表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カンスト!!  作者: 風紙文
11/24

ミエナイコ

「全員、攻撃はリバーワームの後ろへ集中して下さい!」

少しでも登っているプレイヤーの負担にならないよう、プレイヤー達をリバーワームの尻尾の方へ集めて攻撃を再開させる。

先程も回復してくれたプレイヤーにHPを回復してもらい、鎧のプレイヤーはリバーワームへと向かう。

シュレイは一人その場に立ち、今なお駆け登るプレイヤーを見守っていた。

すでに半分以上、あの早さなら5秒とかからずに弱点へと到達するか。

サンド・テンペスト後の硬直状態は30秒と決まっており、端から昇った場合は大体10秒ぐらいかかる。しかしこれは硬直した瞬間にリバーワームの端に足をかけてからの時間なので実際にはもっとかかり、弱点を攻撃出来るのはせいぜい5秒、大振りの攻撃なら3発といった所だ。

シュレイがプレイヤーを発見した時は硬直から5秒。思案してプレイヤー達に指示を出してから再確認して5秒、ここまでで10秒。

後5秒で弱点に到着して、残りは退避を考えても10秒以上、逃げなければ20秒近くある。

(弱点に攻撃が入ったらそこからは早いが……)

そして、

「おい見ろ! あんな所に誰かいるぞ!?」

クリティカ側のプレイヤーがリバーワームの上に立つプレイヤーにようやく気付いた。

「誰だよアレ!」

「あんなプレイヤーいたっけ?」

「いや、いなかったと思うけど」

やはりというか、アレが誰なのかを知るプレイヤーはシュレイしかおらず、

(さぁ、どうなるか……!)

シュレイ達に見られながら、そのプレイヤーはリバーワームを登頂した。

リバーワームの弱点、それは防守力がマイナス設定されている目。普段はどこにあるのか分からず狙うことは出来ないが、サンド・テンペストから30秒だけは目を開いて弱点を晒す。

それを知っているからこそ、彼女はリバーワームを駆け上り、頂上で目を発見。

自らの獲物である鎌で、その目を薙いだ。

たったそれだけで、今まで全員で削ってきた以上のダメージがリバーワームに入った。

(毎回思うけど、この設定はズルいよな……)

等とシュレイが考えている間も、二回目、三回目と目に攻撃を加えていき。

ついに、攻撃方法によっては後一回の攻撃で倒せるかもしれない所までHPケージを減らした。

その時、リバーワームの身体が細かく振動を始めた。これは一撃死相当の動き出し攻撃の初期動作で、大体のプレイヤーはこれが始まると身体から降りる。

しかし彼女は、鎌を大きく振り上げーーー

ドスッ!

リバーワームの目に、鎌を突き刺した。

グォォォォォ……

最後の悲鳴を上げながら、だんだんと身体の振動が収まっていき……


リバーワームの身体が砂のように崩れ落ち、参加したプレイヤー達の前に討伐成功のアナウンスが現れた。


「や……やったーー!」

「あの大きなモンスターに勝ったぞ!」

プレイヤー達は両手を挙げて喜び、近くにいるプレイヤーと勝利を分かちあい、少しして、

「そういえば、あのプレイヤーは誰?」

リバーワームにトドメをさしたプレイヤーについて考え始めた。

「え? おい、何で誰も知らねぇんだ?」

このプレイヤー達を集めたクリティカが周りに問いかけるも、彼女の正体を知る者はいなかった。

「お前は知ってるか?」

「えぇ、知り合いです」

シュレイのみが知っていたそのプレイヤーに視線が集まる。

「というかですね、彼女もカンストプレイヤーなんですけど」

シュレイとクリティカが話し、その周りをプレイヤー達に囲まれている所へ、彼女はやって来た。

腰まで届く白い髪、黒一色の魔法使い装備に白いローブを羽織ったモノクロで小柄な少女プレイヤー。手に持った獲物である三日月を模した鎌は、持ち主が小さな分大きく見えるがそういう訳ではない。

