6話
「ではチョビ。おれたちは城に行くから」
王子が偉そうにふんぞり返っている。どうせ手柄を独り占めにする気だろう。最期まで嫌なヤツだちょび。
「行ってらっしゃいちょび。チョビはケンちゃんと金の斧を換金して、何かウマイ物をたらふく食べるちょび」
「赤い鍵はチョビにやろう。なあに。いらない物だから構わないだろう。地図だけ持っていくぞ。貴重な古文書だからな」
「チョビはゴミ屋じゃないちょびよ。でも、いらないならもらっておく。これも換金できるやもしれんちょび。ネックレスのチェーンに通しておくちょび。これで、金の鍵と赤い鍵が集まったちょび」
「ブルータス、大人しくしていろよ! では、チョビ殿。さらばじゃ! 」
「あ! ファンス! いろいろどうもありがとうちょび! 女遊びもほどほどにするちょびよ!」
王子たちは行ってしまった。
「ブルータスはなんでチョビたちより先に、あの大広間にたどり着けたんだちょび?」
「あいつはあの迷宮の地図を持っていたからな。王子を誘拐したあと、抜け道を通って大広間へ行ったのだろう。そのまま秘密の地下道を通って逃げるつもりだったに違いない」
「そうかちょび。危ないところだった。ケンちゃんの鋭い洞察力のお蔭だなちょび。ケンちゃんのお蔭で死なずにすんだちょび。あなたは命の恩人だ。どうもありがとうございました。この先ケンちゃんの悪い噂を耳にしたらは、すべて訂正しておきますちょび! それにしても……ここはどこだちょび?」
「城の中庭だろ? あそこに噴水がある。ちょっと手を洗って行こうぜ?」
ケンシロウに誘われ、チョビは噴水に近づいた。
「ワー。すごくきれいな水ちょび。顔が映ってるちょび。あ! ほっぺたが汚れてる! たいまつのススが付いてるちょび」
チョビは噴水で顔を洗った。
バッシャーアアアアンッ!
「アアアアーッ! しまったああ!」
大きな水音と共に、ケンシロウの叫び声が聞こえてきた!
「どうしたちょび!」
「金の斧を噴水に落としてしまった!」
「なんだ……拾えばいいちょびよ」
「なんだと? 見てみろ! この噴水はものすっごく! 深いぞ!」
「ええ! 噴水ってそんなに深いのー?」
チョビは噴水の中を覗きこんだ。水の底が見えないぐらいの深さがある! 当然、金の斧など、どこにも見当たらない。
「どうするちょびー! 金がなくちゃ、おまんまにありつけないちょびよー! え~んっ!」
「チョビ……済まぬ」
チョビが半泣きしていると、突然、水の中がボコボコと沸き立ちはじめた!
――そして。
なんと! 噴水の中から女神が現れたのだ!
頭に金のティアラを付け、たなびくブロンドに碧い瞳、白い衣を纏い金銀鉄の三本の斧を持っている。
「あー! 女神さま! ありがとうちょび!」
「そなたが落としたのは、どの斧ですか?」
女神がニッコリと美しい笑顔をつくり、チョビに尋ねた。
「金! ゴールド! 黄金に輝く金の斧に間違いないちょびー!」
チョビはすかさず答えた。
「どの斧じゃ?」
「金の斧だちょび」
「どれじゃ?」
「金の斧……」
「どの……」
「金……」
女神は微笑み、そして。
「わらわは正直者だけが好きです……」
そう言うと、噴水に消えていった。
ブクブクブクブク。
――あとに残るは、水の泡のみ。
「ちょっと! 女神! どうぼう! 返せー! 戻せー!」
チョビは噴水の脇に身を乗り出し、水の中へ向かって思いきり叫んだ!
だが、何も起こらない!
「どうしたらいいんだちょび……」
チョビは頭を抱えてしまった。
「チョビ殿……おれの鉄の斧を投げ入れてみましょうか?」
ケンシロウがそう提案した。
「おお! ケンちゃん、グッドアイディーア! お願いします!」
バッシャーアアアアンッ!
ケンシロウが鉄の斧を噴水に投げ入れた。
ブクブクブクブク。
また、水面に泡が立ちはじめた!
「ヤッター! 今度こそ、金の斧を返してもらうぞ!」
さきほどの女神が現れた。また、3本の斧を持っている。
「そなたが落としたのは、どの斧ですか?」
女神がニッコリ笑って質問してきた。
「鉄の斧です」
ケンシロウが答えた。
「あーっ! ケンちゃん! ダメだってば!」
「よろしい。鉄の斧を返してあげましょう。正直者は大好きです。褒美にこの銀の鍵をあげましょう! ごきげんよう!」
女神は、ケンシロウの落とした鉄の斧と銀の鍵を噴水のへりに置くと、満面の笑みを称えながらブクブクと水の中へもどっていった。
めでたし、めでたし。
「……じゃないだろちょびー! おのれー女神めっ! このパターンで皆から金目のモノを巻き上げているな! あんなの女神じゃない! 魔女だ! 悪魔の使い! 成敗してくれるわ! 水よ~、枯れろ~、ちょびちょび……」
「チョビ殿! 待て!」
「だって……」
「銀の鍵が手に入ったじゃないか? おれは元々、斧ではなく弓の使い手だ。この鉄の斧を売り、弓矢とチョビ殿には食べ物を買ってやろう。おれは食べなくても生きていける不死の身だ。金は要らない」
「ケンちゃん……なんて良いお人だちょび。そうですね……元々は金の斧はこの城の物。チョビは欲が深すぎましたちょび。反省するちょび。ケンちゃんは賢人だ! では、お言葉に甘えてケンちゃんの斧で食事をするちょび。この鍵はいつものようにチョビのチェーンに付けるちょび!」
チョビは、噴水のヘリに置かれた銀の鍵を手に取り、自分のネックレスのコレクションに加えた。チェーンに銀の鍵を通したとたん! あれよあれよという間に、星型のペンダントトップが輝きはじめた!
「んっ? なんだこりゃ? 星が光り出したちょびー!」
「なに? どうしたんだ!」
――そして。
「ワアアアアッ!」
「助けてくれちょびーっ!」
ヒューウウウウッ! ドッカアアアアーンンンンッ! グワッシャアアアアッ!
空から何かが落ちてきて、チョビたちの前で大爆発を起こした!




