シンジン?
メッセージの贈り主は、リロードのカンストプレイヤー。それも全員に向けてではなく、スティールカンストプレイヤーのシュレイ個人に宛ててだ。
簡潔に説明すると、挑戦状……だが少し難点があったので解読すると。要は今から2時間後、ベアブックという場所に来いというものであった。
(リロード……魔力回復のカンストプレイヤーか……)
何かと有名である彼からまさか指名が来るとは、まぁいずれ戦う相手ではあったが……などと思いつつ、まだ時間まで余裕があるのでシュレイは一度ギルドに戻ってきた。
「ただいま戻りました」
扉を開けて入ると、そこには、
「お帰りっす-、シュレイ」
店番を変わってもらったコペルと、
「あ、おお、お帰り、なさい……」
対面に座る見知らぬプレイヤーがいた。
とても小柄で、シュレイより頭半分は低いコペルよりも背が低い。
その体型と声の高さ、ショートカットのオレンジ色の髪から一見少女のようだが、身に着けている防具が性別によって若干形状が変化するタイプのもので、それが男性型になっていたので男性プレイヤーであることが分かった。
それらから見て、恐らくこの街に初めて来た、第一ストーリーも終わっていないプレイヤーではないかとシュレイは推測する。きっとこの先の情報が欲しくてギルド『dtk』へ来たのではないか。
「コペルさん、こちらは?」
ここまで考えてからコペルに訊ねる。
「ウチに入りたいっていう志願者っすよ」
それは予想外だった。
「dtkに、ですか?」
「そ、そうなんです!」
志願者のプレイヤーがシュレイに向き直った。
「じ実は、そろそろギルドに入ろうかなと考えてまして、そそれでこの街に付いたら、ギルドハウスが沢山あると聞いたので、ここで決めようと思って探していたら、情報屋ギルドという肩書きが、か、カッコいいと思いました!」
どうやらシュレイの予測もあながち間違いではなかったようで、そこからコペルが説明を始める。
「ということで、面接的なものをやってたんすけど、この人まだ第一ストーリーも終わってないんすよ。そういうプレイヤーがここ入っちゃうとストーリーの先を知っちゃって純粋に楽しめなくなると思わないっすか?」
「まぁ、そうですね」
ギルド『dtk』に入る為の条件というものはない、だがゲーム内の攻略情報を扱うギルドということで、メンバーは全ストーリー攻略しているプレイヤーだけで出来ている。
「というか、何故コペルさんが面接を?」
こういう事なら、コペルよりも適任なプレイヤーが……
「ちょうど入れ違いで出て行っちゃったんすよ」
なるほど、だからか。
「という訳でシュレイ、交代っす」
「え、いえでも自分、実は…」
シュレイはコペルに先程来たメッセージを見せた。難解であるそれをコペルはあっさりと解読し、
「なら大丈夫っすよ、1時間したら戻るって言ってたっすから、戻ってくるまで面接してても間に合うっす」
「そういう事でしたら……」
最終決定は彼に委ねるとして、シュレイはコペルが座っていた椅子に座り、コペルは隣の部屋へと入っていった。
情報を提供する時のように、テーブルを挟んで前にはギルドへ入りたいという志願者プレイヤーと対面する。
一応、1000文字程テキストを書き込めるツールを呼び出してから、
「では、改めてプレイヤー名をお願い出来ますか?」
面接を、開始した。
「は、はい! 僕はミカンって言います!」
「ミカンさんですね」
オレンジ色のショートカットが確かに見えなくてもない。しかしプレイヤー名を付けるのはキャラクターを作る前なので、この髪を予想して付けたかただの好物なのかは分からない。
「第一ストーリーをクリアしていないということですが、ステータス画面を見せていただけますか?」
「どど、どうぞ」
ミカンは自分のステータス画面を表示し、シュレイは所々をテキストに書き込んでいく。
プレイヤー名ミカン、レベルは30。ステータス値で最も高いのは素早さ、低いのはやはりというかスティール。しかし初期値ではなく少しだけ上げられている。
これは恐らく、ゲーム序盤で言われる『初めの内はステータスをまんべんなく上げた方が良いぞ』というNPCの言葉を真に受けているからだろう。
しかしこの言葉、実は言葉が足りておらず、ここで言うステータスはHPや攻撃力といったメインステータスだけを指した言葉で、スティールのようなサブステータスは含まれていないのだ。それを示すかのように、序盤はサブステータスを使う事が殆ど無い。
そんなことを知らない新参プレイヤー達は全てのステータスをまんべんなく上げて、後にサブステータスは別に上げなくても良かったのでは? と気付いた頃に初めてステータス振り直しの店がある町に到着する。そしてステータス値を振り直す。
そんな流れと共に、サブステータスよりメインステータスを上げた方が攻略しやすいと言ったテキストが、『dtk』が制作に関わる攻略サイトに書かれている。
「この街までは、1人で?」
「い、いえ、途中のクエストはパーティを組んでもらいました」
なるほど、ならば納得出来る。
ミカンのレベルが、この街に初めて来たプレイヤーの平均レベルより少し低いと感じた。素早さを生かして幾つかの戦闘を避けてきたとも考えられるが、必ず戦わなければいけない相手に対して1人でこのレベルとステータス値ではかなり難しい。しかしパーティを組んでなら、他の強いプレイヤーと共に戦えばクリアは可能だ。
その後も幾つか質問をしていく、得意な武器、闘い方、好きなモンスター苦手なモンスターから、ここまでで苦戦したマップやクエスト等。途中から別に聞かなくても良いようなただ興味本位で訊きたいことも混ざっていく、それらにしっかりと答えてくれるミカンも相まって、テキストが新たなページに行こうとした所で。
外からの扉が、開かれた。
「今戻った」
金髪に緑のローブ、アンダーリムの眼鏡をかけた男性プレイヤー。ギルドの中では持っていない銀色の杖を手にしたその姿はまさに魔法使いのようだ。
「あぁエジンさん、お帰りなさい」
「お、お帰り、なさい」
入れ違いにギルドハウスを出て行た は、シュレイとミカンから迎えられた。
「? シュレイ、この状況はなんだ?」
出て行く前にすれ違ったプレイヤー、そんな彼がステータス画面を見せ、シュレイがテキストを記している。およそ商売には見えない状況にエジンが訊ねる。
「それが…」
シュレイはミカンがギルド『dtk』に入りたいという事を説明し、面接のようなものをしていた事、聞いた事をまとめていたテキストを見せた。
「そうか……」
「それと、実は自分…」
更に先程リロードカンストプレイヤーから送られてきた挑戦状も見せる。エジンはすぐに解読すると、チッと舌打ちした。
「アイツからの挑戦状か。そんなもの無視すれば良い……と言いたいところだが、そうもいかないか」
「はい、なのでこれから行ってきます」
「分かった、ここは変わろう。だから絶対にヤツを倒してこい」
「は、はい」
普段はクールに状況を見るエジンが、珍しく感情を出している。
その理由はもちろん、リロードカンストプレイヤー。エジンと少なからず因縁を持つ彼にあった。