まぁそんな風に見ているプレイヤーはおらず、むしろこんな少女があの鎌でリバーワームの目を刺していたのか、という視線が殆どだった。

「コイツも、カンストプレイヤーなのか?」

「はい、彼女はステルスのカンストプレイヤーです」

ステルスとは、隠蔽力。簡単に言うとモンスターから狙われる確率が下がるステータスのことで。主に防守力の低い魔法使いや遠くからの攻撃を行うプレイヤーが狙われないように上げている値だ。

ステルスには大きな欠点が2つあり、ソロプレイヤーの場合にはほぼ効果が無いことと、プログラムではない対人戦ではほぼ無意味であることから、スティール同様上げるプレイヤーの少ないステータスワースト5位に入っていた。

「よぉリリハ、来てたんだな」

「ん……来てた」

「ちょ、ちょっと待てよ、その前に聞かせてくれ。お前、今の勝負、どっちの味方だったんだ?」

「どっちの……味方?」

ステルスのカンストプレイヤー……リリハは左右のシュレイとクリティカの2人を見てから、

「ワタシは……シュレイの味方」

そう呟いた瞬間、

「ということは……オレの負けかぁぁぁ!?」

敗北したクリティカはショックで膝から崩れ落ち、周りの観客プレイヤーは決着が付いたことにわっ、と騒いだ。

その時、シュレイの目の前にウィンドウが現れ、『特別バトルイベント:1勝』と書かれていた。

(一応、勝ちってことで良いみたいだな)

「これ……何の集まり?」

まだ状況が飲み込めていないリリハはシュレイへと首を傾げて訊ねる。

「特別バトルイベントの途中だったんだ、おかげで助かったよ」

「ん……どういたしまして」

「で、実際はどっちだったんだ?」

「? ……どっちも何も、リバーワームが出たから来ただけ」

つまり、リリハはどっちの味方でもなかった。

たまたまストーンリバーの上流にいて、リバーワーム出現に出会し、倒したらそれはシュレイとクリティカがバトルイベントに使っていて、どっちの味方かと訊ねられたので知り合いのシュレイの名を言っただけ。

正直シュレイもこれが自分の勝利だとは認められていないのだが、ウィンドウが出た以上、運営には認められた勝利ではあるらしい。

「それにしても、よくあの早さでリバーワームの身体を昇った……あ、そうか」

シュレイはリリハの姿を見て、理由に行き着いた。

「そう……コレ」

リリハはローブについているフードを被る。

すると、ピョコンと頭の上にウサギの耳のようなものが現れた。

リリハの着ているローブ、名前を白兎のローブと言い、『兎と月光』というシリーズの防具なのだが。このシリーズを一定数揃えると空中でのジャンプが可能になる。それがリバーワームの身体を登るショートカットアイテムの代わりとなったのだ。

改めてリリハの全身を見ると、ローブ、靴、首のリボン、そして武器の鎌とシリーズが揃っている事が分かった。

「前に戦った時に聞いてたから……試しただけ」

「なるほど、こんな方法もあったんだな」

新たなリバーワーム攻略法を知ることが出来たシュレイが情報にまとめようとしたその時、

「ちっくしょょょょう! こうなったらアンタ! えっと、ステルスのカンストプレイヤー!」

今まで項垂れていたクリティカがいきなり起き上がり、リリハへ向けて指を差し、

「今この場でオレとバトルしてくれ!」

バトルイベントの2戦目を申し込んだ。

「……」

表情は変わっていないが、シュレイには、面倒だから嫌だと思っているリリハの心の声が聞こえた。

別に強制は出来ないのだが、妙な勝利を貰った事と妙な敗北を味合わせてしまったことで、シュレイは助け船を出そうと思った。

「ここで戦っておけば後で時間を作る必要もなくなるぞ」

「まぁ……確かに」

「それに……」

シュレイが耳打ちすると、

「分かった……勝負する」

リリハはクリティカとのバトルを承諾するのだった。

「おーし! 今度こそ負けねぇ! 場所はここで良いな! ルールは…」

「……ただし……」






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