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10.未来の引退宣言

離婚騒動を語ってもらった後も取材は続いた。


Q:ドラクエ10の運営について何か一言ありますか?


「実は運営さんに対してあまり不満はないんですよ。

遊ばせてもらっているなあという気持ちが根本にあるんです。

出来ればボスや強敵の登場頻度を短くしてほしいくらいかな。

お願いといえばそれくらいで、いつもお疲れ様ですという言葉しか出てきません。」



Q:他のプレイヤーに何かありますか?


「何時もお世話になっています。ありがとうございます。

自分がこれだけ長くドラクエできるのは、最初に出会ったプレイヤーさんたちがみんないい人だったからですね。

だから知らない人とパーティーを組む時にはあいさつやフォローを欠かさないようにしています。

フレンドやチームに恵まれたので、3年半もずっと出来るんじゃないでしょうか。

アストルティアは本当にいい世界です。」



Q:リオさんのような、中身は女性でキャラは男といういわゆるネナベの人を見分ける方法みたいなものはありますか?


「男のキャラを使っている女の人って一定の数いると思いますよ。

私のフレンドさんにも何人かいらっしゃいます。なぜかみんなウェディの男使っています。かっこいいからなのかな?

中身が女性の人って良くも悪くも無駄話が多いんですよね。

効率最重視というわけじゃなくて、倒すまでの過程を楽しむというかパーティー組んだ人とのやりとりを楽しむ感じの人が多いですね。

それに、時間をそれほど気にしない人も女性に多いと思います。パーティーメンバーの準備を気長に待てるというか。

それも冒険の一部としてしっかり楽しめる人が女性には多いんじゃないでしょうか。」



Q:主婦勢の人に何か一言ありますか?


「一口に主婦といってもいろんな人が居ますね。

専業か兼業か、子供が居るかいないかでだいぶ違うと思います。

子供が居るのに私よりもプレイ時間が長い人が稀にいますけど、大丈夫かなと人ごとながら心配してしまいます。

実はフレンドにドラクエがきっかけで本当に離婚しちゃった人もいまして……

そういう人を見ていると家庭とのバランスって本当に大事だなと痛感します。

私も離婚の危機がありましたから尚更そう思いますね。」



いずれの質問にもしっかりと答えて下さり、とっても取材がしやすかった。

元体育会系だからだろうか、世間一般のネトゲ廃人のイメージからほど遠いハキハキした様子で対応してくれる様はこちらとしても大変気持ちのいいものだった。




「実はドラクエを引退する予定があるんです。」


目の前のイタリア料理はあらかた片付き、予約時間の終了も差し迫ったところでリオさんはポツリとつぶやいた。


「ドラクエの区切りとして自分で決めていることがあるんです。

それは自分に赤ちゃんができた時、妊娠した時点でドラクエを辞めようと決めてるんです。」

リオさんはきっぱりと言い切った。

1万時間という長い長い時間を過ごしたアストルティアへの未練はないのだろうか。


「私の場合、きっと育児とドラクエは両立できないなという気持ちがあって、

究極どちらを選択するか?というとやっぱり育児かなと。

もし子供ができたらドラクエはずっと封印して子育てをしていこうと思います。

今だけの楽しみだと割り切っているから、これだけ長時間できるのかもしれませんね。」


リオさんと駅前で別れた後、1時間ほど新橋周辺の本屋で時間をつぶしてから帰路に就いた。

電車に揺られながら便利ツールを取り出すと、フレンド欄のリオさんはすでにアストルティアで冒険をしていた。

たしか4日後はアップデート、今日は夜遅くまで冒険するのだろう。


取材の最後に語った未来の引退宣言。

これからお子さんを産んでリアルのご家庭を更に幸せにしてほしいという気持ちもあれば、まだまだゲーム内で強いリオさんのお世話になりたいというフレンドとしての思いもある。

そんなことを考えてしまう自分自身も、リアルの生活が半分以上オンラインゲームに侵されゲームという世界にどっぷり浸かってしまったドラクエ廃人なのだろう。

私は小さくため息をついてからスマホをポケットにしまいこみ、電車を降りた。


(了)

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