7.オフ会で求婚される
リオさんが初めてドラクエプレイヤーとリアルで会ったのは、チームに入隊してしばらく経った頃だった。
「最初はオフ会とかいう形式ばったものではなくて、仲良くなったフレたちと一緒に飲みに行こうか!という感じで集まりました。
メンバーは私を含めて男1人、女2人。六本木にあるルイーダの酒場に行きました。
ドラクエをモチーフにした料理や飲み物に感動しましたけど、普段一緒にドラクエしている人たちとリアルで会ってすごく盛り上がったんです。ドラクエ10という共通の話題もありますし、年代もみんな近かったので話は尽きませんでした。」
それから一緒に会うメンバーは増えて、6~7人の集まりで定期的にオフ会をするようになったという。
「オフ会の頻度はだいたい月に1回くらいでした。
私はお店選びを任されていたので、都内のいろんな料理のお店に行きました。
オフ会の流れはまずお店で飲んで二次会はダーツやボウリングというパターンが多かったですね。
いろんな人が参加してすごく楽しかったです。プレイヤーさんは全国各地にいるので、集まる日を選ぶのが大変でしたね。遠い人は沖縄から来る人もいました。
その沖縄の子はR子ちゃんといって、今でも大の仲良しです。
でも中にはちょっと迷惑な人もいて……」
にわかにリオさんの顔が暗くなる。
「プクリポの男の人なんですが、最初から妙に馴れ馴れしかった人がいたんです。
オフ会の後に二人っきりで会おうとか、もっと頻繁に会いたいと言われてしまって正直迷惑してしまいました。
ゲーム内でもフレンドチャットがたくさん来ました。ログインするとすぐに飛んでくるんです。
そしてある日のオフ会で『今の旦那と別れてくれ』とまじめに言われてしまって……」
もちろんリオさんは断った。
下手をすれば民事訴訟に発展しかねないやり取りなので、私はドキドキしながら聞いていた。
するとリオさんは思い出したようにスマホを取り出し、写真を見せてくれた。
オフ会の二次会で撮影されたのだろうか、20~30代の男女が6人写っている。
「この人です」と言いながらリオさんが指さしたのは私と同じくらい恰幅の良い男性だった。
「実はその人ほどではないんですが、しつこく言ってくる人は正直なところ結構いました。
私はゲームの中では男のキャラクターを使っているので、中身が女だと知らない人も多かったんですよ。オフ会当日にキャラクターの名前を言うと驚かれることもありました。
もっと驚いたのは、そういう人たちに限ってオフ会の前後で対応がまるで違うんですよね。
今まで殆どゲーム内での関わり合いがなかったのに、いきなり高額なアイテムを送ってきたり、奢るからコインボス行こうよと誘ってきたりするんです。」
ウェディ男のフレンドが実はモデルのような美女だとわかったために、露骨に扱いを変えたのだろう。なんとなく気持ちはわからないでもない。
しかしそういった下心が丸見えのアイテムを快く思わなかったリオさんは、もらったアイテムなどは全て返した。
「オフ会への参加以降は、仲の良いフレンドさんたちと遊ぶ時間をLINEで連絡を取り合ったり、新しいコンテンツやバージョンアップの際にはスカイプでみんなと話をしながらゲームをすることが増えていきました。」
ゲームがリアルより優先されるようになり、さらに日常で使っているLINEやスカイプにもドラクエが入ってくるようになった。
だが、リアルでのつながりが出来たことはリオさんにとって新たな楽しみでもあり、オンラインゲームならではの遊び方だな、と感じていた。