどんな願いでも叶えてくれること。

「ゲームバランスを崩しかねない賞品を用意してまで我らを戦わせたかった……何か裏があるように思えてならないのだ。そこで諸君たちに問いたい、今現在においてイベントに積極的に参加しようと思っている者はどれほどいる」

防守力カンストプレイヤーの言葉に、聞いていたプレイヤー達は互いに顔を見合わせたり小声で会話したりと、意欲的参加を進言する者はいなかった。

誰1人として何も言わないのを見て、防守力カンストプレイヤーは一安心したように息を吐き、

「……やはりそうか、あの言葉を聞いて諸君らも疑問を浮かべてくれたのだな。そこでだ、今回のイベント、全員で行わないという誓いを立てないか」

その時、

「はぁ!? 何言ってんだよ防守力カンストプレイヤーさんよ!」 

1人のプレイヤーが声を強くして抗議してきたのである。



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