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チョビの冒険  作者: M38
1/7

1話

「いち、に~の、ちょび~っ!」


 ボソッ!


「ゴゲッゴー!」


 ズドドドドドドド――ッ!


「わ~っ!」



 ぼくはチョビ。

 ただいま『ドゥードゥー鳥』に追いかけられておりまする!

 なんでかって?

 だってぼくが、巨大なドゥードゥー鳥のしっぽを1本抜いたから!

 なんでかって?

 それは――。


「わ~っ! お師匠さま! たすけて~っ!」

「チョビ? えっ? うしろから来るのは、ドゥードゥー鳥? わーっ! おまえ! なんだって、そんなもんを連れて来るんだあ!」


 ぼくはすばやく、背の高いお師匠さまのうしろに隠れた。

 ハヒハヒ、寄らば大樹の陰ってね?

 ちがうか?


「お師匠さま! 危機一髪!」

「おまえがいうなよ……こうなったら呪文で……ラミパスラミパス、ルルルルルー! ドゥードゥー鳥になあれ~!」

「ワーッ! ふるっー! じゃなくて、お師匠さま! ぼくがドゥードゥー鳥になっちゃったじゃないですか! それもぼくサイズのミニチュア! どうするんでしゅかー!」

「しかも若干、赤ちゃんことば……ワーッ! ホンモノが来た! デカッ! これでもくらえ!」

「ギャーッ! ぼくを投げて、どうするんですかー!」

「どうにかなるだろう……」


 たしかに、どうにかなった。

 なんとドゥードゥー鳥が、ぼくをわが子と勘違いして、巣にお持ち帰りしてくれたのだ。

 めでたし、めでたし――。


「じゃないだろ! どうすんだよ! これっ! 帰れないじゃないか! お師匠さま~!」



 そのころ師匠は――。


「やれやれ、やっとドゥードゥー鳥のしっぽが手に入った。これで王宮から注文のきていた薬草が作れるぞ。チョビのヤツ、ドゥードゥー鳥のしっぽを取って来てくれって言ったら、本体まで連れてくるから、ビックリするじゃないか! それにしてもチョビ……どこまで行ったのかな?」


 


「師匠の助けなんか待ってたら、ぼくは大人になってしまう。そして師匠と感動の再会を……の前にドゥードゥー鳥に食われるな……たしかこの鳥は肉食だった。師匠のかけたマルマル子ちゃん魔法はもって半日。自力でこの巣を抜け出さないと、ぼくは巨大な化け物鳥のえじきになってしまうぞ! しかし……どうしたものか……」


 説明しよう。

 ドゥードゥー鳥とは3mはあろうかという巨大な鳥で、概観はにわとりに似ている。

 巨大なトサカに黄色いクチバシ。

 からだは白いがしっぽは孔雀のように七色に輝く美しさ。

 古代から万病に効く妙薬として珍重されているのだ。

 見た目のかわいらしさとちがい、ドゥードゥー鳥はものすごく獰猛なのだ!


 巣は、高い木のてっぺんにあった。

 木っていっても、みんなが想像しているような、生い茂ったあれじゃないよ?

 葉なんて何にもない!

 ただ、木の棒が1本、突っ立ってるだけ!

 それも、高さが尋常じゃない!

 ドバイのビルぐらい、あるんじゃないかな~。

 えっ? 

 なんでそんなで、その木は立っていられるかって?

 それはここが、魔法の世界だからさ!

 

 ぼくは魔法使いの弟子のチョビ。

 ちっちゃな体に大きなブルーの瞳。

 金髪頭に頭巾をかぶり、いつも緑色の大きめなローブを身にまとっている。



 

「ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴゲッゴー!」


 バサッ、バサッ、バサバサバサッ――!

 

 うわっ!

 ドゥードゥー鳥だ!

 なんか、くわえてる!

 人だ!


「わーっ! 降ろして! 降ろして! うぎゃ~! 降ろした……ワーッ! ここって巣じゃん! しかも! 高っ!」


 ドゥードゥー鳥はただいまドゥードゥー鳥に変身中のぼくに頬ずりをすると、人間だけ降ろしてどこかへ飛んでいった。

 えさをくれたって、ことかな?



