5話
「ミーノでーす! おまえらちょっと待ったー! この男の命が惜しくはないのかー!」
ミーノタロウの腕には、ガッチリと王子が抱えられていた!
「ワアアアア! チョビ! ファンス! 助けてええええ!」
ミーノタロウが、王子の首に金の斧の刃を向けた!
「武器を捨てろ! 早く!」
「クソオオッ!」
ガッシャアアアアンッ!
ケンシロウが石の床に両刃の斧を捨てた。重い武器の音が丸天井に跳ね返り、オーケストラのようにあたりに轟き渡った。
皆が一瞬、チュウチョした。
「今だ! ちょびー!」
その隙を突き、チョビが『煙球』を投げた!
「さすがだチョビ! やったぞ!」
真っ白に煙る視界のなか、王子が叫ぶ!
「ブハッ! ブハッ! 王子! チョビ! どこにいる!」
ファンスがバタバタと手を振り、煙を掻き分ける!
――やっと見えてきた視界の先には。
「ふえ~ん! なんでこーなったちょびー!」
今度は、チョビがミーノタロウに捕まってしまった!
「チョビ! 大人しくしていろよ! 今、セバスチャンに電話をするから! ……って圏外か……メールもだめ……ごめん。ちょっと時間かかるかも……。城に戻ったらダナンに討伐隊を……予算出るかな? チョビの師匠に掛け合って……」
「この期に及んでその発言……王子の最低野郎めちょび!」
チョビが手足をバタバタさせて暴れても、頑強なミーノタロウはビクともしなかった!
「くっそう! チョビを離せ! 卑怯者!」
ファンスがくやしそうな顔でミーノタロウを睨みつけている。今日、知り合ったばかりなのに、なんてイイ人なんだ! チョビはこれからはこの人を師匠にしようかと考えはじめていた。
そのとき! 一陣の風が吹いた!
パカッ! パカッ!
馬の蹄の音が!
パッカアアアアーッン!
「ギャアアアア! 助けてくれええええー!」
ケンシロウがミーノタロウのうしろへ回り込み、馬の足でヤツを蹴り上げた!
チョビと金の斧を手放して、ミーノタロウが吹っ飛んでいく!
「こいつめええええ!」
ファンスがすかさず、紐で縛り上げた!
「ふいいいい。たすかったちょびい! ケンちゃん、どうもありがとうございました!」
「おう! チョビ、大丈夫だったかい? さあ、ニセミーノタロウ! 顔を見せろ!」
「え? ニセモノ? そうか! ミーノタロウはケンちゃんが退治してくれたんだった! ってことは……こいつがウワサのブルータスか!」
「え? こいつが? おれたちの追って来た盗賊か! よし! おれさまが仮面を剥いでやるぞ!」
ファンスが牛の顔に手を掛けた! だが、面がはずれない!
「な、なんだこりゃ? 顔と面が、一体化してるぞ!」
「た、助けてください! 取れない!」
ブルータスが慌て出した。どうやら、本当に面が取れないみたいだ。
「そのお面はどうしたんだ? ちょび?」
「金の斧と一緒に壁に掛かっていたんだ!」
「もしかして……」
「ケンちゃん? 何かわかるのかちょび?」
「その面には、殺されたミーノタロウの魂が宿ってしまったのかもしれない……」
「そうかちょび……呪いの面かちょび……」
「ちょうどいいじゃん! そのまま父上のところに引っ立てて行こう!」
王子が提案してきた。
「そうだなちょび。別にこのままでも問題ないちょび。あっ! ブルータス! 赤い鍵と地図を返すんだちょび!」
「ポケットにあるから勝手に取れ!」
この期に及んでも、ブルータスはえばっている。悪いヤツだちょび!
ファンスがブルータスのポケットから赤い鍵と地図を取り返した。
やった! これでお城に還れる!
「おや……チョビ。地図によると、この床下に、地上へ出られる地下道への入り口があると描いてありますぞ。さっそく、開けてみましょう!」
「本当かちょび! 助かったちょびー!」
地図によると、金の斧が掛かっていた壁の真正面の柱を右に回すと、床の隠し扉が開くらしい。ラッキー!
「それでは、回しますよ」
ファンスが1本の柱を回しはじめた。
ガララララ、ララララ!
なんと! 石の床がスライドして、床下に階段が現れたのだ!
「ヤッター! 百年ぶりに、地上に出られるぞー! おれが先頭を行こう!」
ケンシロウが、真っ先に階段を降りて行った!
地下通路は、馬人間でも通れるほどの高さと幅があった。チョビたちもたいまつを手に、あとに続いた。
石畳で出来た通路を十分ほど進むと上りの階段があり、その先に鍵のかかった扉があった。
「鍵がかかっている!」
「ケンちゃん、大丈夫だちょび! ここに赤い鍵があるちょび! 今、開けます!」
ガッシャーアアアアンッ!
重苦しい音をさせながら、鉄の扉が開いた!
「まぶしいだちょびー! それにしても……お腹が空いた……」
「なんと……百年ぶりの太陽だ! まぶしい……目がつぶれそうだ」
「よかった……ノリでここまで来ちゃったけど、生きててよかった……。団長に特別ボーナス出してもらおうっと」
「ふー。よかった。早く城に帰ってシャワー浴びたい」
「チッ! また牢獄に逆戻りか……それにしてもこの面……一生、牛人間なんてシャレになんない」
まぶしい太陽の下、チョビたち一行はなんとか迷宮からの脱出に成功した!




