3話
らせん階段を下り終わったチョビたちは、一旦、地面に座って休むことにした。あたりは暗闇だ。たいまつの灯りだけが頼りだ。
「おなかが空いたちょび。王子! なんか持ってないか、ちょび?」
「持ってるわけないだろ! おれは王子なんだぞ!」
「チョビ……おまえは子供だからな……ほれ、このキャンディーでも舐めていろ。今朝、女の家からシッケイしてきた。さあみんな、先を急ぐぞ!」
ファンスがペロペロキャンディーを投げて寄こした。
「ありがと、ちょび!」
キャンディーにはピンクの派手なリボンが巻いてあった。チョビはいいことを思い付いた。
「そうだちょび! このリボンを魔法でなが~くして糸巻き代わりにして、迷路に入っても迷わないようにするちょび! ぼくってあったまいい! それではさっそく……ちょびちょびちょび~!」
ピンクのリボンが見る間になが~く伸びた。
「おお! すごいじゃんか、チョビ!」
めずらしく王子に褒められた。うれしくないちょび。
「ナイスですね! さすが魔法使い! それでは、階段の手すりに繋ぎとめておきましょうね。これでヨシ! と。絶対にほどけない8の字結わきにしておきました」
「ありがとう。ファンスさん。あなた、すごく重宝しますね。賢者のような知恵をたくさんお持ちだちょび」
「お褒めに預かり光栄です」
「やっと仲間らしくなってきたな。サア! 先をいそごうぜ! 早くしないとおれたち餓死しちまうぜ! レッツゴー!」
「……って、やっぱり王子は先頭じゃないんですね? やれやれ……こんな王子の下で働いて大丈夫かな……」
「ファンス殿? あなたはそんなになんでも出来るのに、なんで流れ者なんですかちょび?」
「いやね……おれって見た目、色男じゃん? 中身もそうなんだけど……ついつい、女同士の諍いに巻き込まれてしまうんですよ。だから、同じ場所にいつまでもいると、大変な目に遭ってしまうんですよ、これが!」
「そうですかちょび。聴くんじゃなかった……相当、女にだらしない奴だなちょび」
チョビたちは目の前にある1本道の通路へと入っていった。そこは目が回りそうなぐらいの細いグルグル道だった。
「ふえ~っ。さっきの階段と一緒で目が回るちょび。三半規管がやられたちょび~!」
「たしかに……これはきついですな。それに、ここは迷路というよりは迷宮ですな。分岐点がまったくない。チョビ殿のなが~いリボンは必要なかったですな」
「なんと! 無駄に魔法を使ってソンしたちょび! これなら地図なんかいらないですちょび!」
「ん! 人の気配がする! 2人とも、気をつけてください!」
「ええっ!」
「なんだ! ファンス、何がいる? ブルータスか? それとも……」
王子がガタガタ震えはじめた。
数メートル先の曲がり角が明るい。そこだけ少し広くなっているようだ。チラチラと影が動いて見える。敵はどうやら馬と人、1匹ずつらしい。
「チョビたちは下がって! しかし……どうやってこんな狭い迷宮に馬を連れて来たのやら」
「馬が階段を降りられたのかちょび?」
「たしかに……おや?」
なんと曲がり角から、体が馬の大男が出てきた。手には両刃の斧を持っている。キョ、キョワイちょび!
「なにやつ! チョビ殿、わたしのうしろに!」
ファンスが化け物に剣を構えた!
「ファンスさん、ありがとちょび! あれが怪物ケンシロウ……想像以上に恐いちょびー!」
チョビはファンスのうしろでガタガタ震え出した! そのうしろで相変わらず王子も震えている。
カツカツ、カツカツ。
半馬半人の男が、ヒズメを鳴らしながら近づいてきた!
「アワワワワ、ワワワワ……」
カツカツ、カツカツ。
斧の刃が怪しく光る!
「ど、どうか、命だけは助けてくれちょびー!」
「おのれ、化け物! それ以上近づくな! このファンスさまが成敗してくれる!」
「ちょ、ちょっと! ファンスってば! 刺激すんなよ、ちょびー!」
「かくごー!」
ズササアアアアーッ!
チョビの制止も聴かず、剣を上段に構えたファンスが馬の化け物に飛びかかっていった!




