ウデトアシ
音の原因。それはこの街で度々起こることかもしれないと考えたシュレイはよく起こる場所に訪れると、予想通りであった。
人通りの多い街の大動脈を繋ぐ十字路の一角、そこにプレイヤー達が集まっていた。
一応通るプレイヤー達の邪魔にならないように道を空けているが、結局集まっているプレイヤー達を見たプレイヤーが何ごとかと集まってしまい、通るのはほんとに急いでいるか興味の無いプレイヤーか、街の住民たるNPCくらいしかいない。
(やはりその通り……でもまぁ、あの時から起こらなかったのが逆に不思議か)
集まっているプレイヤー達の間を抜けていくと、輪の中心には音の原因にして、ある種街の名物になりかけている2人のプレイヤーがいた。
「いつか決着を付けねぇととは思っていたが……今日がその時だ!」
「望むところだよ! まさにうってつけのバトル……今度こそ決着を付けようか!」
口喧嘩をする男女のプレイヤー。共にこの街の風物詩にして、有名なプレイヤーだ。
「俺の拳が、お前に勝つ!」
赤い短髪に胴着の様な白い服、裾がボロボロの長ズボンに足は裸足。そして両腕には使い古された様な、ゲームに出てくる武闘家が付けているような薄汚れたバンテージを巻いている。
格闘家シリーズという一式装備に身を包んだ男性プレイヤーの名はグレン(因みに漢字で紅蓮と書く)。
「アタシの足が、アンタに勝つ!」
深い緑色の長髪はポニーテールにまとめ、上下一体となった中華風の服に膝下ほどの半ズボン。そして両足には鉄を薄く加工して強度と威力を高めた靴を履いている。
グレンと反対に蹴りに特化した装備をしている女性プレイヤーの名はマツリ(因みにひらがなでまつりと書く)。
2人共、カンストプレイヤーとしてイベントバトルに参加している、ライバル関係にあるプレイヤーであった。
(そうだ、喧嘩ばかりのこの2人が今までバトルしてなかったのが妙だったんだ)
性別はもちろん、所属するギルドも、バトルスタイルもゲームを始めた時さえ異なるこの2人が何故ここまでのライバル関係になったのか。話せば意外と長くなるのだが……
端的に言ってしまうと、自分の方が強い! という一言で片付く。
「おーおーついにやるのか!」
「イベントバトルの話を聞いた時から待ってたんだよ!」
「これほど決着が待ち遠しい対戦はないよな-!」
周りのプレイヤー達も2人の決戦を待ち望んでいるようで。それほどまでに27名だけで始まった特別イベントバトルがゲーム内に広まっているのかがよく分かった。
「ルールは簡単だ! 先に体力が無くなった方が負け!」
グレンはバンテージに巻かれた拳を握る。
「OKだよ! 武器とかアイテムは自由……でもあまり関係ないね!」
マツリは強化された靴に包まれた足を上げる。
今にもバトルが始まりそうな光景を見て、シュレイは1人思った。
(これで決着なのか……アームパワーとレッグパワー、腕と脚の攻撃力対決)
グレンは腕攻撃、アームパワー。
マツリは脚攻撃、レッグパワー。
2人がライバル関係をしている最たる理由であるカンスト値がコレだ。
アームパワーとレッグパワーとは、ステータス画面に表示される27のステータスの内、4種類だけあるボディステータスと呼ばれるものの内の2つ。
共に腕と脚で攻撃を行う際の攻撃力に影響するステータスで、カンストプレイヤーともなれば下手な武器を装備して攻撃力で攻撃するよりも、直接殴ったり蹴ったりした方が強かったりする。
因みにアームパワーやレッグパワーでの値がダメージになるアイテムも存在し、グレンのバンテージやマツリの靴などで。
つまりこの2人、今身に着けているものが最強の武器なのだ。
「いざ……」
「尋常に……」
2人の声に周りのプレイヤーは押し黙る。いよいよ決着が付いてしまうのか……とほぼ全員が考える中、シュレイは、
(あれ? でもあの2人……)
ただ1人だけ周りとは異なる考えに行き着いた、次の瞬間。
「「勝負!!」」
ぴったり揃って2人は前へ飛び出した。
共に得意な攻撃を相手に与えるため防御はしない。
カンスト値の攻撃を防御無しで受ければいかにカンストプレイヤーといえど一撃ダウンは充分にありえる。
つまり、当たり所によれば、この一撃で、決まる。
その、可能性は―――
「はいはいストッープ」
2人の間に入ったプレイヤーによって、無くなった。




