0.駅の改札にて
2016年5月某日。
洋菓子の紙袋を手に下げた私は、新橋駅の改札を目指して息を切らしながら歩いていた。
関東各地で夏日が観測されたこの日、東京も一足早い熱気を漂わせている。
肥満体の私には駅構内を移動するだけでも非常に厳しい。
改札前の柱にだらしなく寄りかかりスマホをチェックすると、画面は待ち合わせ時刻に間に合ったことと、メールの着信を知らせていた。
『少し早いですが、到着しました。』
届いたメールに私もすぐに返信をする。
『こちらも今到着しました。これから改札を出ます。クソデブが私です。』
こんな抽象的なメールにも関わらず、改札を出てすぐに声をかけられた。
肥満体でスマホを持ってうろうろしてるのが目立ったのだろう。
声をかけられた私は振り返って驚いた。
そこには長身の女性が凛として立っていた。
顔立ちも整い、間違いなく美人に属するであろう彼女が今日の取材をさせてもらう相手だとは、到底信じられなかった。
「キミーさんですね?リオです。今日はよろしくお願いします。」
私の名前を知っている。人違いではないようだ。
どうやらこの女性がドラクエ10のプレイ時間、『1万時間』を突破した主婦のリオさんで間違いないらしい。
呆気にとられながら挨拶をした私を、リオさんはにこやかな顔で見つめていた。
ドラクエ10を1万時間プレイしました~主婦・リオさん~
まだキツネにつままれた様な気持ちでリオさんと並んで歩く。
リオさんの身長は175cmほど。スタイルもよく、まるでモデルさんのようだ。
肥満体の私が隣を歩いているだけでなんだか申し訳ない気持ちになる。
行先はリオさんお気に入りの人気イタリア料理店。
なかなか予約が取れないそうだが、リオさんが1ヶ月前から予約をしてくれていた。
去年ラムター小山さんを取材したさ●ら水産から大幅なグレードアップである。
お店に着くと、リオさんはスパークリングワインのロゼと海の幸のカルパッチョ、ポルペッティーナを慣れた様子で注文した。
とりあえずビール、魚肉ソーセージ、〆さばを注文した小山さんとはとてつもない差を感じてしまう。(まあそれはそれでいいのだが。)
おしゃれなイタリア料理の前で乾杯をして、早速リオさんがドラクエ10を始めたきっかけを教えてもらうことにした。