「ワーッ! 化け物だ! たすけてーっ!」

「ちょっと、ちょっと! ぼくのどこが……ああ、そうか! まだドゥードゥー鳥のままだった!」


 そのとき、ぼくの体が鳥から人間へと変化しはじめた。

 

「あれれれっ? あんた、どうなってんの? 人間の……こども?」

「ああ~っよかった! もとの姿にもどった! ってことは、師匠と別れて半日は経ってるんだな? やれやれ……」

「あの~? 君は?」

「はい。ぼくは魔法使いの弟子のチョビ。今日はドゥードゥー鳥に捕まっちゃいました! てへっ?」

「てへっじゃないよ! 魔法使いなら、ここからの脱出方法、知ってるでしょ?」

「の弟子だってば! それにしても、ずいぶんと横柄な男だな? んっ? なんかすごくいい身なりをしてる? あんたもしかして……どっかの王子さま?」

「だったら? 身代金でも要求するつもり?」

「やなヤツ~!」


 目の前の男は、歳のころは16ぐらい。

 金髪碧眼でホッソリとした上品なヤツだった。


「ねえ! はやく城に帰してよ? 空、飛べないの?」

「飛べたらとっくに飛んでますよ! ぼくは魔法使いの弟子なんです! 本格的な魔法は、まだ使えません!」

「じゃあ……ナガ~イなわ梯子とか出せない? ぼくだけそれで脱出するから!」

「ホント! やなヤツ! 待てよ……この巣の枝を魔法でつなぎ合わせれば……じゅげむじゅげむごこうがなんとか……ちょびっ!」

「その、最後のちょびっ! ってなんだよ? つけなきゃダメなの?」

「ちょっと! お静かに! 今、魔法でナガ~イロープを作っておりますから! ちょびっ! ちょびびびっ! そら、できたっ!」

「わーっ! すげ~っ! やれば出来るじゃんか! ちび!」

「チョビ……。さあ! ロープの先端を巣にくくりつけて下に垂らしましたよ! ドゥードゥー鳥が帰ってくる前に、地上へ降りましょう!」

「おうっ! あれっ? おまえが巣の枝を取り払ったから、下から鍵が出てきたぞ? 黄金色をしている。ほうびにおまえに取らせよう。遠慮すんな」

「ほうびって……あんたのもんじゃないじゃん! でも、金目のモノは師匠が喜ぶからもらっておきましょう。ネックレスのチェーンに通しておこう。ちなみにこのネックレスは、捨て子だったぼくのそばに落ちていたモノなんです。星型のペンダントトップが付いているでしょう? ぼくの母上が大きくなったぼくに会ってもわかるようにって、置いて行ってくれたんだと思うんです。たぶんぼくって、どこかの国の王子さまなのではないでしょうか……って、ああっ! あいつ! もう、あんなに下まで降りてる! まって~っ!」



 ぼくたちはロープをつたい、下へ下へと降りていった。

 だが、行けども行けどもたどりつかない!

 当たり前だ。

 ドバイのホテルの高さなんだから!



「ハアハア……日が暮れそうだ……まずいでございまする!」

「なにがまずいんだ? おれは暗くなっても恐くないぞ? おまえみたいなチビとはちがうからな!」

「そうじゃなくて! ドゥードゥー鳥が巣に帰ってくるんですよ! ねぐらに戻ってくる時間帯なんです!」



 バサッ、バサッ、バサバサバサッ――!


「ああ、あれか?」

「ええ、そうそう……ってギャーッ! ホントにもどってきた!」



「ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴゲッゴー!」



「たすけて~っ!」

「チビ! さっきの鍵は? なにかの役に立つんじゃないか?」

「鍵? 黄金の? これですか?」


 ぼくはネックレスの先端についている黄金の鍵を、ドゥードゥー鳥に差し向けた!

 ドゥードゥー鳥の目が、一瞬ギラリと光った!


「ゴゲーッ! ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ!」



「んっ? 反応があったな? いけるんじゃないか?」

「バカか! 鍵を盗んだから怒ってるんだちょびっ! 反対に刺激しちゃったぞー! ちょびっ!」

「ちょびちょびうるさい! ワーッ! きた~っ!」



 ヒュウウウウ――ッ!



 ドゥードゥー鳥がぼくたち目がけて、一直線に飛んできた!



 

「ワーアアアアアッ!」

「ギャーアアアアッ!」



 ビュン――ッ!


 ビュビュン――ッ!



 ぼくたちは、一生懸命によけた。


 


「ゴゲーッ! ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ!」


 

 ビュッ!

 ビュッビュッビュッビュッ――ッ!



 さらなるドゥードゥー鳥の攻撃!



「ギャーッ! 手が……もうダメ~!」

「お師匠さま~! たちけてくれ~!」


 

 ドゥードゥー鳥から、最後の一撃が加えられた!

 


「ワーッ! たすけて~!」

「チョビッ! もう1度ドゥードゥー鳥になりた~い!」


 すると――。

 チョビのカラダがドゥードゥー鳥になっていた!


