5.飛躍するプレイ時間
リオさんのプレイ時間が飛躍的に伸びたのは、『チーム』に入ったことがきっかけだった。
「フレンドに誘われまして、あるチームに入隊したんです。
そこのリーダーがすごいガチ勢で、1日のほとんどプレイしてるような人だったんです。
私がログインするといつでもインしていて、頑張って強敵と戦っていたんですよ。リーダーはその頃1日18時間くらいドラクエをやっていたと思います。
他のメンバーの強い人が多かったんです。
プレイ日数も浅かった私はチームで一番弱かったんですが、早くみんなに追い付きたい!頑張って強くならなくちゃ!という気持ちが出てきまして、ドラクエをすることが多くなりました。」
※ガチ勢:ネットゲームにどっぷりはまる人のこと。いわゆるネトゲ廃人。
ネトゲ廃人という単語は今でも使われることも多いが、ネットゲーム運営の告知や生放送では、廃人という単語を使用するのは好ましくないとの判断から「ガチ勢」という単語が使われるようになった。
リオさんが、中学生から社会に出るまで打ち込んだバスケットボール。
その楽しくも苦しい中で培った負けず嫌いの気持ちが、オンラインゲームという世界で華開くことになった。
2日に1回だったプレイ頻度は3日に2回になり、4日に3回になり、そして毎日になった。
1回のゲーム時間も当然増えていく。
攻略サイトなどをチェックして効率よいレベル上げ方法を学び、ひたすら自分のキャラクターを鍛えていった。
「それまでドラクエは余暇時間というとか、暇なときだけプレイする感じでした。
それがハマっていくにつれて、物事の優先順位の上位にドラクエが立つようになったんです。
暇な時間にドラクエをするんじゃなくて、ドラクエのために時間を作るようになりました。
とにかく家事を早く終わらせてWiiの電源を入れて早く冒険したいと思ってばかりいましたね。
1日のほとんどをドラクエについて考えるような生活になりました。」
リオさんのプレイ時間は加速度的に増加、1日10時間の壁をあっさり突破した。
そして1日の半分12時間も突破し、この頃1日15時間ドラクエをするようになっていった。
オンラインゲームという禁断の扉を開いてからまだ数カ月しか経っていなかった。
「ゲーム始めてからというか今でもなんですが、自分がちょっと駄目になったと思うようになったのが、お昼ごはんですね。
朝と夜は主人も食べるので手の込んだものを作っているんですが、お昼の時間は自分のしか食べる人間が居ないので、だんだんと手抜きになっていきました。
ドラクエを始める前は一汁三菜のしっかりとしたものを食べていたんですが、ドラクエをするほうが食事よりも大事になってしまって、簡単なもので済ませるようになってしまいました。
今では片手でつまめるような適当なものを食べることが多いですね。たまにフレンドさんが食事でしばらく離席するときに、ようやく私も何か作ろうかなという気持ちになるくらいです。」
ネットゲームにのめり込んでいくと、リオさんが言っていたようにいろんな物事の優先順位の上位グループにネットゲームが駆け上がってくる。
殆どの人は意識していないが、人間はいろんな物事に順序や優先順位を付けて行動に反映させて生活を送っている。
例えば、
・食事
・お風呂
・掃除
・買い物
・仕事
・睡眠
・洗面
・出勤
・通学
・勉強
・学校
・運動
・友達との約束
・冠婚葬祭
・ネットゲーム
こういった物事の中から自分がこれから何をすべきかというものを常に選びながら暮らしている。
目が覚めて一番殆どの人が洗面に向かうのは、起床時の優先順位のトップに洗面・あるからだ。
それから食事をする人もいれば、仕事が終わってない忙しい人は朝ごはんをパスして出勤するし、休みの日なら買い物や健康づくりの運動を始める人もいるだろう。
だが、ネットゲーム中毒になるとほぼ全ての時間帯においてネットゲームが優先事項の最上位に鎮座していしまう。朝目が覚めて洗顔するよりも早くネットゲームを立ち上げてバザーのチェックをする人もいる。
これくらいならまだ自分だけで済むのだが、重度になると行かねばならない友人との約束、冠婚葬祭行事、仕事、学校の上にネトゲが来ることがある。
こうなるとかなり厳しい。学生の場合、優先事項の最上位であるはずの学校関係の上にネトゲが来てしまうと、学校にも行かず1日中ネトゲにどっぷりつかるネトゲ廃人が完成してしまう。
リオさんの場合、生活のほとんどをドラクエが占めるようになり、昼食がおざなりとなってしまったわけである。
このあたりで、私はリオさんがどんな1日を過ごしているのか聞いていないことを思い出した。
1万時間を積み重ねたリオさんの生活リズムとはどんなものなのだろうか。