「うっわー! どうなってんだ、ちょびー!」

「やった! 助かった! すぐに飛び立て!」

「わかった! ちょびー!」


 ドゥードゥー鳥になったチョビは、すぐに大空へと羽ばたいていった。

 唖然とする本当のドゥードゥー鳥は、あっというまにはるか彼方へと遠ざかっていったのだった。


 チョビたちはとりあえず、お城のそばの泉のほとりへ不時着した。


「よかった、ちょび。ここまでくれば、ひとあんしんだ、ちょび」

「よかったな、ちょび。おっとおまえのへんな口癖がうつったぜ、ちょび。いかん、いかん」

「よかったでござるな、王子さま。ぼくはこれで……」

「おい! まてまて! そんな姿で帰ったらたいへんだぞ! 途中で兵士に矢で射抜かれるぞ? いいから、このまま城の中庭まで飛べ! おれが保護してやる」

「保護してやるって……大丈夫ですか? 王子さまもろとも、一緒に矢で射殺されちゃたまらんのですが……でも、このまま帰るのも道中不安だな。じゃあ、おねがいします……」

「よかろう……礼などいらぬ。ラクにしろ」

「礼って……こっちがして欲しいんだけど……助けられたのに、えらそうだな……」


「おうじさま~! おうじさま~ってば!」


「おい! 王子! 呼んでるぞ、ちょび?」

「ほんとだ! お~い! セバスチャン! お~い!」


 向こうの方から、王子探索隊らしき隊列がやってきた。


「あっ! 王子さま! そして……おのれ、妖怪! ダアアアアーッ!」

「うわわわわわ! ぼくは妖怪ではないのだちょびー!」


「やめろ! セバスチャン! これは、おれを助けてくれた魔法使いの……」

「魔法使いの?」

「……弟子のチョビだ! ドゥードゥー鳥には変身しているだけだ! なあ?」


「そうだ、ちょび。はやく人間になりた~い! アアアアッ!」

 

 なんと、チョビのからだが見る間に元のおこさまサイズに様変わりした。

 めでたし、めでたし、ちょび。


「よかったー! 人間にもどれたー! ちょびっ!」

「よかったな、チョビスケ! な? わかったか、セバスチャン?」


「わかりもうした。そなたがチョビスケ。王子を助けてくださってどうもありがとうございました」

「チョビスケではござらん! チョビでござる! いえいえ、どういたしまして。魔法使いの弟子として当然のことをしたまで。お礼におもちゃとお菓子をたんまり寄こしてもかわわないですよ、ちょび!」

「これはこれは……ガキんちょのくせに、なんとがめつい。将来が思いやられますな。それにしても王子! もう、このような危険なことは、おやめくだされ!」


「わかったよ……」


 セバスチャンという老兵が王子を怒っている。

 王子もこのじいちゃんには叶わないらしい。


「ところで、王子はなんでお城の外に出てたんだ、ちょび?」

「母上がご病気で、治療するにはどうしてもドゥードゥー鳥のしっぽが必要だったんだ。だから、勇気を出してドゥードゥー鳥の住む場所まで行ったんだ。途中で捕まっちまったんだけどな。えらいだろう!」


「王子! そのようなことはえらいとは言いませぬ! これからは……」

「セバスチャンどの! たいへんです! お尋ね者のブルータスが失神して倒れているのを発見したので、連れて参りました!」

「なんじゃと! これはえらいことだ! ブルータスと言えば、数年前にお城の宝の鍵を盗んだ大悪党だ! おのれ! 鍵をどこにやった! 黄金の鍵を!」


「黄金の鍵だと、ちょび? セバスチャン殿、もしかして……これですか?」


 チョビはネックレスに付けてあった黄金の鍵をはずし、セバスチャンに差し出した。


「おおっ! そうです! これこそ、わが王国の宝! どこで、これを?」

「ドゥードゥー鳥の巣に転がっていました、ちょび」

「そうですか……実はこの鍵は、ドゥードゥー鳥に変身できるという言い伝えがある鍵なのです! ここ数年、ドゥードゥー鳥に付近の村が襲われていたのです。たぶん、ブルータスがドゥードゥー鳥に変身して悪さをしていたにちがいない! いやはや、ちょび殿! お手柄ですな!」

「そんな……当然のことをしたまでです、ちょび」

「どうぞ、どうぞ、お城に来てくだされ。王さまに謁見して、手柄をご報告くだされ!」

「ありがとうございます、ちょび。このはげ親父役に立つのか? とか思ってしまってすいませんです、ちょび」

「心の思いがタダモレですな? いやいや、まだこどもだから、素直でよろしい。じいやは心が広いので……」


「自分で言ってるよ。じゃあ、じいや! 城に戻ろうぜ!」

「はい。王子さま、この輿に乗ってくだされ。さあ、ちょび殿もどうぞ」


「すいませんです。ちょび」


 チョビは王子と輿に乗り、お城へと入って行った。

 初めて入るきらびやかな宮殿は、目を見張るばかりの美しさだった。


「おとぎの国のようです、ちょび~」

「はははっ! 大げさだな! でも、庶民にはまぶしい限りだろ?」

「ほんとに嫌なヤツです、ちょび~。こんなのが未来の国王かと思うと頭がいたい、ちょび」


 チョビはその日、王城にお世話になることにした。

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